デジタルネイティブの子どもたちに一番必要な能力【てぃ先生×ひろゆき②】

デジタルネイティブの子どもたちに一番必要な能力【てぃ先生×ひろゆき②】

現役保育士のてぃ先生と「2ちゃんねる」開設者で実業家のひろゆきさんによる「子どもが幸せになるためには」をテーマにした対談。全3回中2回目は、子どもとネットの付き合い方、セルフブランディングの必要について伺いました。

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(左)てぃ先生:現役保育士。SNS総フォロワー数は180万人を超え、保育士としては日本一の数を誇る。育児アドバイザー、顧問保育士、講演活動、メディア出演なども多数。著書は『子どもに伝わるスゴ技大全 カリスマ保育士てぃ先生の子育てで困ったら、これやってみ!』(ダイヤモンド社)など。(右)ひろゆき:1976年生まれ。パリ在住の実業家。「2ちゃんねる」開設者。主な著書に『論破力』(朝日新書)、『1%の努力』(ダイヤモンド社)、『自分は自分、バカはバカ。』(SBクリエイティブ)、『日本人でいるリスク』(マガジンハウス)など。

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逆効果になってない?無理なチャレンジが子どもの自己肯定感を下げる【てぃ先生×ひろゆき①】

子どもにさせたいならまず親が熱中を

――次のテーマは、子どもとネットの付き合い方です。YouTubeやTikTokなどに公開された飲食店での迷惑行為動画がよく問題視されています。これらが事件に発展するケースもありますが、ひろゆきさんはこういったネットの影響をどう考えますか?

ひろゆき:むしろネットの影響で実際に迷惑な行動をする人は減ってる気がしますけどね。ネット初期の方が飲食店でもっと酷いことをする人がいたんです。だけど、叩かれるようになったからやらなくなったんじゃないですか。僕は高校生の頃、電車の網棚に乗っかるのが好きでよくやってたんです。

てぃ先生:「やったことある」はわかるけど「好き」はよくわかんない(笑)。

ひろゆき:でも誰にも迷惑かけてないし、別に何も言われないんですよ。でも今の時代、そんなことしたらスマホで撮られてSNSに上げられて学校に通報される。だから今の方がよっぽど健全だと思いますけどね。

てぃ先生:ネットの影響って話で今日ひろゆきさんに聞きたいことがあって。Appleのスティーブ・ジョブズ、マイクロソフトのビル・ゲイツのような大手IT企業の経営者や幹部たちは、10歳くらいまで自分の子どもにスマホを触らせないという話をよく聞きます。これは何を意味してるんだろうといつも思うのですが、どう思いますか?

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※写真はイメージ(iStock.com/kohei_hara)

ひろゆき:僕はメディアが言ってるだけじゃないかと思ってます。たとえばビル・ゲイツの家にはそこら中に端末がくっついていて、人が通りがかるだけで誰か認識して、その人の好きな曲を流すシステムを入れてるくらいですから。そんな状況で子どもが端末をいじらないわけがない。スティーブ・ジョブズが食事の時にテレビをつけない、スマホを触らせないと言ってるのは聞いたことがある。それが拡大解釈されて広がったんじゃないかって。

むしろ、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツみたいに若い頃に成功してる人たちは、みんな早い段階でパソコンに触ってたんですよ。他の人たちがやってないから、それだけ有利なポジションに行けた。若い頃から新しい技術に触れてる人の方が伸びが早いから、その機会を自ら失うのはどうなの? と思いますけど。

てぃ先生:プログラミングについてどう思います? 今の子どもたちが習う必要があるのかないのかという観点で。

ひろゆき:その子どもにもよりますよね。全員が全員プログラマーに適した素質を持ってるかどうかはまた別の話なので。ただ、年収を考えると有利なところもあると思います。20代で年収1000万円以上稼げるのは有名な大企業とか一部のマスコミだけで、でもそういうところに入るのはかなり難しいじゃないですか。でもエンジニアだと、聞いたことのない会社でも年収1000万円の人がざらにいるんですよ。

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ひろゆきさん

ひろゆき:さらには独立して億稼いでる20代もいる。億まで行くのは一部のYouTuberとかプロスポーツ選手だけですよね。だから、たくさん稼いで自由な時間を増やしたいのであれば、エンジニアになるのは効率がいいと思う。でも、全員が全員向いてるわけじゃない。向いてないことを一生懸命やらせるのはかわいそうですよね。一度触らせてみて、向いてるかどうか確認するくらいはやってもいいんじゃないかなと思います。

てぃ先生:仮にひろゆきさんにお子さんがいた場合、スマホを使わせる時間は制限しますか?

ひろゆき:これも子どもによりますね。たとえば画面を見続けることで視野が狭くなったり人とのコミュニケーションをおろそかにしたりするなら、制限した方がいいよねって。あとスマホで何をしているかにもよる。たとえばゲームをするには反射神経を細かく使ったり、指の細かい動作を覚えたりするものなので、けっこう手先を使うんです。なので、一概に悪いとも言えないし、その子の様子とかやってる内容を見て考えるしかないかなと思います。

――ゲームばかりしてると心配になりますが、良い面もあると。

ひろゆき:プロゲーマーの子たちはみんな賢いんですよね。ゲームしかできない頭の悪い子たちだと思われがちだけど、今格闘技ゲームでトップランカーの人も東大卒ですから。

てぃ先生:僕にもプロゲーマーの友だちが何人かいるけど、全員が全員ユーモアがあって、しゃべってておもしろい人たちです。その辺の人たちより全然陽キャ。

――ちょっと意外です。

ひろゆき:今の時代だと、同じスポーツをする友だちを見つけるより、同じゲームで遊ぶ友だちを見つける方が楽なんですよ。オンラインでつながって、ボイスチャットしながらゲームできるので、スポーツよりよっぽど交友関係は広がるんじゃないかと思います。

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※写真はイメージ(iStock.com/Lazy_Bear)

てぃ先生:あとスポーツでも音楽でも共通することで、講師の質が大事ですよね。なんで子どもたちがこんなにゲームに夢中になるか考えてみると、その一つはチュートリアルが丁寧だからなんじゃないかと思うんです。パズルゲームなんかでも、第1ステージで教えてくれる通りに動かしたらクリアできて、コインがバババーッともらえてガチャガチャも回させてくれる。一方で、指導者の質が低い野球教室だと、いくらボールを上手に投げても「ちがう、こうやって」と言われちゃうじゃないですか。

ひろゆき:あはは! なにがおもしろいんだって思っちゃいますよね。

てぃ先生:ゲームに限らずいろんなものがあるなかで、どうやって子どもたちにおもしろいと思ってもらえるチュートリアルを用意するかが大事だと思います。これを保育現場では、「導入」って言い方をするんですけどね。非常に重要な要素で、個人的には活動の中身よりもここを大切にしているくらい。

――親もそういう気持ちでいた方がいいんでしょうね。

ひろゆき:子どもにピアノを弾かせたいと思って買ったとしても、親が弾けないと子どもも弾かないじゃないですか。むしろ親が楽しそうにピアノを弾いていたら子どももやりたがったりするものですよね。だから子どもにスポーツさせたいと思ったら、まず親が楽しそうにやってる姿を見せる。

てぃ先生:子どもに興味を持ってもらうには、親が興味を持たないと。僕はこれをわかりやすい言葉で「鬼滅の刃理論」と勝手に名付けました。

――どんな理論ですか?

てぃ先生:なんで『鬼滅の刃』が子どもたちにもあんなに流行ったかというと、結局親が夢中で読んでたからだと思うんです。子どもに読ませていいかわからないギリギリのラインの描写も多い。でも親が夢中で漫画読んだりアニメ観たりしてるのを見て、子どもたちも自然に興味を持ったと思うんです。それってひろゆきさんが話していたピアノの例も同じことじゃないかなって。

そういう意味では、「ピアノじゃないと!」「プールじゃないと!」じゃなくて、親御さんが好きなものや得意なものに巻き込んだ方がよっぽど健全というか、いい流れが生まれやすい気がします。もちろん子どもの年齢や発達に合ったコンテンツ選ぶことは前提ですけど。

全員が全員フォワードにはなれない

てぃ先生:話が戻るけど、子どもとネットの話を考えると、親と話しやすい環境が大事だなと思います。というのも、たとえば性教育に関してお子さんが興味を持ったとするじゃないですか。で、親御さんが「そんな話ママにしないで」とか「恥ずかしいからやめて」と返すと、子どもの相談先が限られてきちゃう。友人かもしれないし、ネットかもしれない。そういう不確かな情報に頼った結果、危ない目に遭うパターンがすごく多いと思う。そういう意味で、子どもと話しやすい環境を作ったり、時間を設けたりすることを意識した方がいいと思います。

ひろゆき:性の話を特殊扱いするから、子どもは余計気になっちゃうんですよ。

――フランスでは親子関係や性教育はどういった雰囲気ですか?

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対談の様子

ひろゆき:僕自身がフランスの教育を受けたわけじゃないけど、割とおおらかに見える、みせている、見れちゃうという感じです。離婚も多いし、歳を取っても恋愛とかするのが当たり前で、若いうちからそういうものだと思うような雰囲気がある。日本だとお父さんとお母さんがキスしてるのを見たことない子どもが多いと思うけど、フランスだとあり得ない。日本の親御さんは過剰にそういうものがないかのように振舞おうとしますよね。

――たしかにそうかもしれないです。

ひろゆき:それより、夫婦喧嘩をしないことのほうがよっぽどいいと思うんですよね。性のことより、喧嘩のほうがショックを受けると思う。

てぃ先生:色んな研究を読むと、喧嘩の中にも見せない方がいいものと見せていいものがあるみたいです。見せない方がいいのは、解決できない問題にまつわる喧嘩。自分たちの努力ではどうにもできないものは見せない方がいい。逆に夫婦間の努力で解決できる喧嘩だったら見せていい。その後仲直りするところまで見せると、子どもとしては喧嘩をしても人間関係をこうやってちゃんと修復できるんだってことを学べるっていう。

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てぃ先生とひろゆきさん

――次のテーマは子どもとセルフブランディングです。SNSが浸透したこの時代に、自分をセルフブランディングする力は必須になるのかどうか、意見を伺いたいです。

てぃ先生:言い方が難しいけど、個人的には全員が全員輝く必要があるのかって話がそもそものところにある気がします。本人の意向もありますし、全員が全員社長に向いてるわけでもなくて、ナンバー2の位置で一番能力を発揮できる人もいますよね。だから、みんながみんなそこを頑張らなくていいけど、宝くじ感覚で一回やってみるのはありかなと思います。HIKAKINさんだってYouTubeを始めてなかったら今のポジションにはなってないわけですし。

あとセルフブランディングって、SNSとかネット上の話だけじゃなくて、会社で働く中にもありますよね。言い方は悪いけど、実際の能力は別に高くないのに能力があるように見せる人もいるじゃないですか。そういうことが必要な局面もあるから自分をよく見せる、とまではいかなくても、どうやってうまく立ち回るかというのも大事なのかなとは思います。

ひろゆき:最適なポジションを見つける能力ですよね。ほかの人がリーダーシップを取るなら自分はムードメーカーをやった方がいいよねとか、ほかの人がフォワードできるなら自分はバックヤードの管理をした方がいいよねという。全体を見て自分の役割を理解することができたら、どの集団に属していても重要だと思ってもらえる。

てぃ先生:それで思い出したけど、今までテレビに出させてもらう中で一番すごいなと思ったのが、平成ノブシコブシの吉村崇さんなんですよ。自分が前にも出るし、ほかの人が前に出たら脇役に徹して盛り上げる。その都度自分の最適な役割を瞬間的に見つけて立ちまわる力がすごいなと、会うたびに思う。

ひろゆき:みんなシュートを決めるフォワードになりたがるものだけど、俯瞰する力が大事ですよね。本田圭佑さんが、サッカーの練習する時にみんなシュートの練習をするけど、あれは違うと言っていて。サッカーのほとんどの時間はボールを前に持っていくことをしている。だからそこをみんなちゃんと練習するべきだと言っていたんです。シュートばかりみんなやりたがるのは華やかだからだけど、現実に即して何をやるべきか考えるところも俯瞰で見る力ですよね。

吉村さんの話で言うと、本当は常に前へ出て笑いを取る明石家さんまさんになりたかったけど、なれない。その時に自分の役割を考えるんですよね。サッカーでも最初からキーパーやる人ってあまりいないじゃないですか。みんなフォワードやりたがるけど、ほかにもっとうまいやつがいるなら、俺はキーパーをできるようになろう、と思うわけで。

てぃ先生:そういう意味ではやっぱり、色んなことを経験して失敗するのも大事ですね。

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