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国語の授業で「国語力」は身に付く?国語力があがれば”自分”がベースアップする理由
KIDSNA STYLE編集部が選ぶ、子育てや教育に関する話題の書籍。今回は「おうちでできる 子どもの国語力の伸ばし方」(かんき出版)を紹介します。中学受験・高校受験の学習塾「すばる進学セミナー」を運営している中本順也氏が「学びの土台とよく言われる『国語力』をおうちであげる方法」をテーマにした一冊から、抜粋してご紹介します。
国語力は”自分”をベースアップする
「国語力はすべての学習の土台」という話は、よく語られますが、この「国語力」とは一体どういうものなのでしょうか。
「国語力」といわれて、最も思い浮かびやすいのは、学校や塾のテストにおける国語の得点です。テストや入試問題における点数は「評価」であり、ひとつの「基準」であるため、わかりやすく示された目の前の点数は、どうしても気になってしまうものです。
ですが、学校のテストや入試問題の得点だけで、国語力は決まりません。
文部科学省は、これからの時代に求められる国語力を《二つの領域》で説明しています。
①「国語の知識」や「教養・価値観・完成」等の基盤となる領域 |
②考える力、感じる力、想像する力、表す力、から成る、言語を中心とした情報を処理・操作する領域 |
文部科学省の説明から、国語の知識(語彙や文法、ことわざや慣用句など)や、さまざまな教養などをベースにして考えること、そして感じたり、想像したりしたことをアウトプットしていける総合的な力が、国語力であると読み取れます。
国語力は「自分」という存在の持つ可能性を最大限に発揮するための心臓部分で、国語力が上がると、考え方も感じ方も想像力もすべてがベースアップします。また、国語力は、国語という教科を超えて、私たちの日常のあちこちに存在しています。
「国語の授業」を通して世界の見方を学ぶ
では、日常の中にある「国語力」と「国語の授業」は別ものなのでしょうか。
国語の授業は、日本語で描かれた文章や詩歌を学ぶことで日本の文化や考え方を少しずつ学び、「共同体としてのルール」を学ぶ場です。国語の授業を経ることで、いつしか「国語」というレンズを通して世界を見るようになっていきます。
どんなときに、どんな気持ちになるか。 |
相手の表情や態度を見て、気持ちをどう想像するか。 |
相手の言いたいことを、どう汲みとればよいか。 |
「共同体としてのルール」、つまり「多くの人に共通する捉え方」を学ぶ最初の機会が国語の授業なのです。
国語力を構成する4技能
文部科学省は、国語力を構成する「考える力」や「感じる力」「表す力」などは、「聞く」「話す」「読む」「書く」という4つの《言葉を使った具体的な行動》に分類されていると、説明しています。
「聞く力」
話の大事な部分を捉えたり、話のペースやレベル感を合わせたり、話している人に共感して思いを汲み取ったりする力。
「話す力」
自分の考えを明確にし説得力を持って伝えたり、場面や相手に応じて伝えるべき内容をわかりやすく話すことができたりする力。
「読む力」
文章の内容や情報を正確に読みとったり、心情や内容を受け止めたりする力。「読解力」とも言われます。
「書く力」
さまざまな情報を集めてわかりやすい文章を書いたり、自分の意見や考えなどを正確に伝える文章を書いたりする力。
これらの能力は、受験対策や学校の授業だけでなく、生きている中でのさまざまな体験で、伸びていきます。
国語力は「遺伝」より「環境」
人間が持っているさまざまな能力や資質は遺伝することがあります。ですが、国語力はほとんど遺伝しません。
慶応義塾大学の安藤寿康教授によると、言語性知能(言葉を使った思考力や表現力≒国語力)に関しては、遺伝の影響はわずか15%程度である一方、家庭環境の影響は60%弱と非常に大きくなっていると説明されています。その他にも、学校などではなく家庭環境の影響力がより大きいというデータ(※)も。
国語力は環境によって向上する可能性が十分にあり、言語(言葉)の環境を整えて行けば、「国語が苦手」の遺伝を乗り越えることができます。
ただ、「家庭で育む国語力がすべてを決める」と背負い込む必要はありません。まずは、肩の力を抜いて国語力についてなんとなく知っておきましょう。
※出典:「遺伝マインド--遺伝子が織り成す行動と文化」 安藤寿康/著(有斐閣)
家庭で国語力をアップする5つのポイント
国語力アップのための具体的な方法をお伝えする前に、家庭で楽しみながら無理なく取り組んでいただくための5つのポイントをご紹介します。
①ムリはしない、できることだけ
家庭での取り組みは、「少しずつ」「できることから」行いましょう。短期間での成果が見えづらいのが国語の難しいところではありますが、焦らないで取り組むことが大切です。
いつもの環境に「国語」を散りばめておくことで、国語に触れる機会が増え、国語力がいつの間にか伸びているという効果を狙っていきます。
②よそはよそ、うちはうち
家庭の数、子どもの数だけ向き不向きがあり、すべての子どもにとってうまくいく方法はありません。続かなくてもいいし、試しにやってみるだけでも意味があります。
「我が家にあったやり方」を大事にしましょう。
③何からやってもいい、とばしてもいい
嫌がっていないか、保護者側から働きかけなくても取り組んでいるか、楽しんでいるかなど、子どもの反応を見ながら、国語力アップの方法を選びましょう。また、子どもと相談しながら進めてみるのもよいでしょう。
どこから取り組んでもOK。対象年齢はあくまで目安です。
④途中でやめてもいい
本人が「飽きた」と言い始めたら、「やりたくない」というサインであるため、やめるか続けるかを話し合ってください。途中でやめてもいいですが、辞める前に効果が感じられていたら、本人にきちんと伝えてあげましょう。
しばらく時間を空けて再開するとうまくいくことがありますので、「いったん置いておく」という判断も大切です。
⑤親子の素敵な時間を楽しんで
ご紹介する内容は、保護者が関わっていただくことで成り立つものがほとんどです。子どもの変化を楽しんで、喜びや驚きをどんどん言葉で伝えてあげてください。
親子で一緒になって国語や言葉について考え、時間を共有することは、子どもにとっても保護者にとっても大切な時間となるはずです。
家庭でできる国語力アップの方法【未就学児~】
本記事では、未就学児が国語力をアップするための具体的な方法の一部をご紹介します。家庭で楽しみながら無理なく取り組んでみてくださいね。
テレビに日本語字幕をつけて言葉の教材に
テレビは、実はとてもよい言葉の教材です。映像を目で見て、音声を耳で聞き、新しい言葉や表現の自然な使い方を知ることができます。さらに、「字幕機能」をオンにすれば、その効果をより高められるのです。
また、子どもがテレビを見るときは必ずしもニュース番組である必要はありません。子どもが好きな番組、アニメ、実況がしっかりしているのであれば、スポーツ中継でも効果があります。
字幕を表示することで、音声(耳)と映像の情報(目)に、違うパターンの視覚情報が文字情報として加わります。
五感をなるべく連動させたほうが、脳への信号も送られやすくなり、情報が定着しやすくなると言われていますので、字幕機能をオンにすることで、ただ見ているときよりも、早くかつ正確に、よく出てくる言葉や漢字、言い回しなどを習得することが可能なのです。
番組レベルを変えることで、高学年まで割と効果を発揮するのも、この方法のよいところです。
ドライブ中は「おはなし朗読」をお供に
昔話や童話は「国語」というものを知るうえで、大切な役割を持っていますが、これらにはどのような魅力や、さらには学習効果があるのでしょうか?
- 1つひとつのおはなしが短く読みやすい
- 登場人物のキャラがはっきりしているため、人物像をつかみやすい
- 言い回しや効果音などが特徴的
- 話の起承転結(組み立て)がわかりやすい
- 教訓(人として大事にしたいこと)が描かれる
- おはなし自体をたとえとして使うことがあり、それを理解できる
昔話や童話のような”おはなし”には、毎日の生活の中では触れること、見ることがないものが多く含まれているので、言葉の世界が大きく広がります。また、ディズニー作品を中心にリメイク版も多く展開されているので、どっちが好みか、どうしてこういうラストにしたのか等々、子どもと会話することで、子ども自身が物語の展開について考える機会を得ることが出来るのです。
また、おはなしには、長い歴史のなかで人間が次の世代に伝えてきた価値観が、理解しやすいストーリーと共に語られます。古くから親しまれてきたこういったストーリーは、多くの人を楽しませ、受け入れられてきたということなので「定番」のお話であるとも言えるでしょう。
「苦しんでも最後に正義は勝つ」や「友情や愛で困難を乗り越える」といった定番の展開を知ることは、入試で物語文や小説を読解するときの助けになりますし、自らの考え方のベースを作ってくれます。
未就学児期から昔話や童話などに触れることで、何かの判断をするときのひとつの基準を、ゆっくりと育むことができるのです。
ですが、時代の流れなのか、おはなしを読む機会や触れる時間が以前と比べて減少しているのかもしれません。おはなしCDなど手段は様々ですが、音楽アプリの中や、無料で聴けるサイトなどもあるので、ドライブ中(電車移動中)におはなし朗読の音声を聴いてみてください。
言葉と物語の世界を広げていきましょう。