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腸活は「性格」すら変えてしまう?腸を制する者は育児も制する理由とは
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国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 医薬基盤研究所 副所長/薬学博士
「かけっこが遅いのは遺伝?」「消極的な性格を変えてあげたい……」 子どもの成長を見守る中で、親御さんの悩みは尽きないものです。しかし、その体質や性格のカギを握っているのが、実はお腹の中の「腸内細菌」だとしたら? 今回は、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の國澤純先生に、最新の研究でわかってきた「腸内環境と子どもの能力」の驚きの関係や、今日から家庭で実践できる「腸活」の秘訣について、3つの視点からお話を伺いました。
「腸」なく生物は存在できない
――國澤先生は「家族単位」での腸内環境を研究されているそうですね。改めて、私たちの身体の中で腸はどのような役割を担っているのでしょうか?
國澤: 生物の中には、脳がなくても生きているものはいますが、腸がなくて生きている生物はいません。それくらい、腸は生物にとって最も基本的で重要な臓器です。腸の役割は、食べたものを消化吸収して私たちの栄養にすることですが、もう一つ大事な役割があります。それは、お腹の中にいる「腸内細菌」にエサをあげて育てることです。
最近の研究では、この腸内細菌が私たちの心身の健康に、非常に大きな影響を与えていることがわかってきました。例えば、マラソンの成績が良い選手の腸内細菌をネズミに移植するとそのネズミもよく走るようになったり、活発なネズミの菌を移植すると臆病なネズミの性格が変わったりといった報告もあります。
腸内細菌の影響は、私たちが想像する以上に大きいものです。それを踏まえた上で、子どもの可能性を広げるために知っていただきたい「3つの視点」をお伝えします。

視点①:腸を制する者は育児も制する
國澤: 1つ目のポイントは「腸を制する者は育児も制する」ということです。 親御さんが気にされるような「かけっこが速くなるか」「性格が明るくなるか」といったことにも、実は腸内細菌が大きく関与しています。
例えば、マラソンの成績が良い選手のうんち(腸内細菌)をネズミに移植すると、そのネズミもすごくよく走るようになったという研究結果があります。
また、性格に関する実験もあります。本来同じ遺伝子を持つネズミでも、活発に高いところから飛び降りるネズミと、怖がって降りないネズミがいるのですが、この活発なネズミの腸内細菌を、臆病なネズミに移植すると、なんと臆病だったネズミが怖がらずに飛び降りるようになったのです。
――性格までも変わってしまうのですか?
國澤: そうなんです。かつては「うんちを移植する」なんて言うと嫌な顔をされましたが、今では海外で「微生物移植療法」として正式な医療として認められつつあります。 自分の成長のための栄養を摂ることと同じくらい、良い腸内細菌を育ててあげる食事を考えること。それが結果として、子どもの身体機能や性格を変え、育児の悩みを解決する鍵になるかもしれません。
視点②:多様な菌が子どもの可能性を広げる
國澤: 2つ目は「多様な菌が子どもの可能性を広げる」ということです。 人間社会でもダイバーシティ(多様性)が叫ばれていますが、お腹の中も全く同じです。 例えばサッカーチームで、全員がエースストライカーでも試合には勝てませんよね。シュートを決める人、パスを出す人、守る人がいて初めてチームとして機能します。
腸内細菌も一緒で、「この菌が良いらしい」からといってそればかり増やすのは良くありません。菌同士が助け合う「菌のリレー」が重要なんです。
――「菌のリレー」とはどういうことでしょうか?
國澤: 例えば、今注目されている「酪酸(らくさん)」という物質があります。これは腸を動かすエネルギー源として腸内細菌が作る重要な物質です。しかし、体に良いからといって「酪酸菌」だけがいてもダメなんです。
酪酸が作られる過程には、様々な菌が関与します。

例えば、糖から酢酸や乳酸をつくる「乳酸菌」や「ビフィズス菌」がおらず、このリレーが上手くいかないと、いくら食物繊維を摂っても、途中で糖が使われず溜まってしまい、かえってお腹が張ったり調子が悪くなったりするかもしれません。だからこそ、特定の菌だけでなく、いろんな菌が共存する「多様性」のある腸内環境を作ることが大切なのです。
視点③:腸活はゆるくなが〜く
國澤: 3つ目は「腸活はゆるくなが〜く」です。 「よし、腸活を頑張るぞ!」と意気込んで、毎日ストイックにメニューを考えると、大抵の人は3日も続きません。腸活は一生続くものなので、無理なく続けられることが一番大事です。
――具体的に、家庭で続けやすいおすすめの食事はありますか?
國澤: 私が一番おすすめしているのは、「冷蔵庫の残り物で作るお味噌汁」です。 冷蔵庫を開けて、使いかけの野菜や食材を全部お味噌汁に入れてください。そうすれば、必然的に毎日違う具材を食べることになり、菌のエサのバリエーションが増えます。
それから、「冷めたご飯」もおすすめです。ご飯(デンプン)は冷めると「レジスタントスターチ」という成分に変わり、食物繊維と同じような働きをしてくれます。冷めたご飯にお味噌汁をかけて、さらに納豆を入れれば最強の腸活ご飯になりますよ。
――それなら忙しい日でも実践できそうですね。
國澤: そうですね。納豆が苦手ならお味噌汁に入れたり、キムチを足したりしてもいいですし、現代人に不足しがちなオメガ3脂肪酸を補うために「亜麻仁(あまに)」を入れるのもおすすめです。 大事なのは「頑張りすぎない」こと。ジャンキーなものを食べた日があっても、次の日にリカバリーすれば大丈夫です。「これを食べたらお腹の調子が良かったな」という自分の体感をメモしながら、ゆるく、長く続けていってください。



























