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【専門家監修】「スマホを使うと学力が低下する」って本当?データで見るスマホの使用時間と学力の関係
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東北大学加齢医学研究所助教
東北大学加齢医学研究所助教
東北大学加齢医学研究所助教 1989年千葉県生まれ。2019年東北大学大学院医学系研究科修了。博士(医学)。認知機能、対人関係能力、精神衛生を向上させる脳科学的な教育法の開発を目指した研究を行なっている。著書に『スマホはどこまで脳を壊すか』(朝日新書)がある。
子育て中の保護者は「いつから子どもにスマホを持たせよう?」と悩む人もいるかもしれません。同時に気になるのが、スマホを持つことで学力が低下するのではないか、ということではないでしょうか。東北大学加齢医学研究所助教の榊 浩平先生監修のもと、スマホと学力の関係を見ていきます。
スマホを持つと学力が低下する? 保護者の不安の声
総務省の『デジタル時代の子育てを一緒に考えてみよう!』によると、6歳以下の低年齢の子どもを育てる保護者は「身体・運動機能の発達」や「ネット依存」の他、「学習・成績への影響」に関しても不安に感じているようです。
子育て中の保護者からも、このような不安の声が寄せられています。
娘は普段から動画配信サイトを見ることが多いので、もし自分専用のスマホを持たせたら拍車がかかりそうです。学力に対する不安だけでなく、生活態度が悪くなったり余計なトラブルに巻き込まれたりしないか心配です。
スマホを持つことで学力が低下しないか心配です。一方で、スマホを持っている子が一概に学力が低いわけでもないので、あまり関係ないのかなとも思います。
子どもがスマホを持つことと学力には関係があるのでしょうか。
スマホと学力の関係とは
「スマホの使用時間」と「学力テストの結果」の相関関係を調べるために、仙台市の小中学生約7万人を対象とした調査を行った東北大学加齢医学研究所によると、最も成績がよかったのは、スマホ等の使用が「1時間未満」と答えた子どもたちでした。
スマホ等の使用が「1時間未満」の子どもの学力が高い理由としては、自分の意志でスマホの使用時間を抑えている子どもたちも一定数含まれていると考えられるそうです。
しかし、グラフを見ると、スマホの使用時間が1時間より長くなるほど、学力が低くなっています。この調査により、1時間以上スマホを使用することで、学力に悪い影響を与えていることがうかがえます。その後の追跡調査によって、スマホの使用時間が長くなるほど学力が低下することまで明らかになったそうです。
また、文部科学省による『令和4年度 全国学力・学習状況調査』でも、一日当たりのSNSや動画視聴などを行う時間が長ければ長いほど、各教科の平均正答率が低いという傾向がみられました。
子どもを取り巻くインターネット環境とスマホ所持率
スマホの使用時間が長い子どもたちほど学力が低いことがわかりましたが、何歳頃からスマホを持つ子どもが多いのでしょうか。
総務省の『デジタル時代の子育てを一緒に考えてみよう!』によると、何歳からスマホを持たせるのが適切かという答えはなく、その子に「本当に必要なのか」、「何のために持たせるのか」などをじっくりと考慮することが大切だとした上で、依存や発達への影響が気になるのであれば、未就学児への専用スマホはお勧めできないとしています。
子どもたちを取り巻く、インターネット環境とスマホ所持率について内閣府の『令和4年度 ⻘少年のインターネット利⽤環境実態調査調査結果』を元に詳しく見ていきましょう。
インターネットの利用率
まずは、子どもたちのインターネット利用率から見てみましょう。
子どもの年齢が上がるにつれ、インターネットの利用率が上がっていることがわかる他、年々利用率が微増しています。令和4年度が3年度よりも減少しているのは、新型コロナウイルスによる規制が徐々に緩和され、インターネット以外の娯楽に触れる機会が増えたことも関係しているかもしれません。
年齢にもよりますが、インターネットの利用が生活の一部となっている子どもたちが多いようです。
スマホの所持率
続いて、子どもたちはどれくらいスマホを持っているのか年齢別に見てみましょう。
10歳を境に子ども専用スマホと親と共用している割合が逆転し、専用スマホを持つ子どもの割合が6割を超えています。
10歳頃になると、小学校の勉強が難しくなってくる時期でもあるため、子どもが専用スマホを持つことで学力の低下を気にする保護者もいるのかもしれません。
インターネット利用のルールの有無
インターネット利⽤に関して、各家庭ではルールや決まりを定めているのでしょうか。まずは、9歳までの子どもの割合から見てみましょう。
9歳までの子どもの保護者のうち、「ルールを決めている」との回答は81.1%。子どもの年齢が上がるとともに割合は増加傾向にあります。
10歳以上の子どもたちについてはどうなっているのでしょうか。
中学生、高校生と年齢が上がるにつれ、「ルールを決めていない」との回答が増え、子どもと保護者の「ルールの有無に関する認識のギャップ」も拡⼤していることがわかります。
中学生頃から、徐々にスマホを始めとしたインターネット使用に関する保護者の管理が難しくなってくるため、それまでに上手な付き合い方を身につけておけるといいですよね。
スマホとの上手に付き合う5つのポイント
大人にとってスマホのある生活が当たり前となっている現代社会で、子どもがスマホを持つことをいつまでも避け続けることは難しいかもしれません。
学力が低下しないよう、スマホと上手に付き合うためにはどのような使い方をするとよいのでしょうか。
1.親子でスマホの使用時間を決める
子どもとスマホ使用に関するルールを決める時は、一方的に決まり事を押し付けるのではなく、子どもと相談しながら本人が納得したうえで決められるとよいでしょう。
子どもが、なぜスマホの使用に制限が必要なのかを理解できると、スマホを使いすぎてしまうことを防げるかもしれません。
学力の低下が気になるようであれば、学習に関するルールも一緒に決めておくことも大切です。
2.スマホの機能を使って時間管理をする
際限なくスマホを使い続けてしまうことを防ぐために、タイマーやアラーム機能を使ってもよいでしょう。終了時刻を設定しておく他、5分前、10分前と終了前にも通知をすることで見通しを持つことができ、時間管理のスキルを向上させることにもつながります。
また、スマホに搭載されているスクリーンタイム機能も活用できそうです。スクリーンタイム機能では、個別のアプリの使用時間を制限できたり、それぞれのアプリやWebサイトの使用状況も確認できたりします。
こうした機能を活用し、子どもと相談しながらルールを一緒に決められるとよいでしょう。
3.スマホの使用場所を決める
たとえば、リビングなど保護者の目が行き届く場所ではスマホを使ってもよいけれど、子ども部屋でのスマホ使用を禁止するなど、特定の場所を指定することもよいでしょう。
子どもの自室にスマホを持ち込まないことで、子どもの学習時間と睡眠時間を確保できるかもしれません。
4.スマホ以外の物事へ興味を誘う
子どもがスマホを使わない遊びや学びの楽しさを知ることで、スマホに接する時間が減ります。
また「自分の興味のあることをもっと知りたいからスマホで調べる」という使い方をすることで、結果として学力向上につながることもあるかもしれません。
5.保護者のスマホ使用を見直す
子どもは保護者のことをよく見ています。保護者が日常的に使っているスマホを自分も同じように使ってみたいと思うのは当然ともいえるでしょう。
子どもにスマホの使用を制限するのであれば、保護者もスマホの使い方を意識することが必要です。たとえば、子どもの目の前での使用は極力控え、SNSやゲーム、動画視聴などは子どもが眠った後や、不在時に行うとよさそうです。
【体験談】スマホを持つことで学力に影響はある?
子どもにスマホを持たせた結果、学力に影響はあったか、保護者に意見を募りました。
成績が下がったらスマホ使用に制限をかけるルールにしているので、学力は維持しています。
子ども専用のスマホを持たせてから明らかに学力が下がり、親としてはもどかしいです。反抗期なので話し合いが難しく、もっと小さな頃から話し合いのできる関係を築いておけばよかったと後悔しています。
今は子ども自身でスマホの使い方を改めてくれることを祈るばかりです。
スマホと学力、うちは関係なかったと思います。むしろスマホで検索して好奇心が刺激されたり満たされたりするメリットもあると感じます。
受験生の息子はスマホ動画で数学の解き方や効率的な勉強方法の解説動画を見ていることもあります。
スマホを持たせてから睡眠時間が減り、学力も下降気味です。
小学生のときは時間制限をかけ、自分の部屋に持っていくこともNGにもしていました。
しかし、自分で管理できるようになった方がいいと考えて制限を解いたら、しばらくはスマホに時間を吸い取られていましたが、今は自分で時間設定などしているようです。
子どもの性格にもよりますがあまり厳しく制限すると、逆効果のような気がします。大人でもスマホとの付き合い方は難しいので、子どものうちから自分で付き合い方を考えさせる方がいいかもしれません。
学力低下が心配ならスマホ使用は「1時間未満」に
ここまで、データを元にスマホ使用と学力の関係を見てきましたが、この二つには関係があるといえそうです。子どもがスマホを使用する場合は事前に家族でルールを決め、1時間未満に抑えた方がよいでしょう。
また、未就学児の頃から、スマホやデジタル機器を使わないコミュニケーションを心がける他、いざスマホを持った時に自ら1時間未満に抑えられるよう、セルフコントロールできる力を育めるとよいですね。
監修
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榊 浩平
東北大学加齢医学研究所助教
1989年千葉県生まれ。2019年東北大学大学院医学系研究科修了。博士(医学)。認知機能、対人関係能力、精神衛生を向上させる脳科学的な教育法の開発を目指した研究を行なっている。著書に『スマホはどこまで脳を壊すか』(朝日新書)がある。
宿題を適当に終わらせてすぐにスマホで遊んだりするのかな? と、スマホを持たせるのはかなり不安です。