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”受験”ではなく”子ども”に向き合うべき。学校によって子どもは変わる?
現役保育士のてぃ先生、1児の母であるpecoさんが「令和時代の子育ての子育て」をテーマに行う対談企画第2弾。前回に続き、司会には自身も2児の母である、タレントの鉢嶺杏奈さんをお迎えしました。後編のトークテーマは、過熱する小学校受験について。
前編
中編
なぜ「私立受験」を選ぶの?
鉢嶺:小学校受験者は毎年増えている一方で、受験が負担になった子どもがチック症(※)になったり、精神的に不安定になったりすることも少なくないそうです。私も子どもには小学校受験をさせたいと思っていますが、てぃ先生はこのように受験が過熱していることについてどうお考えですか?
※まばたきや咳払い、首振りや奇声が本人の意思に関係なく繰り返し出てしまう疾患
てぃ先生:一言で言うのならば、日本教育の敗北なんだと思います。公立ではきちんと育たない、私立にしか期待できないと考える人が増えてきているということじゃないですか。
鉢嶺:たしかに……。pecoさんは息子さんが6歳ですが、受験は考えていますか?
peco:息子は3歳からインターナショナルスクールに通っているので、2歳の頃に一応面接だけはあったんですが、受験というほどのものではなかったですね。そのために何か準備したり、塾に通ったりもしてないですし、受験に関して私はまったく無知です。
ただ、周りの友達を見ていると、小学校受験する子はやっぱり多いですよね。なんで受験をするのか聞いてみると、地域によって違うようですが、東京都内では中学受験の難易度がものすごく高いらしいです。
中学受験のために小学校生活を勉強に捧げるよりは、小学校6年間を楽しく過ごすために小学校受験をする、という話はよく聞きます。でも、やっぱり受験となると子どもも親も本当に大変ですよね……。私は見た目だけでもう不合格だと思います(笑)。
てぃ先生:いやいや(笑)。でも、イメージ的にはみんな黒髪で黒のスーツを着てやっていますよね。ちなみにインターナショナルスクールを選択したのはどうしてですか?
peco:目の色や髪の毛の色、話す言語が違う友達がいることが日常で、みんな違うことが当たり前、という環境で育てたかったからです。「前にならえ」みたいなことよりも、人と違っても「それいいじゃん!」と言ってもらえる環境が好きだなと。もちろん英語を喋れるようになってほしいという気持ちもありましたが、それは二の次でした。
子どもが気付かない選択肢を提示するのが親の役割
てぃ先生:鉢嶺さんはなぜ小学校受験を考えているんですか?
鉢嶺:私は息子を幼稚園に入れるときにいくつかの園を見学に行ったんですが、園によってこんなにも考え方や方針が違うんだということに、けっこう驚いたんです。ということは、小学校もきっと全然違うだろうし、大きくなるにつれて周りの環境から受ける影響も上がってくるだろうなと思って。
そう考えると、近所の公立小学校に行かせたい学校がなかったんです。だから、小学校受験をさせるしかないのかなと思ったんですよね。ただ、受験勉強ばかりを根詰めてやるというよりは、ひとつのイベントのように捉えていて。それが子どもの経験となり、家族の絆を深めることにもつながったらいいな、という気持ちです。
てぃ先生:なるほど。受験の先にはどんな将来を描いてるんですか?
鉢嶺:小・中・高・大学とそのままエスカレーター式に上がっていけたらベストだと思っていますが、その途中で本人がやめたいとか、他にやりたいことができたら、好きにしてもらって構わないと思います。ただ、子どもの選択肢を広げるために親ができることとして、スタートラインを一段上に上げておいてあげたいなと思っているんです。
子どもって周りの友達の影響を受けやすいし、特にうちの息子は純粋で子どもらしい性格なので、環境がすごく大事だと思っていて。だから、あらかじめ不安要素を消すというわけではないですが、子どもが生きていく環境だけは、親が提示できることなのかなと。
てぃ先生:すごくいいですね。受験や習い事など何でもそうなんですが、親御さんができることって、子どもが思い付かない選択肢を提示することだと思うんです。子どもには私立やインターナショナルスクールの発想がそもそもないですから。
だから、親が「私立に行かねばならない」という盲信で受験に挑むのはよくないけれど、子どもが気付かない選択肢を提示しているのであれば、素敵なことだと思います。
学校によって子どもは変わる?
てぃ先生:実は僕、3年くらい学童で働いていたこともあるんです。民間の学童だったので、私立も公立もいろいろな学校に通う子が来る場所で。そこで感じたのは、どちらがいいということではないのですが、学校によって子どもたちのタイプが本当に全然違うということ。一年生の夏くらいにはもう違いが出てくるんです。
だから、金銭的な余裕がある・ないに関わらず、「近いからこの学校でいいや」と決めるのではなくて、さまざまな選択肢をしっかりと比較したうえで選択をしてほしいです。地域をまたいで学区外の小学校に行くいわゆる「越境」の話を初めて聞いたときは「そこまでするか?」と思ったんですが、実際一回でも見学に行ってみると雰囲気の違いはすぐに分かるし、越境したくなる気持ちもわかるようになりました。
peco:そうなんですね! 私はけっこうじっくり考えるのが苦手で、「これでいいじゃん」となっちゃうことが多いので、今のお話を聞いて、ちゃんと自分の目で見てしっかりと考えないといけないなと感じました。
それに、息子が大きくなったときに、もしかしたら留学したいとか言うこともあるかもしれないし、息子自身がどんな選択をするかはわからない。そのときは息子がやりたいことを応援できる親でありたいし、どんな選択をするにせよ息子を思ってサポートする気持ちは絶対に変わらないから、頑張りすぎないで息子に寄り添っていけたらいいなと思います。
受験ではなく、子どもに向き合うこと
鉢嶺:親は、小学校受験に関してどこまで本気で向き合うのがよいのでしょうか?
てぃ先生:難しい話ですよね。親御さんがどうしたいかだけで考えてしまうと、子どもの意思が雑に扱われちゃう。一方で、子どもが小さいうちは分からないから、親の意思で決めることが子どもにとっての幸せだと、あえて子どもの意志は無視をして進める家庭もある。どちらの向き合い方が正解かなんて判断できないですよね。絶対受かるように完璧に勉強するのも、記念受験を楽しむのも、どちらもありだと思います。
ただ、やっぱりお受験って親子二人三脚であるということだけは忘れないでほしいと思います。親が子どもに無理やりやらせる受験となると、途端にどちらもストレスできつくなってしまいます。「どうやって子どもにやらせるか」ではなくて、「どうやって親子が二人三脚で進んでいけるか」ということを根本的に大事しないと苦しすぎるので。
鉢嶺:それで心の不調をきたすようなお母さんも子どもも、実際いらっしゃいますよね。
てぃ先生:そう。だから、向き合い方の答えとしては、受験に向き合うのではなくて、子どもに向き合うということ。どんなご家庭でも、それさえ忘れなければ、多分大きなズレは生じないんじゃないかな。
鉢嶺:お父さん、お母さん、子どもが、みんなが同じぐらいの温度感で進んでいければいいですよね。
てぃ先生:そうですね。そもそも教育方針は違っても、みんな子どもの将来が安定するようにと、子どもの幸せを願ってやっていることですから。優しさの形が人それぞれ違うだけなんだと思いますよ。