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【#私の子育て】敦子~5人の子育てと助産師への道を両立する現役モデル
Profile
『#私の子育て』第8回は、5人の子どもを育てるモデルの敦子さんにインタビュー。助産師をめざして看護学校へ通いながら、仕事、そして子どもたちとの時間をどのように工夫しているのだろうか。
「私自身も助けてもらったから、子育てで大変な思いをしている人の役に立ちたい」
「物ではなく経験を、子どもたちに残していきたい」
「“子どもたちのために”ではなく、“自分がやっていて楽しい”をベースに」
こう語るのは、5人の子どものママであり、ファッションモデルとして活躍する敦子さん。
大学時代に雑誌『JJ』でモデルデビュー。2004年に26歳で結婚、出産を経たのち、ファッション雑誌『VERY』の専属モデルとして復帰。その後、2006年に第2子、2009年に双子である第3子、4子、2014年に第5子を出産。現在は、助産師を目指して看護学校へ通っている。
5人の子どもを育てながらも多忙なタスクをこなす彼女は、いかにして日々を乗り越えているのだろうか。その工夫や想いについて話を聞いた。
5人の子育ての基盤は“食”
モデルを中心に活動しながらも、自身のブログでは子どもとの日々を紹介するなど家庭的な敦子さん。事前に答えて頂いた質問シートからは、5人の子育てに奮闘したからこそ築かれた想いが見えた。
育ち盛りの子どもたちには手作りで対応
目をひいたのは「食事は大切に!」というマイルール。実際に、育ち盛りの5人の子どもたちに用意するのはかなりの量になると敦子さんは語る。
「子どもが5人もいると、スーパーのお惣菜にも頼りきれないし、それぞれの帰ってくる時間がバラバラだったりして、外食もあまりしません。基本は手作りしています」
驚くべきは、5人分の食材の量。お米は一升炊きの炊飯器で一度に8合炊き、月30キロの消費。子どもたちだけで、牛乳は週に6本を飲むという。カレーを作るときは、2箱以上ルーを使い、20皿分で2食分に。おかわりですぐになくなってしまうのだそう。
「高校生の長男には平日毎日、野球チームに入っている次男には土日にお弁当をつくってい
ます。特に食べ盛りの次男には、この間2リットルのタッパー弁当に挑戦しました(笑)」
おやつにメッセージを添えて気持ちを伝える
――毎日の食事を手作りするだけでも手がかかるのに、お弁当まで……!
「もし午前中早めに起きて余裕があるときは、子どものためにゼリーやプリン、クレープを作ったり、さらに余裕のあるときはパンを焼いたりしています。子どもたちより早く家を出る日や、遅く家に帰る日も多いので、作ったお弁当やデザートに手紙を添えるんです。
簡単な一言メモのようなものですけど、子どもひとりひとりに『おかえり』『今日のデザートは冷蔵庫に入ってるよ』『お疲れさま』といったことを書いています。子どもたちも同じように、短い手紙を書いて返事をくれることも多いです」
――敦子さんが忙しくても、手紙での会話があると子どもたちも嬉しいですね。
「他にも、朝、次男が洗い物をしてくれたときは、翌日そのお礼に、次男の好きなメロンパンを焼いておいたりとか。
次男が野球でヒットやホームランを打った日は必ずオムライスって決まっていたり、長男が帰宅後になかなかお弁当箱を出さなかったときに、次の日のお弁当のごはんに『お弁当箱出せ』と海苔で文字をつけて復讐したこともありました(笑)」
あえて“多忙な道”を選択し、子どもと関わる
仕事や学校と子育てを両立する中でも、子どもたちと食事を通してコミュニケーションをとるだけでなく、5人それぞれとふたりきりの時間を意識的につくるようにしていると敦子さん。
子どもひとりひとりと話す時間を作る
「今は一番上の子が高校生、一番下の子が4月から小学生なので、以前に比べると子育てはものすごく楽になったのですが、12年続いた送り迎えがなくなって、気楽な半面、少しさみしい気持ちもあります。登園やお迎えの時間って、意外と子どもとゆっくり会話ができるので、そういう時間がなくなるのが残念です」
――大変だけれど、子どもたちと向き合う良い時間だったんですね。
「うちの子どもたちは、きょうだいでみんな違うスポーツや習い事をしているんです。長男は小学校でラグビー、中学でハンドボール、高校はバレーボールと幅広くやる性格。次男は野球一筋。三男はバスケ。長女はピアノをがんばっています。
5人子どもがいて楽しいのは、それぞれの試合やお稽古を見に行く時間に、その子とだけの1対1の会話になれるところ。部活の当番もできる限り担当するようにしています。
――5人のお子さんがそれぞれ部活や習い事をしている上で、当番もやっているのですか?
「はい。私は本当は怠け者で、時間も限られているし、ほっといたら楽な方に行ってしまうので、部活の当番や学級委員には立候補したりしています。わざと忙しくなる道を選択することによって、その子とすごく深く関われるんです。
たとえば、次男と双子が小さい頃は、延長保育がある幼稚園に通っていたんですけど、給食がなくお弁当で、スクールバスのない園をわざと選びました。自分で送り迎えをした方が、ちゃんと子どもと顔を合わせられてコミュニケーションを取れるかなと思って。
『この子は今、ちょっと不安定になっているかな?』と感じたときや、時間に余裕がある日は、早めに迎えに行って歩いて帰るとか、いつも立ち寄るお店でゆっくりしてから帰るとか、子どもと向き合う時間をわざと日常の中に作るようにしていましたね。
その間、他の子はお留守番やシッターさん、保育園だったりするんですけど、私の中では、『あなたの順番も必ず回ってくるからね』という気持ちでいました」
さみしい思いをさせた幼児期
――忙しい毎日でも、子どもたちと深く関わる機会をつくろうと思ったのには何かきっかけがありましたか?
「子どもたちが小さかったころは、とにかく申し訳なく思っていたんです。特に、次男は1歳で下の子が生まれてしまって。1歳なんてママを独り占めしたい全盛期なのに、余裕がなくてちゃんとゆっくり見てあげられなかったことを、ものすごく申し訳なく思っています。
だから今は、自己満足かもしれないですけど、次男の学校の役員を多めにしてより多く関わりを持つようにしています。
次男だけでなく、うちは上の4人がすごく年が近く、小学校のころもさみしい思いをさせたこともありました。普通に日常を過ごしていたら、ちゃんと見てあげられないことが本当に多くて。
だけど、『あのときできなかった』で終わるのではなく、『あのときはできなかったけど今できることがあるとしたら何だろう』と考えています」
助産師になることを決めたターニングポイント
子育てや仕事、家事に追われる慌ただしい生活を送る中、助産師という夢を見つけ、前進している敦子さんは、自分自身の変化についてどのように感じてきたのだろうか。
助産師をめざすきっかけは周囲のサポート
――現在、看護学校に通われていますが、助産師になりたいと思うようになったきっかけは何ですか?
「双子を出産して一番つらかったときに、いろんな人に助けてもらったことがきっかけです。それまでは子どもが2人だったので、自分のできる範囲でできていたんですが、双子を産んで子どもが4人になってから、もうどうがんばってもひとりじゃ抱えきれなくなりました。
私自身が4人きょうだいの長女で人に頼りにくい性格、というのもあるかもしれないのですが、当時は人に迷惑をかけるのはダメな母親だという思いがあって。だけど、助けてくれる人や手を差し伸べてくれる人は周りにたくさんいて、“頼れる人がいるなら頼ってしまえ”と吹っ切れて、『ありがとうございます』って素直に受け入れられるようになったたんです。
そうやって周囲の人に助けてもらったから、私自身も子育てで大変な思いをしている人の役に立ちたいなと思い、まずは資格をたくさん取りました。食育アドバイザー、チャイルドカウンセラー、保育士資格、ベビーマッサージの講師など。国際協力NGOのジョイセフさんで経産婦の支援活動もやらせていただきました。
そのときに、『経験値だけじゃなく、自分の言葉に責任を持ちたい』と思ったんです。そのためには、医学的な知識や資格を持つことで、より近くでお母さんと赤ちゃんを支えられる立場になれるんじゃないかと。
それで、長男が中学校に入学、末っ子が3歳で保育園に入園というタイミングで、私もいっしょにスタートしようと看護学校に入学しました」
助産師になるためには、4年間の看護学校で看護師免許を取ってから、さらに1年か2年、助産学校や大学院に進み、助産師資格をとることが必要。敦子さんは今年看護学校の4年生となり、来年、看護師の国家試験を受ける予定だという。
子どもができることは子どもに頼る
敦子さんの1日は、早朝の洗濯、掃除から始まり、仕事、学校と多忙を極める。仕事がある日と、ない日の2パターンの1日のスケジュールを教えてもらった。
――起きてすぐ、洗濯と掃除をされているんですね。
「部屋をきれいにしてから出かけるということを毎日徹底しているんです。子どもたちが帰ってくるのが私より先になるので、そのときに散らかってる部屋よりも、せめて私がいない間ゆっくりできるようにきれいな部屋に帰ってきてもらいたくて。朝干した洗濯物を夕方に取り込んでくれるのは、小学4年生の双子なんですよ」
家事を中途半端な状態で出て行った日でも、帰宅すると途中になっていた家事を子どもたちが引き継いでやってくれていたりするという。子どもたちの自主的に動く感覚は、どのようにして身についたのだろうか。
「家族みんなが、共同生活だという認識があるので、助け合うような感じですね。私も、子どもたちが出来ることは子どもたちに頼っています。みんなが小学校に通っていた頃は、それぞれの名前を書いたルーレットを回してお風呂掃除、犬のお世話、ゴミ出し、食器の片づけなどの担当を決める当番表を作ったりもしていました。
でも、もう上の子が大きくなり、中学生になると定期テストや部活で家にいる時間も少ないので、当番表は廃止に。今は、家にいる時間が長い人から順に動く感じです」
物より経験を大事にする
ファッションモデルをメインとして活躍していた出産前と比べると、敦子さん自身の時間の使い方や、考え方はどう変化したのだろうか。
――子育て中は、圧倒的に自分の時間が少なくなって時間が限られてきますよね。
「子育てをするようになってから、時間の使い方が上手になったと感じています。子どもが5人なので同時進行することが常に2つ以上あるんです。そうしてると、私はマグロのようだなと思って(笑)止まると死ぬかのように、常にずっと動き続けているから。もともとはわりと面倒くさがりな性格なので、きっとこれは子どもたちにもらう力なのでしょうね」
――子どものいる暮らしになって、変わったことや新しい発見は何かありますか?
「20代の頃は、ファッションモデルをしていたこともあって欲しい物がいろいろあったんです。でも、30代になって子どもが増えていくにつれて、『何かを買うより、もっと大切なものってなんだろう?』と考えるようになって。
自分が持っている物よりも、経験や日常をもっと大切にするようになりました。たとえば、我が家では子どもたちと一緒に梅干しやお味噌を自家製で作っています。
私がおばあちゃんが作っていたのを見ていて、娘や子どもたちにもそういう姿を見てもらいたいなと思って。季節を感じたり、毎年の思い出が大人になったときに懐かしいなってすごく思うので、子どもたちの引き出しをつくる経験にお金の価値を見出したいなと思います」
その他にも、看護学校の実習でつくる名札を長女に裁縫を教えながら取り組んだり、毎年家族全員での富士登山を恒例にしていたりと、子どもたちのさまざまな引き出しをつくる経験にお金の価値を見出したいと敦子さんはいう。
「子どもたちに色んな経験をしてもらいたい。将来、自分が親になったときに子どもに教えられる親になってほしい」そう語る敦子さんから、とても深い愛情を感じた。
子どもに人生を楽しむ姿を見せたい
敦子さんが子育てをする中で培った一番大切なことが、『まずは自分が人生を楽しむ姿を見せる』ということ。そのように思うようになったのは、自身の育った家庭にあるのだそう。
「私の両親が、家族で旅行したり遊んだりするのがすごく好きだったんです。早朝にテーマパークに着いて開園まで車で仮眠をとって、1日中遊んで閉園までいるみたいな、そういう姿を見ていて、子どものために連れていくのではなく、両親自身が旅行や遊びが好きだったんだなと感じていました。
子どもにとって一番最初の社会は家庭だから、家の中にいる大人から、『大人になったらこんなに楽しんだ』ということを身近に感じてほしい。実際はすごく大変だけど、今の私のように、自分の人生に責任を持って、やりたいことをやってるっていうのが伝わればいいかなと思っています。
私も、実は料理もそんなに好きじゃないですけど、自分の寝る時間が短くなっても、お弁当やおやつを一生懸命作っているのは、やっぱり子どもにおいしいって言ってもらえるのが好きで、それを見たいからだなと。
子どものために自分を犠牲にしているというより、楽しいからやっているというのをベースに置いておきたいですね。そうじゃないと、子どもを5人も産もうと思わないと思うんです。
将来、子どもたちに『ママ、大変そうだったけど、やっぱり楽しそうだったよね』と言ってもらいたい。この家族でよかったなと思える瞬間を、私も子どもたちも、日常の中でたくさん感じられたらいいなと思います」
編集後記
5人の子どもたちひとりひとりと真摯に向き合う時間と、家族が一丸となってこなす家事、そして助産師になるための学業とを両立させる敦子さんの生活のハードさは、取材に立ち会った全員を圧倒させた。しかしそれ以上に、自分自身の人生を楽しむ姿勢と、子どもたちを想う深い愛情は、すべてのママが勇気づけられると実感した取材だった。
<取材・撮影・執筆>KIDSNA編集部