【性教育座談会】包茎は恥ずかしいこと?むく・むかないを考える

【性教育座談会】包茎は恥ずかしいこと?むく・むかないを考える

からだの変化、恋愛、セックス、多様な性。現代を生きる子どもたちは、あふれるほどの情報に囲まれ、「ふつう」と自分との差に悩みを抱えています。デリケートなことだからこそ、子どもに適切な知識を与え、自分自身を守れるようにと思うママパパを集めて座談会を開きました。 

性に関する社会の空気は包括的にみんなで作り上げていくもの。

性教育後進国と言われる日本の性に対し、適切な知識を提供し、認識を変えていくきっかけを作りたいという想いから、10代の悩みを中心に性に関する情報提供をし、悩み解決や理解促進を発信する性教育webメディア『セイシル』(TENGAヘルスケア)と未就学児を持つママパパの悩みに寄り添う子育てwebメディア『KIDSNA(キズナ)』がコラボ。

今回は、『セイシル』に実際に寄せられている3つのテーマをもとに、未就学児の保護者による座談会を実施。その保護者の声をもとに村瀬幸浩先生(元高校教師、性教育研究者)にコメントをいただきました。

最後のテーマは「子どもの包茎」。包茎は学校でも習うことがないため、特に女性の中にはよく分からないまま大人になり、母親になっている人もいるでしょう。

『セイシル』でも「友だちに包茎をからかわれる」「手術した方がいいのか」といった悩みが多く寄せられています。

「小さいうちからむいてあげた方がいい」という話を聞いたことがあるママ・パパは多いと聞きますが、それは本当に正しいのでしょうか。

今回このテーマについて話すのは、こちらの3名です。

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子どもの包茎。保護者はどこまで介入する?

最初のトークテーマは「保護者自身の包茎の知識」について。

「ママ友から小さいうちにむかないといけないと聞いて焦る」という意見や、また実際に子どもの包茎手術を経験した方の話も聞くことができました。

iStock.com/Ridofranz
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Nさん
Nさん

僕は子どもの頃はむく・むかないという事に関してあまり意識したことはなかったです。自分自身の記憶で、小さいうちは「触ると痛いから放っておくもの」という認識がありました。

周りの友人を見ても中学・高校に行くまでは気にしてる人はいなかったように思います。友人の子どもが6歳のときに泌尿器科に行って、医者に手でむいてもらったことがあって、その子どもは激痛だったと言っていましたね。

3年生の息子は自然にまかせていますが、性器をかゆがっていることが多いので、もしかしたら包茎が原因なのかなとは思っています。衛生上の理由でむく必要があることは理解していますが、じゃあそれはいつからやったらよいのかというと、男の僕でも分からないことが多いですね。

Sさん
Sさん

私は恥ずかしいくらい知識がなくて、勝手にむけるものだと思っていたんです。

子どもが1歳前後のころにママ友から「むいたほうがいいらしい」と聞き、その日お風呂でやってみたのですが、息子が痛がったためかわいそうになってしまって。夫に「時期がきたらやってあげて」と丸投げしてしまいました。そのとき夫は「まだ大丈夫だよ」と言っていましたが、3~4歳のころ「やってみたらできたよ」と言っていたので安心しました。

iStock.com/Halfpoint
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Mさん
Mさん

うちは長男が5歳のとき、かかりつけの小児科が泌尿器科もやっていて、そこで「真性包茎」と診断され包茎手術をしました。最初は軟膏を処方され半年間塗り続け、むければ大丈夫とのことだったのですが、全く動かず。菌や汚れが詰まって痛がるようになったので、手術を決断しました。

次男も同じ真性包茎の疑いがあったので、最初は軟膏を塗って治そうとしましたが治らず、2歳で手術をしました。後になってから、小学生くらいまで全く動かない子どももいると聞いたので、もう少し様子を見ても良かったかなとも思っています。ただ痛がっているのがかわいそうだったので、記憶のないうちにしてあげて良かったかなという思いもありますね。

実は長男のときに病院に連れていき、手術を決めてきたのは夫でした。当時、私としては小さい子がひとりで3泊4日も入院することや、全身麻酔を使うことへの不安の方が大きかったですね。

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イラスト提供:セイシル

仮性包茎は自然な姿だと知ってる?

日本人は70%以上が普段はむけていない状態の仮性包茎だといわれているように、それはごく普通のこと。それなのに、常にむけている状態が正しい、かっこいい、などという偏見が多いのが現状です。

保護者は正しい知識を持って、それを子どもに伝えることができるのでしょうか。

Nさん
Nさん

中学生になると、修学旅行や温泉などで、むけてない友だちに対して「まだむけてないの」とからかったりしていました。学校からも親からも何かを教わったことはなかったですし、みんな正しい知識を持たず、「皮をかぶっている=かっこ悪い」と思い込んで、常にむけている状態を目指さなければいけないと思っていました。

iStock.com/ferrantraite
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Sさん
Sさん

私は周りのママ友もよく分かっていない人が多くて、分からない人同士で話している感覚がありますね。「なんかよく分からないけど、むいたほうがいいみたいだよ」というふうに、不安だけが先行してるのかもしれないですね。

Mさん
Mさん

うちの子は手術をしたため、同級生とは形が違うことで逆に話題にされてしまうこともあるかなと思ったので、しっかりと説明をしました。「ふだん皮がかぶっている状態は普通のことなんだよ。でも常にむけているあなたの形もおかしいことではないんだよ」と話をしています。

Nさん
Nさん

包茎の話を含め性教育は、パパよりママの方が熱心で、早いうちからした方がいいと思っている傾向にあるように感じています。

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美容手術の高額請求や感覚障害のリスクは?

真性包茎は亀頭包皮炎や排尿障害にもつながる可能性もあり、治療は医療保険の適用となります。

一方で仮性包茎は健康に支障がなく医療保険の適用ではないため、「形を美しくする」という目的で高額かつ不透明な手術費を請求されることもあるようです。

世間では、若者にとって性器の形というセンシティブな悩みに乗じるような美容整形の広告も多々あり、男性だけではなく女性に対しても、性器の見た目や色など、人それぞれ違うことで不安を煽り高額な手術を受けさせることも。

また、大人になってからの美容目的の包茎手術によって性感帯を切られてしまい、性行為で快感を得られなくなってしまった、射精が困難になってしまったというケースもあります。

iStock.com/Tzido
iStock.com/Tzido
Nさん
Nさん

包茎手術のリスクは全く知らなかったですし、美容目的と医療目的とでは違うということも知りませんでした。よく広告で見るような美容クリニックのイメージしか持っていませんでした。

Mさん
Mさん

私は息子の体の一部を切るという重大なことを、子どもがなにも分からない時期に決めてしまったことが、果たしてよかったのかと悩んでしまうこともあります。性感帯が切られてしまった例や、勃起障害が出ることもあると後から知り、子どもが大きくなったときに聞いてみたほうがいいのかな、と迷います。

手術当時、医者からそのような説明は全くなかったので、そういったリスクについても教えてほしかったです。何歳までにむけなかったらやった方がいいという基準も曖昧でしたし。先生に「やったほうがいい」と言われたら納得してしまいますよね。うちの子は真性包茎だったので医療保険適用でしたが、お金儲けのためにコンプレックスを刺激してくる美容クリニックなどの誤った情報に踊らされてしまうことは空しいなと心から思います。

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包茎は恥ずかしいものというイメージからの脱却

包茎はなぜ恥ずかしいもの、ネガティブなもの、というイメージを持っているのでしょうか。保護者自身の体験や、今後子どもたちにはどのように教えていくのかを話し合ってもらいました。

Nさん
Nさん

やはりギャグマンガなどのイメージから、ふだんかぶっている包茎は恥ずかしいこと、笑われることという意識がありました。着替えのときや温泉などでも見られたくないと思っている人が多いと思います。子どもに伝えていくためにも、親の知識が足りていないことが問題ですよね。

Sさん
Sさん

息子のことも、わからないからと夫に丸投げしてしまいましたが、正しい知識を得ようとする姿勢が大事だったなと反省しています。夫にも、包茎が恥ずかしいものというすりこみを決してしないように伝えようと思いました。

Mさん
Mさん

偏見は持っていないつもりでも、包茎は恥ずかしいこと、とどこかで思っていたのかもしれません。だから息子たちに対して「恥ずかしいからなんとかしてあげなきゃ」という気持ちがあったように思います。手術をしたことは事実なので、「完全にむけている状態なのは恥ずかしくはないし、逆にふだんかぶっている包茎の人だって恥ずかしいことではない」と、あらためて教えなくてはいけないと思いました。

Sさん
Sさん

健康上の問題がなければ、一人ひとりの体はみんな違って当たり前だと思うことが大切ですよね。

iStock.com/MStudioImages
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Nさん
Nさん

インターネットで調べたらいろいろな情報が出てくるけど、それが正しい情報か、信頼できる情報かの判断は大人でも難しいですよね。「ここにきたら正しい知識が得られる」という場所があって、親もいっしょに見て学べるようなコンテンツがあったらよいですね。

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Profile

村瀬幸浩

村瀬幸浩

東京教育大学(現筑波大)卒業後、私立和光高等学校保健体育科教師として25年間勤務。この間総合学習として「人間と性」を担当。1989年同校退職後、25年間一橋大学、津田塾大学等でセクソロジーを講義。従来の性教育にジェンダーの視点から問題提起を行ってきた先駆者。一般社団法人“人間と性”教育研究協議会会員。著書に『恋愛で一番大切な“性”のはなし(KADOKAWA)』、共著に『おうち性教育はじめます(KADOKAWA)』など多数。
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<出典>

包茎はすぐに手術したほうがいい?/セイシル

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<取材・執筆・撮影>KIDSNA編集部


8割以上の家庭が「性教育」を実施しておらず、その理由は「何をどう説明したらいいかわからない」。

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2021.08.24

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