自分の脳を知ることが勉強の第一歩。自分を追い込まないサバンナ八木の勉強法とは

自分の脳を知ることが勉強の第一歩。自分を追い込まないサバンナ八木の勉強法とは

2025.01.30

2024年11月にFP1級の資格を見事取得した、お笑いコンビ「サバンナ」の八木真澄さん。「自分の脳は高性能パソコンのような処理はできない」と語る八木さんは、自分を知ることで自分に合ったオリジナルの勉強法を生み出す。日々の生活を大切にしながらも勉強に打ち込む、独自の方法について教えてもらった。

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八木真澄。1974年8月4日生まれ、京都府出身。1994年、サバンナを結成。芸人として活躍する一方で、2024年にはファイナンシャルプランナー1級の資格も取得。2児の父。

約2年半かけてFP1級の資格を取得

ーー2024年11月にファイナンシャルプランナー1級の資格を取得された八木さん。そもそもなぜお笑い芸人である八木さんがFPの資格を取得しようと思ったのでしょうか?

八木:きっかけは、レギュラー番組がなくなったことです。営業の仕事も諸事情により減ってしまったので、新しい分野を切り開かないといけない、と。あとは、今後の人生を考えると60歳になったときの自分が想像できないという不安もあり、勉強を始めました。

ーーなぜFPだったのでしょうか?

八木:芸人で持っている人がいなかったので、仕事に繋げられるかなと思いました。例えば、お昼の情報番組には芸人の枠がありますが、当時の自分はそこに立つことを想像しても喋れる自信がなかった。今だったら専門知識があるし、皆さんは知らないことを僕が知ってるという強みがありますが、当時は武器になるようなものがなかったので。

2022年5月から勉強を始めて、2022年9月に3級、2023年1月に2級。1級に合格するまではそこから1年半以上かかり、2024年11月に合格することができました。


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まずは自分の脳の特徴を知ること

ーー八木さんの勉強法のポイントを教えてください。

八木:まずは自分自身をよく知ることが大切だと思っています。これは僕が中学受験をしたときの原体験からきていて。小学校4年生から受験のために進学塾に通っていたのですが、授業についていけずにクラスはずっと最下位でした。

先生の話が理解できず、ようやく分かったと思えば周りはもう次に進んでいて…。そんな悪循環を繰り返しているうちに、何をやっているかわからなくなってしまいました。

ですが、6年生のときに「これではダメだ」と思い、手始めに塾の内容は一切無視して、テキストの1ページ目から自分のペースで読んでみました。すると、不思議と頭にスッと入ってきたんです。

この経験から、僕の場合、要領は悪くても自分自身が確実にひとつひとつを理解して、時間をかけて土台を作り、その上に知識を積み上げていくと忘れないと知りました。自分の学習ペースを作る、ということが僕にとっては重要だったんです。自分の勉強法を突き詰めた結果、中学受験も上手くいきました。

ーー小学校時代の原体験からご自身に合った勉強方法がわかっていたんですね!

八木:はい。ただ、確立したのは芸人になってからですね。芸人ってほんとに頭の賢い人ばっかりなんですよ。最初は努力でどうにかなると思っていたんですが、同じ台本を見ても覚える速度、理解する速度がやっぱり違った。例えば、何かアドリブを求められたとき、脳が処理するスピードが、僕の相方は速いけれど僕は遅い。パソコンの性能が違うように、脳の性能は人それぞれ違うんだなと次第に気がつきました。

テレビの仕事でのアドリブは今でも苦手ですが、自分の講演会で2時間通して話すことはできる。なぜなら、自分のペースで準備もできるし、自分が理解していることを話す場だから。自分の強みに気が付いたことは芸人としても、一個人としても大きな発見だったと思います。


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ノートは書いたら捨てる。使うのは過去問だけ。

ーーFPの勉強をするとき、どのような方法で行っていたのでしょうか?

八木:とにかく過去問を解いていました。特に応用編と呼ばれる難しい過去問は、どれだけ解くのに時間がかかっても必ずやっていましたね。確か、最初は13時間くらいかかっていたと思います。

勉強するときに大切なのは”どれだけ記憶できるか”です。僕のおすすめ方法は、自分に近いことから派生して覚えること。例えば、歴史で江戸時代と言われてもあまりピンとこないかもしれない。でも「僕のおじいちゃんのおじいちゃんが生きていたかもしれない」と思ったら身近に感じられませんか?なので、僕はFPの勉強をするときも、年金だったり自分に関係するテーマから入り、そこから徐々に知識を広げていきました。


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ーー普段勉強はどこでしていますか?

八木:家だったらリビング、あとは移動時間ですね。特に移動は勉強時間を取りやすいので、重宝しています。例えば、大阪に行くとき「のぞみ」ではなく、あえて「こだま」に乗ったりとか(笑)。時間に余裕を持って行動して、新幹線の待合室で勉強することもあります。

ーー常に勉強道具を持ち歩いていたということですね。

八木:そうですね。FPの勉強中は、どこに行くにも過去問を見るためのタブレットと、計算したり答えを書くためのノートとペン、そして電卓を持ち歩いていました。


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あと、道具ではないですが、とある方のYouTubeをよく見ていました。現代の勉強ってほんとに情報戦なんですよね。FP1級の試験は実技試験もあるのですが、情報が驚くほど少なくて。

対策本を買ってきても、一体どこからどこまでが問題なのかもわからないし、何をするのかも分からない状態だったんですよ。周りにFP1級を取得した人がいれば、その方に聞いてみるということも出来るかもしれませんが、僕にはそのような人脈はなかった。

そんな中で再生回数が100回くらいの、全然見られていない動画を偶然見つけたんです。その動画では、その方がFP1級の問題に挑む様子があったのですが、その内容が自分にあっていたのか「こういうことだったのか!」と一気に理解できました。

今までも他のYouTubeで、FP1級に関するものは色々と見たんですけどね(笑)。たまたま僕の合否を左右するような動画に出会えました。

ーー色々な情報があるなかで、自分に一番フィットしたものをいかに見つけられるかということですね。


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勉強もトレーニングも「疲れた」のならやりすぎ

ーー八木さんが勉強する上で大切にしていることを、ズバリ一言で教えてください


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八木:「自分にどれだけ負荷をかけないか」でしょうか。僕が30年以上続けているトレーニングで例えますが、ジムで1回2時間くらい頑張る人、厳しく食事制限をしている人というのは、大体燃え尽きる傾向にあると思います。自分に負荷をかけすぎて、続けることがしんどくなっちゃうんですね。自分が取り組みたいことを、どれだけ嫌いにならず、好きでいられるかということは、トレーニングや勉強など、コツコツ積み重ねが必要なものに関しては特に大切だと思います。

もう少し詳しく説明すると、ファーストフードに行くときに「よっしゃ、今日コーラとハンバーガ食べるぞ!」と思う人いなくないですよね(笑)。勉強もジムもそんなテンションでいいんです。しんどいところまでやるからしんどいだけ。

だからジムではがっつりベンチを上げるのは20分くらいだし、勉強も分からなくてしんどいことをやる瞬間は朝イチの20分くらいだけでいい。その他はストレッチだったり、繰り返しやってる問題だったりで、自分を追い込まないことです。実際、僕も自分の80%以上はやらないことにしていますね。疲れたと感じたならやりすぎなんです。

やりたいからやるけど、やりたくなかったらやらなくていいという気持ちを大切にしています。

ーーこれから勉強を頑張ろうという子どもたちにメッセージをお願いします。

八木:受験は定員があるから他人との勝負になってしまうけれど、勝ったからといって偉いわけではないし、失敗しても落ち込む必要もありません。ですが、勉強する行為そのものは自分を裏切らない。そこだけを求めて勉強してほしいと思います。

勉強にゴールはないし、一生続くもの。失敗しても焦らずにまたやれば大丈夫。M-1グランプリで前回は令和ロマンが優勝したけれど、もし明日また開催したら誰が勝つかはわかりません。それを毎日繰り返しているだけ。僕は死ぬまでチャレンジャーでい続けたいなと思います。


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