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ショート動画よりは映画の方がマシ?”スマホに主導権を握られてはいけない理由
「スマホ育児」をテーマに、子どものスマホ利用について研究を続けてきた東北大学応用認知神経科学センター助教・榊󠄀浩平先生榊浩平先生と、現役保育士のてぃ先生がトーク。司会には、自身も2児の母である、タレントの鉢嶺杏奈さんをお迎えしました。後編では、スマホに頼らざるを得ない育児をどう工夫していったらよいのか。

榊浩平。東北大学 応用認知神経科学センター 助教。2019年東北大学大学院医学系研究科修了。博士(医学)。人間の「生きる力」を育てる脳科学的な教育法の開発を目指した研究を行っている。

てぃ先生。現役保育士。SNS総フォロワー数は180万人を超え、保育士としては日本一の数を誇る。育児アドバイザー、顧問保育士、講演活動など、メディア出演なども多数。

鉢嶺杏奈。1989年 東京都出身。映画やドラマ、CMで女優として活躍する一方、TBS系バラエティー「日立世界ふしぎ発見」のミステリーハンターを務めるなど、タレントとしても活躍。2児の母。
スマホに主導権を奪われるな
鉢嶺:榊先生は普段スマホをどれくらい使っているのでしょうか?
榊:私は必要なときだけ使うようにしています。普段は通知をすべて切っていて、夕飯のあとにメッセージを確認する時間をとっています。スマホはあくまで“道具”なので「スマホに使われる」のではなく「自分が使っている」という感覚を持つべきです。その主導権を自分がちゃんと握るためにも、通知はオフにしているんですよね。自分のペースで“使う”ための工夫です。

てぃ先生:主体的に使用することが大切ということですね。それを考慮すると、正しく使うことができればスマホは子どもにとって良い面がちゃんとあると思います。例えば、その子だけでは本来思いつかなかったアイデアが増えること。おままごとをするにしても、他の子の遊び方を動画で見ることによって、本来持てなかった選択肢が持てるようになる。そのような使い方はどうですか?
榊:いいですね。まず目的がしっかりあって、軸足が自分にある。あくまで道具としてスマホを使っているわけなので、間違っていないと思います。
てぃ先生:車が好きだからといって、ただ車の動画を見て「面白かった」だけではもったいない。でも「車の絵を描きたいから、車の詳細を調べるために動画を見て参考にしよう」だったら主体的にスマホを使用できる。子どもに渡すときは、お子さんが興味のある遊びに関連づけたらよいということですね。
鉢嶺:すごく納得です。だけど普段から子どもの遊びをかなり見ていないとできないですよね。
てぃ先生:年齢にもよるかもしれません。0~2歳のあいだは、そもそもスマホを“道具”として扱うのはまだ難しいですよね。でも、2歳を過ぎてくると、スマホで見たものをヒントにして、自分の遊びに取り入れたり、真似してみたり、少しずつ“活用する力”が出てくると思います。

ショート動画よりは映画がベター
鉢嶺:なんとなく親としては、YouTubeより映画作品のほうがまだいいのかなと思っているのですが、考え方としてはどうでしょうか?
榊:ショート動画よりは長尺の映画のほうが悪い影響は少ないと思います。切れ目がしっかりあるし、長時間の集中が必要なので。ショート動画は集中しているわけではなく、まさにダラダラ眺めているだけの状態に陥りやすいです。
てぃ先生:どうせ見せるならコンテンツの質が高いのを見せたいと考える親御さんは多いと思いますが、その視点は間違ってないですか?
榊:そうですね。テレビの時代からそのような研究はされています。やはり英語や文字など教育的なコンテンツが含まれるテレビ番組のほうが、影響としてはマシだったというデータはあり、それはスマホでもある程度同じだとは思います。
”親の覚悟”がスマホ時間を減らす鍵
鉢嶺:子どもの発達にスマホがよくないことはわかりましたが、どうしてもスマホや動画に頼らざるを得ないときもあるかと思います。てぃ先生、そんなときはどうしたらいいでしょうか?

てぃ先生:子どもが4歳だとしたら、その4年間でスマホのルーティンが積み重なってきているわけですよね。それを「今日から1日でガラッと変える」なんて、相当難しいですよ。
習慣って、スイッチみたいにオン・オフで変わるものじゃなくて、色が少しずつ変わるみたいに段階を踏む“グラデーション”なので。そしてこの“グラデーション”って実は今までの4年間にもあったわけです。最初は「5分だけ」のつもりだったのが、気づけば10分、30分、いつの間にか3時間みたいに、少しずつ広がってきたという…。
このグラデーションを元に戻すには、同じようにグラデーションでやっていくしかありません。意識の問題ですが、毎日3時間見ていたのを2時間55分、2時間50分、2時間45分と減らしていくようなイメージです。

鉢嶺:ただ、どうしても子どもに時間を割けない瞬間ってあると思いまして。そういうときはスマホに頼るしかないという場面も正直あると思うんです。
てぃ先生:それは親御さんの覚悟の問題もあると思いますよ。本当に子どもの発達を考えるのであれば、スマホを見せるのではなくて、親と過ごす時間を増やすこと。特に小さい子の場合は、スマホを見るよりもママやパパと関わっているほうが楽しい時期じゃないですか。
でも、遊ぶ時間を増やすためには、親が何かを手放したり減らしたりしないとどうしても無理ですよね。今まで料理に2時間かけていたとしたら、1時間半にするとか。そうすれば子どもとの時間を作れるかもしれない。
親が物理的に時間を生み出す努力をしないと、気持ちだけでスマホの時間を減らすのは難しいんじゃないかな。意識だけの問題ではないので。
スマホを見せた後、親がすべき行動
てぃ先生:以前から僕は、スマホで見たものはせめて”アウトプット”することを推奨しています。たとえば視聴した動画の話を食事中にしてもらったり、一緒に「あれ面白かったね」と振り返ってみたり。そういうやり取りがあるだけでも、少しは学習的な要素になると思うんですよね。
榊:素晴らしいですね。実は動画を見ているとき「考えたり覚えたりする脳の領域」の活動はグッと下がります。だから、内容を深く処理したり整理したりするところまでいかない。その結果、いざ自分で問題を解こうとするとできないなんてことが起こります。つまり、“理解したつもり”で止まってしまっている、ということなんですよね。
だからこそ、動画で見たり学んだりしたあとは、“自分の記憶に留めるための活動”が必要なんです。それがまさにアウトプットなんですよね。得た情報を自分の中で組み立て直して、思い出す練習をする。このプロセスを幼い頃から積み重ねられたら、とてもいい習慣になると思います。
てぃ先生:教育コンテンツを見せるにしても、ただアルファベットが出てくる歌の動画を見るのではなくて、せっかくなら「さっき見ていたABCの歌、一緒に歌ってみようか」とするのがいいですね。
鉢嶺:なるほど。コミュニケーションの大事さを実感します。

てぃ先生:あとは、子どもが動画を見ているとき、最後の1分だけでもいいから親も一緒に見るのはどうでしょう。そうすると、その1分だけでも親子が同じことに意識を向けた時間になる。子どももきっと嬉しく感じるし、共通の話題も増えますよね。
榊:いいですね!親子が同じものを一緒に見ることは愛着形成に寄与します。私も動画は親子で一緒に見るとよいとは考えていましたが、ずっと一緒に見るのは現実的じゃないですもんね。「最後だけでも」というアイデアは、非常に勉強になりました。
鉢嶺:今日からできることなので希望が持てますね!
「子どものルール」ではなく「家族のルール」を
鉢嶺:子どもに対して「スマホはダメ」と制限するだけではなく、有意義なルールにするために親ができることはありますか?
榊:2つポイントがあります。まずは、家族でしっかりと話し合いをすること。親が一方的に決めたルールは、子どもにとって現実的ではなかったりします。しっかりと話し合い、スモールステップでできる範囲のルールを作りましょう。
次に「子どものルール」を作るのではなく、「家族のルール」を作ること。つまり、親も一緒にやるということです。スマホ依存は大人も問題になっているので、家族の問題として考えることが必要です。

てぃ先生:ルールを敷くのであれば、親が率先して守らないといけないですよね。親がスマホを触っていいのは、子どもが触っているときだけとか。つい「子どもに対して」ルールを作ってしまいがちですが、大人もルールを守っている姿を見せるべきかと思います。
鉢嶺:子どもからスマホを遠ざけたいのであれば、親もスマホを遠ざけないといけないということですね。
榊:そうですね。ただ、科学はどうしても平均の話になるので、全ての子に当てはまるわけではありません。そのためデータに囚われすぎず、各家庭でスマホとの付き合い方を考えてもらえたらと思っています。
鉢嶺:ドキッとするお話もありましたが、これからのスマホとの付き合い方に光が見えるようなアイデアをもらうことができました。榊先生、てぃ先生、ありがとうございました!




























