寝る”だけ”が休養ではない。子育て世帯こそ「攻めの休養」を取り入れるべき

寝る”だけ”が休養ではない。子育て世帯こそ「攻めの休養」を取り入れるべき

2026.04.06

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片野秀樹

片野秀樹

博士(医学)、休養学者。一般社団法人日本リカバリー協会代表理事/株式会社ベネクス創業者・執行役員

「休んでいる暇なんてない」「眠る時間がなくて休めない」——育児中のお母さんの多くが、そんな言葉を自分に言い聞かせながら毎日を過ごしているのではないでしょうか。今回は、一般社団法人日本リカバリー協会の片野秀樹さんに「科学的な休養」について伺いました。「休む」ことを罪悪感なく取り入れるためのヒントを、3つの視点からお届けします。

親が知っておくべき3つの視点

視点①:「何もしない」は休養ではない

片野:日本リカバリー協会は、日本疲労学会・株式会社ベネクスと共同で、2017年から全国10〜14万人(20〜79歳、男女各5〜7万人)を対象にインターネット大規模調査「ココロの体力測定」を実施しています。

2025年4月25日〜5月25日に行われた最新調査では、「元気な人」が21%にとどまる一方、「疲れている人(低頻度)」が37%、「疲れている人(高頻度)」が42%という結果が出ました。つまり、実に約8割の人が何らかの形で疲れを感じているということになります。

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出典:日本リカバリー協会「リカバリー(休養・抗疲労)白書2025 レポート」をもとに、KIDSNA STYLEが作成

なかでも育児と重なる20〜30代の若い女性は、ほぼ9割の方が疲れていると回答しています。

疲れている方の多くに共通しているのが「寝る=休養」という考え方です。寝ることさえできれば休めるのに、育児や介護でそれができない。だから「休めない」と感じてしまう。でも、寝ることだけが休養ではないのですね。

休養をしっかり取るために何をしたらいいのかということを、頭で考えて行動するということが、まさに待ったなしで求められているというのが現代社会の課題だと思います。

視点②:休むことは、生産性を高めるための投資である

「休む」と聞くと、どこか後ろめたい気持ちになってしまう。そんな方は少なくないはずです。ですが片野先生は、休養とは活力を「充電する」行為であり、翌日のパフォーマンスへの投資なのだと言います。

片野:朝起きて「活動」を始めると、必ず「活動能力の低下」が起こります。これを学術的には「疲労」と呼びます。疲労が溜まると体は「休みたい」というサインを出す。それに従って休養をとり、また活動に戻る——多くの方がこの3つのサイクルで日々を回しているんですね。

多くの人の活動サイクル

でも、このサイクルで回っているにもかかわらず、8割の方が「疲れている」と答えている。つまり、このサイクル自体を見直す必要があるということです。

電池に例えるとわかりやすいのですが、活動によって電池が消耗した状態が「疲労」、休養によってしっかり充電された状態が「活力」です。活動・疲労・休養・活力、この4つをしっかり回すことが、持続可能な生活のサイクルなのです。

持続可能な生活サイクル

この持続可能な生活サイクルを実現するために、しっかりと活力を高める休養を取らなければいけない。これを我々は「攻めの休養」と呼んでいます。

そして攻めの休養を取るため、私たちは「7つの休養タイプ」というものを提唱していています。

出典:杉田正明, 片野秀樹編著「休養学基礎」(メディカ出版,2021)をもとに、KIDSNA STYLEが作成

まず休養を「生理的」「心理的」「社会的」の3つに分け、それをさらに細分化したものが7つの休養タイプです。

休養の方法は、10人いたら10人異なります。まず大切なのは、”自分に合った休養行動は何なのか”ということを7タイプの中で見つけることです。

ちなみに、産前産後の女性への調査では「休息タイプ」「転換タイプ」が特に不足しているという結果が出ています。

休息タイプというと「やっぱり寝ることでは?」と思われるかもしれませんが、ちょっとした休憩時間を挟む、あるいはマイクロスリープのようなちょっとした睡眠をとる、あるいはその場で目をつぶって動かないというもの。1分でも2分でもいいです。そういう小さな休息をとるということも意識的にしていただけるといいのかなと思います。

それでも、育児中はなかなか自分の時間が取れないと思われる方もいらっしゃるかと思います。そういう方にぜひお伝えしたいのが、お子さんとのハグや、頭をそっと撫でてあげる時間が「親交タイプの休養になる」ということです。研究によって、撫でてあげる側も、撫でられる側も「オキシトシン」という愛情ホルモンが分泌されることがわかっています。

余白時間の中で、いかに効率的に休養をとるかということを意識的にしていただけると、お子様と一緒に過ごす時間自体も、休養の一つにするという考え方もできると思います。

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視点③:「オン至上主義」から「オフ至上主義」へ

片野:現代はインターネットもそうですが、常時接続が当たり前のようになっています。その環境の中ではいつもつながっている、あるいはいつもお仕事ができる環境というのができ上がってきてしまうと、オフの取り方がわからない中で、あるいはオフのとり方を勉強してこなかった方々は、オンばかりに集中してしまうということになります。

私は「ワークライフバランス」という言葉があまり好きではありません。「ワーク」が先に来ていて、残り時間でバランスをとろうという発想につながりやすい。そうなると、結局は睡眠時間を削って何とか帳尻を合わせる、という悪循環になりがちです。

代わりに私が使用しているのが「勤務間インターバル」という言葉です。仕事が終わってから翌日の仕事開始まで、連続11時間の休息を確保しようというものでして、EUでは1993年から法制化されています。

仮に、残業で24時まで仕事をしたとすると、翌日は11時以降でないと仕事がスタートできないということですね。

オフがロックされると、その11時間の中で「寝る時間は何時間、家族との時間は何時間、食事は……」と、自分なりのオフの時間割が組めるようになります。そうなると、翌日またしっかりパフォーマンスを発揮できる。大切なのは、オフをしっかり確保することで、オンの時間をいかに最短でこなせるか——そこに意識を向けることだと思います。

休むことは決してネガティブではない

片野:人間は動物と違い「疲労感のマスキング」ができてしまいます。疲労感とは、活動能力が下がっているときに体が発するサインのことです。「これ以上無理をすると危険ですよ」という体からの警告とも言えます。本来はこのサインに素直に従うことが理想なのですが、人間は前頭葉が発達しているがゆえに、使命感や責任感によってその疲労感を覆い隠すことができてしまう。そのため、自分が限界に近づいていることに気づかないまま、活動を続けてしまうのです。

休まずに生きていくことは、誰にもできません。

そして、休むことは怠けでもさぼりでもありません。

「怠けている」「さぼっている」そんな言葉は、つい自分を責める方向に働いてしまいます。でも、そう感じてしまうのは、相手への期待値や自分自身の「こうありたい」という気持ちに、まだ届いていないと感じているからにすぎません。であれば、解決策はシンプルです。疲労をゼロに近づけることです。

しっかり休んで疲労が取れた状態になれば、育児も、仕事も、家事も、自然と質が上がります。活力をもって毎日をこなせるようになる。それが豊かな生活につながると、私は信じています。だから、休むことにネガティブにならないでください。いい仕事も、いい育児も、いい家事も、上手に休んでこそ実現できるものです。より良いパフォーマンスのために、いかに上手に休養を取るか——ぜひそう考えていただけたらと思います。

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