「戦略的に」ほったらかすことで自ら学ぶ子が育つ。いつの間にか学んでいる環境とは?

「戦略的に」ほったらかすことで自ら学ぶ子が育つ。いつの間にか学んでいる環境とは?

2025.06.09

KIDSNA STYLE編集部が選ぶ、子育てや教育に関する話題の最新書籍。今回は、『自ら学べる子になる 戦略的ほったらかし教育』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。3児の母であり、7000人以上の親と接してきた家庭教育コンサルタントである著者が提唱する「戦略的ほったらかし教育」。放任でOKということではなく、子どもが自然に学びたくなる家庭環境を親がつくったうえで、子どもを放任すること。この画期的なメソッドをどのように実践するのかを紹介した一冊です。

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戦略的ほったらかし教育の基本

戦略的ほったらかし教育の実践を紹介する前に、この教育法の基盤になる「KISS」で育てるという考え方を説明します。

K・・・好奇心

I・・・意欲

S・・・思考力

S・・・信頼関係

親がこの4つをしっかり育むことによって、下の図にある大きな三角形の土台を整えます。


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この大きな三角形の上部にある小さな三角形は、偏差値や資格などの点数で測れる力です。子どもの好奇心や思考力などの土台があるからこそ、小さな三角形にある資格や知識、テストの点数などの習得に向かっていくことができるのです。

そして、この小さな三角形に親はタッチしません。なぜなら、親の役割は先生のように勉強を教えることではなく、教養を増やすサポートをすることだからです。子どもが「どこかで見たことがある! 聞いたことがある!」と感じる経験を与えることが親の大切な役割となります。

四七思考

多くのお母さんたちのお話を聞いていると、「子どもにちゃんと説明しなくちゃ」「わかってくれないのは説明が足りていないのかも」と思っている人がとても多くいます。たしかに、子どもをひとりの人間として尊重して説明をする姿勢は大切です。でも、何から何まで100%説明する必要はありません。多くの親は、「十割思考」で説明しすぎたり完璧を求めすぎたりして、しんどくなっています。

そこで、戦略的ほったらかし教育で大事にしているのが「四七思考」です。親が一生懸命説明しても、子どもはどうしてもイメージできないことがあります。そのため、あえて説明しないことも重要だと考えています。説明は4~7割でOK。残りは説明せずに子ども自身で考える余白にしておくのです。

お父さんお母さんから説明されればされるほど複雑でややこしくなり、やりたくなくなるといった経験はないでしょうか? 子どもが理解していないからといって、何回も何回も繰り返し説明していると煙たがられます。

親の影響力を活用

子どもたちが小さい頃、私はお風呂のバーに紐を付けて、湯船につかりながら蝶々結びに夢中になっているふりをしてみせました。子どもたちは「やらせて!」と言いますが、「いや、私もまだ上手にできないから待って」などと言ってすぐには渡さず、子どものやってみたい欲を刺激しました。そして満を持してバトンタッチすると、子どもにとって「真剣に取り組みたいこと」になっているので、集中してスッとできるように。

この例のように、子どもにとって親の言葉や行動は絶大な影響力があります。多くの場合、親が「おいしい!」と言えばおいしく感じ、「楽しい!」と言えば楽しくなります。絶対的に信頼している人が言うのだから、子どもは「そうなんだな」と納得するのです。

戦略的ほったらかし教育では、この子どもの特性を利用していきます。親から子へ「どうして必要か」「どれだけあなたのためになるか」をこんこんと説明するよりも、「うわっ、これ楽しい~!」と言いながら、子どもの興味関心を喚起したほうがずっと子どもの食いつきがよくなるのです。

生活の中から学ぶ

「学び=机に向かって問題を解く」ことだと思っていませんか? それももちろん必要ですが、それだけではなく生活の中に学びをちりばめていくことが大切です。親が生活の中に学びのきっかけをちりばめて、子どもが興味を持った瞬間に親子の会話によって記憶に残すことが何よりも重要です。

カードゲームで遊びながら数字に興味を持ったり、リビングの壁に地図を貼って地名について話したり……、そんな些細なことが、子どもの記憶に引っかかります。お風呂に貼る知育ポスターも定番なので、やっている方も多いと思います。

「ポスターを貼っているだけで覚えられるものなんですか?」と保護者から質問されることがあります。しかし、これらの仕掛けは書いてある知識を暗記するためのものではありません。「ちょっと聞いたことがあるな」程度の学びのフックを子どもたちの中に根付かせるためのものです。

「テレビのクイズ番組を家族で観て、一緒になって答えたことがある」「マンガを読んだときにこの話題が出てきたことがある」といった小さな接触があるだけで、子どもにとっての学びの入り口ができます。狙うべきは暗記ではなく、授業で「はじめまして」の学びにしないこと。子どものさまざまな生活の場を活用して、戦略的に仕掛けを作っていきましょう。


子どもの学び体質をつくる戦略

戦略的にほったらかすためには、子ども自身の「内発的な動機=探究心」があることが大前提です。探究心のある子どもは、興味を持ったことを自分から調べたり、深掘りしたり、自ら学ぶ姿勢が身についています。ここからは、探究心を育むコツをご紹介します。

リフレクションを習慣にする

リフレクションとは、出来事や物事を「なぜだろう?」と掘り下げていくことです。失敗したことも、うまくいったことも、振り返ることで次なる一歩へつなげていくことができます。そして、その振り返りこそが、探究の入り口に誘うことになるのです。

たとえば「いつも仲のいいAちゃんに傷つくことを言われて、ケンカした」という話を聞かされたとき。リフレクションを導く姿勢で応えると、「なぜAちゃんはそんなこと言ったのだろう」といった問いを子どもに投げかけることになります。すると、子どもは自分の目線でしか考えていなかった出来事に対して、Aちゃんの立場からも考えるようになります。

子ども一人で多面的に物事を捉えるのは難しいので、親は出来事を整理するサポート役としてリフレクションへ導いてください。また、子どもの代わりに答えを出さないように注意してください。答えを見つけるのは、あくまで子ども自身。

そして、親がリフレクションを支援する目的は、ベストな結論を出すことではありません。重要なのは、振り返りを習慣化することで、自分の頭で掘り下げて考えたり、物事を理解して対策を考えたりできるようになることです。そして、子ども一人でそれができるようになること。だから、子どもがリフレクションを経て、どんな結論を出すかは放っておきます。

「天才ノート」をつくる

すべての子どもはなんらかの才能を持って生まれてきます。「虫が好き」「絵を描くときの集中力がすごい」「なぜかずっと走っている」など、その子ならではの特徴が、才能です。つまり、子どもは全員天才! そんな思いから名付けた教育アプローチが「天才ノート」です。天才ノートは、子どもの「好き」を承認することで、主体的に学びを進めて探究心を育てるツールです。用意するのは、方眼ノートと赤ペン、この2つだけ。取り組む時間は、年齢×1分で十分です。

天才ノートを実践するポイントは3つ。

①子どもの関心のあること、好きなテーマを探す。アニメ、スポーツ、お菓子、妖怪など勉強に関係なさそうでもOK。

②好きなテーマから親がノート1~2ページ分の問題を設定。「好きなポケモンを3つ書きましょう」「世界で一番強いと思う虫を描いてみよう」など、なんでもOK。

③子どもが問題を解いたら、大きく花丸を描いて、「こんなポケモンよく知ってるね!」「たしかに、この虫はめちゃくちゃ強そう(笑)」など、いいところを探して褒めます。

「こんなに短時間でいいの?」「勉強に関係なさそうだけど大丈夫?」と疑問を抱くかもしれませんが、まずは数分試してみてください。おそらく、子どもは好きなことであれば一人でどんどん進めていけることを、親は実感するはずです。

また、自分の「好き」を軸にしながら、駅名を書くために漢字を覚えたり、恐竜が全長何メートルかを調べる中で単位に触れたりすることにもつながります。つまり、子ども自身の関心からスタートし、結果的にはいわゆる従来の勉強にたどりつきます。ここでは漢字も計算も、子どもたちの関心を深めるツールにすぎないのです。

次第にポイント②の親からの出題がなくても、自分自身で疑問を持って探究したり、気になることを見つけてどんどんまとめていったりするようになります。そうすれば、親の役割はポイント③のみ! できたことを承認して、子どもがやる気を出せるようにサポートすることこそ、親の役割の本丸です。

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『自ら学べる子になる 戦略的ほったらかし教育』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

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