親子は主従関係ではなく、対等な人間関係。ベンチャー企業社長が実践した気持ちいい親子関係の作り方

親子は主従関係ではなく、対等な人間関係。ベンチャー企業社長が実践した気持ちいい親子関係の作り方

KIDSNA STYLE編集部が選ぶ、子育てや教育に関する話題の最新書籍。今回は、『だから声かけ、話し合う』(東洋館出版社)を一部抜粋・再構成してご紹介します。ユニークな事業と働き方が注目を集める、ソウ・エクスペリエンス株式会社代表取締役社長であり、3児の父である西村琢氏が、「肩の力を抜いて、子どもと楽しく暮らすこと」をテーマに書いた一冊です。

だから声かけ、話し合う ソウ・エクスペリエンス 西村琢

親と子で気持ちのいい関係をつくる

私が目指している親と子の気持ちいい関係には、会話が欠かせません。

大事な前提として、親子もひとつの立派な人間関係です。恋人や友人、家族や仕事仲間と変わりません。もちろん立場の違いや血のつながりの有無など差はありますが、人間関係という言葉の前では何も変わらない、同じものです。

その親子の人間関係やお互いのかかわり方に対していつも意識を向け、より良い方法を探っていこう。それが本書の提案です。

親と子の気持ちいい関係づくりには、2つのポイントがあります。

1つはとても単純、日々を気楽に過ごすことです。互いに気負うことがない関係で気楽に過ごせることはそれだけで価値があります。その入り口として話しかけること、話し合うこと。よどみを防ぎ、気楽に。そのために声をかけ、話し合うのです。

2つ目に、子どもたちが新たな興味を獲得するための伴走です。何かの能力を身につけるため、テストに合格するためではなく、とにかく彼らの興味を広げ、深めること。間違っても、子どもの興味をおろそかにしてはいけません。

今この瞬間の彼らの興味は次なる興味の源であり、次の興味がさらにその先の興味を呼び寄せるからです。その道中で仲間と出会い、多くを学んでいく。それこそが彼らの生活であり、さらに言えば人生そのものだと思います。

以降では、親と子の気持ちいい関係づくりにおいて、私なりに効果があったと感じる具体的な方法を「やってみたこと」と「話してみたこと」に分けてご紹介します。


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イラスト:冨田マリー

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「やってみた」こと

けんかの火種に名前をつける

小学生同士ともなると、これまでのおもちゃを取った・取られたのようなことから、けんかの発端も展開も変わってくるものです。事態の収束を図るべく時間をかけて話し合い、20〜30分も話せばお互い気持ちも落ち着き、それぞれ反省すべき点があったことも受け入れられるようになる。そして互いに謝る。

ですが、またすぐ似たような原因で同じようなトラブルが起きないとも限りませんし、何か再発の確率を下げられるようなアイデアはないかと考えました。それが、「けんかの火種に名前をつける」です。たとえば「兄弟同士の挙動を指摘し合うこと」に名前をつけて、今後その兆しが見られたら、その名前を呼び合うことで注意を与え合う。

ちなみに私たちの場合は、これを次男の発案でウルトラソウルと呼ぶことにしました。似たようなトラブルはその後も起きています。ですが、そんなとき「それ、ウルトラソウルじゃない?」と言うことで我に返り、ある程度の抑制が効いているように見えるので、一定の効果はありそうです。

満足の5分間

子どもの感じている時間の感覚は、大人のそれとは大幅に違うなと感じることが少なくありません。子どもから「遊ぼう」と提案を受けたとき、忙しくて5分くらいしか時間が取れなかったとしても、相手してあげてみることをおすすめします。

大人の感覚だと、5分か10分では少なすぎると思い込んでしまいそうですが、子どもにとっては5分でも割と満足してくれることも少なくないというのが私の印象です。たった5分でも立派な予定、楽しい思い出になるというのは最近話題のタイム・パフォーマンスの観点からも悪い話じゃないと思います。

揺らぎ登校

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イラスト:冨田マリー

不登校児童生徒は、病気や経済的事情以外で年30日以上の欠席をしている子たちを指しますが、その手前の「学校に行きたくない」は、それこそ星の数ほどあるのでしょう。我が家にも幾度もありました。

ですが、それはある種の揺らぎのようなもので、子どもの体調や気分によるものもあれば、その日の好きな(嫌いな)授業、あとは担任や教科ごとの先生との相性など理由はさまざまなはずです。

我が家の子どもから初めて「学校に行きたくない」と言われたときは、たしか長男が3年生か4年生の頃です。私はなるべく長男との会話の時間を確保するようにしました。1〜2週間ほどかけて会話を重ねると、原因がおぼろげながらもわかってくるようになります。

そこからは、日によって遅め登校にしてみたり、特定の曜日を休みにしてみたり。週一で近所のフリースクールに通っているような時期もあれば、特定曜日だけ午後から登校するような時期もありました。

会話のなかで心掛けていたのは、学校に行きたくないという意思表明をできることは素晴らしいことだと十分に伝えることです。ただ、それと同時にすんなり全部お休みにしたら毎日をどう過ごすのか。いきなり全部を休みにしないほうが良い理由なども、できる限り丁寧に伝えます。

お互いの認識を合わせた上で、どうすべきか。私は、学校に行くのかどうか結論を出すことよりも、対話そのものに意味を見出すようにしていました。

常にハイライト

次男の通うサッカークラブの特徴を一言で表現すると、「常にハイライト」。観戦でもテレビゲームでもなく、生身の人間がプレーするサッカー。そして試合ではなく練習。それは、ともすればつらく厳しい訓練のような内容にもなり得るはず。

けれどそのサッカークラブでいつも繰り広げられるのは、試合のハイライトシーンのような場面ばかり。ゴールを目指して競り合っている時間が、練習時間の半分以上なのです。とにかく連携してボールを回してゴールを目指す。

ボールがコートから飛び出てしまったら、審判を務めるコーチが別のボールをポーンと蹴りだす。またそこから次のハイライトが始まる。ひたすらそれの繰り返しです。これは、楽しくないはずがありません。誰も点数とか気にしない。誰も勝ち負けとか言わない。チームのメンバーもコーチも、みんなただただ楽しそう。

整列とか叱責とか細かな規則とか、全くないけれど、そこには独特の秩序があり、調和が生まれています。

私は小さい頃から習っていたテニスを高校でも続けたかったけれど、入学直後に鬼の走り込み訓練があるテニス部には、自分の性格的におそらく馴染めないだろうと思い断念した過去があります。それだけに、ここで紹介したような「常にハイライト」はとても羨ましい。

指導法にはいろんな考えや賛否があるのでしょうが、低年齢であるほど「常にハイライト」で良いのでは?などと思うのでした。

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イラスト:冨田マリー

1週間待機リスト

これが欲しい、あれが欲しいという話が子どもから出てきたときに、私はよく「1週間待機リスト」を提案しています。「欲しいものがあったら、まず1週間待ってみよう。1週間後にまだ欲しければ、もう1週間待ってみよう。それでもまだ欲しければ、買うかどうかを真剣に考えよう」。

あれがしたい。これが欲しい。大前提として私は、そういう要求の多い子どもは見込みありだと捉えています。子どもは欲望が薄く従順であるよりも、たとえ少々わがままであろうとも自分の感情に正直で、その気持ちを周囲に伝えられる人間であってほしいと思うからです。

最近「1週間待機リスト」入りしたものの中に、卓上で遊べるサッカー盤があります。次男が友人の家で遊んで楽しかったということで、一度実物を拝借してきたのです。それが思いのほか楽しく親子で熱中。白熱しすぎて壊してしまいそうな気もしたので、では買おうかという流れでしたが、一旦そこでひと呼吸。

よくよく考えると、この類のゲームは家族はもちろん、友人が家に遊びに来たときなど皆で一緒に楽しめるので、君が自分のお金(お年玉など)で買うのもいいし、パパが半額出して皆で遊べるようにするのもいいねと提案。そこでまた、ひと呼吸。今、この状態です。

こんな形で、買うか買わないか意思決定を保留されているものが常時いくつかあり、ゆらゆらとアイディアを浮遊させつつ「まだ欲しいのか。本当に欲しいのか」を見極めたりしています。

後編はこちら▽▼▽

親子関係において「気楽さ」は価値。まずは言葉を交わし続けること

だから声かけ、話し合う ソウ・エクスペリエンス 西村琢

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