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夫は妻をとことん観察すべき。18年の子育て経験から見る「男性育児」の変化とは?
17歳から6歳までの4人の子どものパパである俳優・タレントの杉浦太陽さんに、パパの子育てについてインタビュー。妻の辻希美さん含め仲の良い家族の様子がSNSでも人気だが、パパとしての役割をどのように考えているのだろうか。聞き手は、2児の母でもあるタレントの鉢嶺杏奈さん。
杉浦太陽/1981年生まれ、大阪府出身。2001年『ウルトラマンコスモス』で主演を務める。以降俳優、タレントとしても幅広く活動、映画『ウォーターボーイズ』、『ウルトラマンサーガ』ほか、テレビ『浪花の華~緒方洪庵事件帳~』、『流星の絆』、『G1 DREAM』、『最後の晩ごはん』ほか、NHK連続テレビ小説『てるてる家族』、『ゲゲゲの女房』、大河ドラマ『八重の桜』に出演。プライベートでは、2007年にタレント・歌手の辻希美さんと結婚。4児のパパ。「ベスト・ファーザー イエローリボン賞」「イクメンオブザイヤー」「いい夫婦パートナーオブザイヤー」など受賞。今年5人目が誕生の予定。
鉢嶺杏奈/1989年 東京都出身。映画やドラマ、CMで女優として活躍する一方、TBS系バラエティー「日立世界ふしぎ発見」のミステリーハンターを務めるなど、タレントとしても活躍。2児の母。
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妻をとことん観察すべき
鉢嶺:ママたちは、パパの「手伝うよ」の発言についイラっとしてしまうとよく言いますが、太陽さんも「手伝うよ」と言うことはありますか?
杉浦:今は言わないです。でも、長女が生まれた約18年前は、亭主関白というわけではないですが、そういう昭和の価値観で育ってきたので自分が家事育児の主体だとは思っていなかったかもしれません。結婚当初を思い返すと「お風呂洗っといたで」とか言って、妻がムッとした表情をしていることもよくありました(笑)。多分その言い方がイヤだったのもあるし、そもそもやってほしいことはお風呂掃除じゃなかったんだと思います。
「せっかくやったのになんやねん」と思うパパ側の気持ちもわかるけれど、妻が何を求めているのかを学ばないといけないですよね。妻の行動をよく観察していれば、今なにを手伝ってほしいのか分かるようになります。特に子どもが小さいうちは、この時間にお風呂に入れたいとか、ご飯を食べ始めたいとか、ママのルーティーンがあるはず。それをパパが理解してはじめて動けるようになるので、まずはママをよく観察することから始めたらいいと思います。
鉢嶺:素晴らしいです。杉浦家では家事育児の役割分担はあるんですか?
杉浦:担当を決めてしまうと、相手がやってないときに腹立ってしまうので、役割分担はしていないです。ほとんどのことは妻と一緒にやっていますね。一人より二人のほうが早いので。妻が立って何かをしていたら自分も一緒に動く、ということは自分の中でのルールです。だから常に妻がどこで何をしているかを探しています(笑)。
やっても褒めてくれない、は妻も同じ
鉢嶺:先ほどのお話では、太陽さんも最初から今みたいに出来ていたわけではないんですね。
杉浦:そうですね。今は笑い話なのですが、「やってあげた感」「褒めてほしいオーラ」が昔はすごかったとよく妻に言われます(笑)。たしかに「やっても誰も褒めてくれないな」と当時は思っていて。でも「それは妻も同じか」とふと気付いたんです。だったら一緒にやったほうが早いし、楽しいことも辛いことも共有したいと思うようになりました。
鉢嶺:素敵……。でも、周りの子育て中の家庭を見ていても、太陽さんみたいなパパはすごく少なくて、ほぼワンオペで頑張っているママが多いです。我が家も夫は仕事が忙しくて帰ってくるのは深夜なので、子どものことで相談したくてもなかなかタイミングが合わないし、ママ友のほうが話しやすかったり。
それが続くと夫と話す時間ができたとしても、一から説明が必要だし、段々とそれが億劫になってきてしまったり。会える時間が少ないと、その貴重な時間でケンカしたくないとも思ったり。諦めというか、言いたいことを飲み込んでしまうママも多いと思うんです。
杉浦:たしかに仕事が忙しくてなかなか話せないと大変ですよね。でも、僕は18年間父親をやってきて、僕自身かなり価値観が変わったし、社会の「子育て」に対する価値観も少しずつ変わってきていると実感しているんです。
たとえば保育園の送り迎えも、長女が小さかった頃はほとんどがママたちでした。でも、だんだんパパの割合が増えてきて、今では半分くらいがパパですよね。だから、子育ては夫婦で一緒にやる時代に変化してきているように感じます。ただ、当事者のママからすると、今すぐ夫に変わってほしいんだとは思うのですが……。
帰りたい家は自分自身で作らなければいけない
gettyimages/Tony Studio
鉢嶺:具体的に、どうすればパパの行動やマインドを変えられるのか気になっているママ
は多いと思います。細かい話ですが、たとえば子どもを寝かしつけるタイミングで夫が帰って来たりすると、もう少し子どものことを考えてほしいなと思っちゃいます。
杉浦:もしかしたら、パパ側が分かっているようで分かっていないだけかもしれないですよね。「この時間に寝かしつけるから、静かに帰ってきてね」と連絡してみたらどうですか?案外言ってもらえたら夫側も考えられると思いますよ。
鉢嶺:たしかに言わなきゃ伝わらないことも多いのかもしれませんね。それにしても、太陽さんは基本的に育児が好きなんですね。
杉浦:子どもとの時間って今しかないですからね。新生児の臭くないうんちから、段々と臭うようになってきて「人間になってきたなあ」と感じたり。オムツが外れてトイレで初めてできたときの喜びとか。こんな楽しいイベントは他にないですよね。
でも自分が家事育児もやるようになったのは、子どもがかわいいのはもちろんですが、妻の機嫌が悪いのがイヤだから、という理由が一番大きいです。帰りたくなる家を、自分自身で作っていかないといけない。そのために自分はどうしたらいいのかを、男性は考えるべきだと思います。
鉢嶺:全国のパパに聞いてほしいです!
杉浦:帰りたい家にするには、自分の存在価値を作る必要があります。家族に「パパはいないほうがラク」とか「いてもいなくても同じ」と思われるようなら、誰も相手にしてくれなくなりますから。自分が帰ったときにみんなが「パパー!」と寄ってきてくれるほうが嬉しいし、そのためには自分も家庭の戦力だと認識して、自分から行動しないといけないと思いますよ。
パパ、ママではなく名前で呼び合う
鉢嶺:素晴らしい!夫婦で仲良くいられる杉浦家のルールはありますか?
杉浦:ルールはほとんどありませんが、ひとつだけ大事にしているのは、名前で呼び合うことです。僕たち夫婦は結婚前から「たぁくん」「のん」と呼び合っているのですが、それが一時期「ねえ」に変わったときがあって。その頃は妻の気持ちが完全に子どもに向いていて、僕には全く向いてなかったんです。「ねえ」と言うときの妻の表情はきつかったし、家の雰囲気もあまりよくなくて。
そのときに、お互いに名前で呼び合わないと心の距離は近付かないから、イヤでもそこは頑張って名前で呼び合おうと妻に提案したんです。そうしたら家庭の雰囲気は一気によくなったし、やっぱり「たぁくん」と言うときの妻の顔は柔らかいんですよね。些細なことですが、これだけでかなり家庭は平和になると思いますよ。ちなみに「パパ」「ママ」と呼び合うのもやめようと決めています。
鉢嶺:なるほど!名前で呼ぶのは照れくさいかもしれないけれど、今日からできることですね!
杉浦:何事も最初は勇気がいりますが、絶対に必要なことだと思います。あとは、妻を「お母さん」の世界からちょっと引き離して、「ひとりの女性」に戻してあげるような時間も大切だと感じています。エスコートしてデートをしたり、サプライズでプレゼントをしたり。男性が親になるために時間がかかるように、お母さんがひとりの女性に戻るのも時間がかかるかもしれないので。
「お母さん」になった女性は親としては最高でも、パートナーとしての関係をうまく続けていくために「ひとりの女性」に戻してあげるのは旦那の使命かなと。うちは、子どもたちが学校に行ってる間にデートに行ったりとか、子どもが寝たあとでゆっくり話したり、二人だけの時間も大事にしています。
鉢嶺:たしかに子どもが小さいときはアクセサリーもつけられないし、おしゃれをする時間もないし、体形も変わっちゃうし、何もかも変わってしまいます。でも、それを許してくれるのが夫であり、女性として認めてくれるのも夫だとしたら、すごく幸せですね。
杉浦:そうですね。パートナーとして、なあなあの関係になりすぎないことが大事ですよね。
イラっとしてもすぐに言わない
gettyimages/takasuu
鉢嶺:夫婦喧嘩にならないように気を付けていることはありますか?
杉浦:相手に対してイラっとすることがあっても、一回飲み込んで次の日に持ち越すようにしていることでしょうか。
そうすると夫婦喧嘩の9割はなくなると感じています。カチンときたときのテンションで発言してしまうと、大体言い方が強くなってしまうし、そうすると相手も言い返したくなる。
でも、その場で一回飲み込むと、次の日には「別に言わなくてもいいか」と思えることがほとんどです。伝えたほうがいいこともあるけれど、怒りの沸点が下がってるから冷静に伝えられる。夫婦喧嘩をしたい人なんていないじゃないですか。
でも喧嘩を売られたらイラっとして言い返してしまうから、伝え方をお互い気を付けることですね。それだけで劇的に変わると思いますよ。
イヤイヤ期・反抗期はすぎるのを待つしかない
鉢嶺:子育て歴18年の太陽さんは、子どものイヤイヤ期や反抗期も経験されていると思いますが、そのような時期の子どもとの向き合い方について教えてください。
杉浦さん:子どものイヤイヤ期、反抗期は当たり前ですが時期がきたら終わるんです。だから、「この子の一生に一回のイヤイヤ期(反抗期)なんだ」と思って、過ぎるのを待つしかないかな。うちの長女と長男の反抗期は小6~中1あたりで、親としても初めてのことだからびっくりしたし怒って揉めたりもしたけど、本当に時期がきたらスッと落ち着いたんですよね。
後に、長男に「なんであんなにイライラしてたの?」と聞いてみたんですが、「わからん」と言ってました(笑)。長女はその気持ちが分かるから、長男の反抗期には間に入ってくれたりもしましたね。だから、成長するうえで大事な時期だし、あんなに怒らなかったらよかったなと反省もしています。
子どもには「できない」と思わせないこと
鉢嶺:杉浦家の教育方針は何かありますか?
杉浦:夫婦で大事にしていることは、子どもの短所を責めずに、長所を伸ばすこと。自信を育ててほしいと思って接していますね。たとえば算数と国語のテストがそれぞれ80点と40点だったとしたら、40点の国語にはそんなに触れずに、80点の算数を褒めまくる。そうすると次のテストでは、80点だった算数が90点になったり、40点だった国語もなぜか50点になったりするんですよね。だからとにかく「できない」と思わせないこと。
長女もそんなに自信があるタイプではなかったのですが、なんとなくやってみたスイーツ作りがとても上手で。「めっちゃうまいやん!すごいやん!」と、とにかく褒めました。そのうちに本人も自信を持ち始めて、それがクオリティにつながって、いつしか長女の武器になっていて。その様子を見て、人が育つのはこういうことなんだなと感じました。
色々な選択肢をまずは与えて、さまざまな経験をさせてあげること。イヤイヤやっても伸びないので、苦手だったら辞めたらいい。そうやって経験を広げるなかで、パチンとはまることがあったりすると思います。習い事もいろいろやらせてみるなかで、子どもが好きになれることを、親もいっしょに楽しんで探せたらいいのかなと感じています。