わがままは”負けたもの勝ち”?子どもは許容ラインを見極めている。

わがままは”負けたもの勝ち”?子どもは許容ラインを見極めている。

2025.07.14

現役保育士のてぃ先生、1児の母であるpecoさんの「令和時代の子育ての子育て」をテーマとした対談企画第3弾。司会には自身も2児の母である、タレントの鉢嶺杏奈さんをお迎えしました。後編のトークテーマは、子どもの叱り方、わがままをどこまで認めるか。

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(左)てぃ先生。現役保育士。SNS総フォロワー数は180万人を超え、保育士としては日本一の数を誇る。育児アドバイザー、顧問保育士、講演活動など、メディア出演なども多数。(中央)peco。1995年 大阪府出身。原宿系のファッションモデルとして若者を中心に絶大な人気を集め、現在は自身のブランド「Tostalgic Clothing」のプロデューサーを務める。1児の母。(右)鉢嶺杏奈。1989年 東京都出身。映画やドラマ、CMで女優として活躍する一方、TBS系バラエティー「日立世界ふしぎ発見」のミステリーハンターを務めるなど、タレントとしても活躍。2児の母。

子どもの暴言は制限しないほうがいい

鉢嶺:今回、自分時間のテーマとは別に読者からコメントをもらっているのですが、特に多かったのは子どもへの叱り方で悩んでいるという意見。pecoさんはいかがですか?

peco:私は感情に任せて怒ってしまうことも多く、「これは“怒る”なのか“叱る”なのか」と自分でもわからなくなることがあります。それでも、怒ったあとには必ず息子の目を見て「お話を聞いてくれてありがとう」と伝えるようにはしています。

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てぃ先生:めっちゃいいと思います。叱るときの距離は大事と言われていて、本当にやってはいけないことを叱るときは、pecoさんがおっしゃったように距離をぐっと縮めて叱る。逆にそれ以外のことは距離を取ってサラッと言う。全部同じように距離を詰めちゃうと、本当にいけないことが伝わりにくくなってしまいます。

また、もっと距離を詰めたほうがいいのは、褒めるとき。子どもがいいことをしたときや、ママにとって嬉しかったときは、距離を縮めて褒めるほうが、子どもは嬉しいです。親御さんは日々忙しいから、怒るときは距離を縮めてガッと言うけれど、子どもがひとりで遊んでたりすると「ラッキー、なんか遊んでるな」と距離を縮めない。そうすると子どもは「悪いことをしたほうが構ってもらえる」と、わざと悪いことをしたりもするんです。

peco:実はてぃ先生に相談したいことがありまして。最近、息子と一緒にお風呂に入っていたとき、私がある事に注意していたら息子が鏡に「Stop talkng」と書いたんです。ちょっとイラっとしましたが、私だけに言うのであれば別にいいと思うんです。ただ、外で友だちには言わないでほしいじゃないですか。きっと息子も外では言わなくて、家では発散するために言ったのかもしれない。でも、どんなふうに伝えたらいいのか悩みます。

てぃ先生:親御さんは子どもへの愛情がゆえに、お友だちとの関係で失敗させないようあらかじめ家庭で教える、つまり先回りの対処をしがちです。でも、小さい頃には失敗が必要です。仮にお友だちにひどい言葉を言っちゃってお友だちが離れていったとしたら、その結果をもって「こんなことを言ったらだめなんだ」と気付くかもしれない。

人間は「あの子には言っていい」」「この人には言っちゃダメ」と、社会のなかで学んでいくし、人によって態度を使い分けてしまうことは誰しもありますよね。でも、それも含めて大事な経験だと思うので、「こういう発言は絶対にしてはいけない」と強く教えなくてもいいかなと思います。


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peco:なるほど……。ちなみに最近は「Go away!」とも言われて、たぶんテレビで覚えた言葉だと思うので、「その言葉は本当によくない。もしテレビからそういう言葉を覚えてくるなら二度と見せへんよ」と言いました。これはよくないですか?

てぃ先生:基本的にはゲーム禁止と言われたらもっとやりたくなるように、お子さんがやりたいことや興味のあることを制限することは、逆に助長してしまう可能性が高いです。たとえばママに対して「ババア」という言葉を使い、怒られ、その言葉を禁止とされたとしたら、外で言ってしまうかもしれないし、もっとひどい言葉を言ってしまうかもしれません。

だから、子どもがやりたいことは、”やってもOK”のタイミングを限定的に確保してあげるのがおすすめです。たとえば戦いごっこをしているときならOKとか、今から10分間は何でも言っていいという時間を作るとか。絶対に怒られない時間が確保されていたら、違う時間に言って怒られるよりは、その時間に言おうと我慢できるじゃないですか。ただ禁止にするのではなく、やってOKのタイミングを保証してあげるとよいですよ。

あともう一つアドバイスをするのなら、「お友だちにそんなこと言ったらダメだよ」というだけではなく、「あなたがそんなことを言ったらママが悲しいよ」と親御さんの感情を伝えるとよいです。


”本当の意味で”子どものためになる褒め方

peco:それでいうと子どもの「とにかくママを喜ばせたい」という純粋な気持ちは嬉しいけど、それがエスカレートして「ママが喜んでくれるからやろう」という風にはなってほしくなくて。たとえば息子が友だちにおもちゃを貸せなかったときに「貸してあげたらママは嬉しいな」と言うと、ママを喜ばせることが目的になるじゃないですか。それってちょっと違うのかなと思ってしまって……。

てぃ先生:結論からいうと、最終的にフォーカスをずらしたらいいと思います。「ママは貸してあげたら嬉しいな」と言って、友だちに貸すことができたとします。そうしたら「貸してあげたんだ、ママ嬉しいな」ではなくて「お友だちに貸そうと思ったんだね。その気持ちがすごく素敵だと思うな」とフォーカスをずらして褒める。つまり、ママが喜ぶからではなくて、おもちゃを貸そうと思った自分の気持ちが評価されている、と子どもが感じ取れる。

鉢嶺:慣れていないとなかなか難しそうです。練習しないと……。

てぃ先生:よく結果よりプロセスが大事と言うじゃないですか。それと同じです。仮におもちゃを友だちに貸せなかったとしても「貸してみようとちょっと思ったんだよね? それが素敵だと思うよ」と言ったらいいと思います。

peco:マイナスなことを言うのではなくて、ちょっとでも子どもに芽生えたその気持ちを汲み取るんですね。


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わがままが許されるラインを見極めている

鉢嶺:読者の方からは「子どものわがままは、どこから叱るべきか」というお悩みも多く寄せられています。私自身もどこまでわがままを受け入れて、どこから叱るべきかは日頃からとても難しいと感じています…。

peco:私はどんなにとんでもないリクエストで、絶対に叶えられないことだとしても、まずは「それをやりたいってママに教えてくれてありがとう」とは必ず言うようにしています。

てぃ先生:素晴らしいですね!どんなにわがままなことでも思うことは自由だから。まずは受け止めることが大事です。

小さい子どもは「ここまではできる」「これ以上はダメなんだ」というような感じで、自分と親との信頼関係では要望がどこまで通るのかを試します。ある意味研究している段階なんですね。つまり「ここまで」というのが研究の結果としてわかれば、どこかのタイミングでそれ以上は自分からは言わなくなります。

それは別に我慢しているわけではなく「うちの家庭においてはこうなんだ」と学んだ結果だから、試し行動も悪いことではありません。いきなり全部を理解するのは難しいですから。

peco:うちの息子は来月で7歳になるのですが、けっこう学んだと思います。最近はそんなに無茶なことは言わなくなってきました。自分時間の話もそうでしたが「ママはこうだから」と伝えておかないと、学んでもらえないですよね。

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てぃ先生:子どものわがまますべてを受け入れることはできないけど、頭ごなしに拒否するのではなく「これならできるよ」と代案を出していくといいですよ。

そのときにおすすめするのが「わかった。もう〇〇くんの勝ち、ママの負けだよ」と言って、負けたふりをすること。

わがままモードになっているときの子どもって、自分の要望を通したいということもありますが「パパママに負けている」という状況が嫌なんです。なので「負けたふり」をすることは、子どもの「勝ちたい」という気持ちを満たしてあげられる。そうすると、意外とすんなり落ち着いてくれたりします。

鉢嶺:そんな方法があるんですか!

てぃ先生:もちろん親御さんが要求を受け入れてくれること自体、子どもにとっては嬉しいですが「ママ、負けたよ」と言うともっとわかりやすくなります。親御さんは子どもに負けるとどんどんわがままがエスカレートするんじゃないかとか心配しがちですが、意外と負けたもの勝ちだったりするものですよ。


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