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忙しいときはスマホに頼ってもいい。子どもとの約束における注意点とは
現役保育士のてぃ先生、1児の母であるpecoさんの「令和時代の子育ての子育て」をテーマとした対談企画第2弾。司会には自身も2児の母である、タレントの鉢嶺杏奈さんをお迎えしました。前編は、子どものモチベーションについて。
忙しいときはスマホに頼ってもいい
鉢嶺:最初の質問です。息子さんにゲームや動画をやめさせられず、ついつい放置してしまうことはありますか?
peco:私はありません。
てぃ先生:ないって言い切れるのはすごいですね。
peco:もちろんまったく見せていないわけではないですよ。でも、終わりは絶対に決めています。息子がよく見ている動画は一話が短いので、「あと一話だよ」と言って、終わってもらうことが多いです。だから見せてはいますが、放置まではしてないかな。
鉢嶺:私は朝の準備が大変なので、子どもの機嫌を取るために動画に頼らざるを得ないことは多いですね。家事をしたいときとかも、どうしても見せてしまいます。
てぃ先生:なるほど。僕は、過度じゃなければ別に見せてもいいと思います。親が忙しいときとか、どうしても静かにしていてほしいとき、スマホや動画に頼っちゃいますよね。僕たちが子どものときだって、親世代はテレビに頼っていたと思いますよ。ちなみに、テレビがなかった時代は何に頼っていたと思いますか?
鉢嶺:おじいちゃんおばあちゃんとか、近所のおばさんなんですかね。
てぃ先生:そうそう。結論、人なんですよ。でも、今は人に頼ることは難しいじゃないですか。だから、スマホやタブレットに頼るのをやめなさいということは、何かに頼ることをやめなさいと言ってることと同じなんです。
peco:本当にそうだと思います。でも、私は家事をするために見せているわけではなくて、息子が動画を見ている間、キッチンの床に座ってスマホ見てたりしますよ(笑)。
てぃ先生:それも全然いいと思います! 親御さんがエネルギーを貯めて、自分の余裕を確保することってすごく大事ですもんね。
鉢嶺:それを聞いて救われたような気持ちです! でも、pecoさんは、どうやって息子さんに動画を切り上げてもらうんですか?
peco:だらだらと見続けるのが習慣になってしまうと、大きくなったときに大変そうだなと思って、赤ちゃんのときから気を付けるようにしていたんです。具体的な方法としては、子どもが「もっと見たい」となったときに「もうテレビは寝る時間だ。テレビおやすみ」と言って、しれっと消していました。
出かけないといけないときに見たいと言われたら、「テレビ起きてるか聞いてみよう」と言ってリモコンを操作するふりをして、「あ、まだ寝てるから見れないね」と言ったりして。テレビが生きてるような感じで演じていました。それを続けているうちに、「今は終わり」と言ったらちゃんと辞められるようになりました。
てぃ先生:さっき「一話見たら終わり」という言い方をされていましたが、それがすごくいいです。親御さんは「あと5分で終わり」というように、時間で区切る言い方をしがちですよね。それって事前告知というか、子どもが切り替えやすいように優しさで言ってると思うんですが、実は子どもの精神的な部分を削っている可能性があって。
それよりも、「あと一話」と言ったように、時間以外の区切りを決めるほうが子どもの満足度は高いです。子どもだって「ここまで見たい」という区切りはあるだろうし、それを尊重することで、親は自分の気持ちを汲んでくれるという嬉しさにもつながります。pecoさんはそれを自然と実践できているのが素敵だと思いました。
あと気を付けたいのは、もし「あと5分」と伝えたんだとしたら、それは何があってもぶらさないこと。「うちの子、約束を守らないんです」という親御さんに限って、けっこう親自身が約束を守れていないことがあるんです。
たとえば親が「あと5分ね」って言ったから子どもはそれを守ろうとしていたのに、親が「料理がまだできてないから、あと10分だけ」と言ったりしていませんか? これは親が約束をやぶっていますよね。そういうことを積み重ねていくと、子どもは「約束って別に守らなくてもいいし、特例が存在する」と覚えてしまいます。
だから、あと5分と決めたのなら、それは守って一回終わりにする。その後に、どうしてもあと10分料理をしたいんだったら、「ママあとちょっとだけお料理したいから、もう10分だけ見ようか」と、再度約束をしたほうがいいです。最初の約束は一回終わってますから。
ご褒美でモチベーションは高まる?
鉢嶺:次の質問です。勉強やお手伝いをしてもらうときに、ご褒美やおこづかいを与え過ぎてしまうことはありますか?
peco:私はほとんどないですね。お手伝いをお願いすることもありますが、やるかやらないかは全部子ども自身に決めてもらっています。だから、たまに断られるんですが、そのときは私も諦めてそれ以上は言わないようにしています。それを続けていると、断られることが減ってきたような気がしています。
鉢嶺:すごい……。私はよくお菓子や物で釣ってしまいます。ただ、だんだんと賢くなってきて、たとえば今まではグミ1個でよかったのに、「1個じゃヤダ、2個」とか言うようになってきたんです。だから、私もグミを小さく切って2個にしてあげたりと工夫はしているのですが、日に日に数が増えていってます。
てぃ先生:物で釣ってしまうのは仕方ないことも多いと思うんですが、いま鉢嶺さんが言ったように、エスカレートしてしまいがちです。
鉢嶺:そうですよね……。今からやめる方法はあるんですか?
てぃ先生:グラデーションが大事なので、急に「今日からあげません」というよりも、毎回あげていたのを10回中9回にして、8回にして、とだんだんと減らしていくとよいかもしれません。一方で、サプライズのご褒美は子どものモチベーションを高める効果があると分かっているので、ご家庭にあった方法でご褒美をうまく取り入れられるといいですね。
「鬼がくるよ」のリスクとは
鉢嶺:次の質問です。子どもに嘘をついたことがありますか?
peco:はい。小さな嘘なら毎日ついてます(笑)。たとえば最近、息子がクラブ活動で家に帰ってくるのが遅い日があって、私は息子が帰ってくる前にお風呂に入りたかったんです。だから息子に「先に入っていい?」って聞いたら「いやだ、ママと一緒に入りたい」と言うんです。
きっと鉢嶺さんだったら「じゃあ待ってるよ」と言うと思うんですが、私はどうしても先に入りたかった。だから、とっさに嘘をついて「今日ママ、シャンプーの仕事でお風呂で動画取らないとあかん。だから先に入るで」とか言って。
てぃ先生:嘘のクオリティが高い(笑)。
peco:嘘はばれたら嘘になるけど、ばれなければ誰も傷つかないと思っているので、私は巧みに嘘ついてます(笑)。
鉢嶺:私はきっとよくないとは思いつつ、鬼を使っちゃってます。ただ気を付けてるのは、鬼側にはいかないように、「鬼もうすぐ来るって、怖いよー」と演技をしながらやっています。
てぃ先生:鬼か……。やっぱりよくはないと思っています。
鉢嶺:そうですよね(笑)。
peco:でもみんな使ってますよね。
てぃ先生:僕はあまり「これはやめたほうがいい」とは言わないんですが、子どもを脅して動かすのは、やめたほうがいいと思います。脳科学的にも、脅すことは子どもの脳を萎縮させる可能性があると言われていて、悪影響がかなり大きいです。
もうひとつ怖いのが、「ダブルバインド」といって、子どもを二重に拘束すること。どういうことかというと、「鬼くるよ」と言われると怖いから言うことを聞くけれど、実際には鬼は来ない。それって子どもにとってはわけのわからない状態なんです。そのときの子どもの脳を見てみると、統合失調症患者の脳の状態と近いと分かっていて。つまり精神的な病に近いくらいの負担を子どもに押し付けちゃってることになっているんですよね。
だから理想論になってしまいますが、子どもを脅して動かすのはリスクしかないので、本当におすすめしないです。その瞬間だけラクをするための方法でしかないので。
鉢嶺:てぃ先生がそこまで言うのは珍しいですよね……。ご褒美や脅しではなく、子どもに動いてもらう我が家なりの方法を見つけたいと思います。