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【性教育座談会】男/女らしさとは?「性の多様性」を考える
からだの変化、恋愛、セックス、多様な性。現代を生きる子どもたちは、あふれるほどの情報に囲まれ、「ふつう」と自分との差に悩みを抱えています。デリケートなことだからこそ、子どもに適切な知識を与え、自分自身を守れるようにと思うママパパを集めて座談会を開きました。
性に関する社会の空気は包括的にみんなで作り上げていくもの。
性教育後進国と言われる日本の性に対し、適切な知識を提供し、認識を変えていくきっかけを作りたいという想いから、10代の悩みを中心に性に関する情報提供をし、悩み解決や理解促進を発信する性教育webメディア『セイシル』(TENGAヘルスケア)と未就学児を持つママパパの悩みに寄り添う子育てwebメディア『KIDSNA(キズナ)』がコラボ。
今回は、『セイシル』に実際に寄せられている3つのテーマをもとに、未就学児の保護者による座談会を実施。その保護者の声をもとに村瀬幸浩先生(元高校教師、性教育研究者)にコメントをいただきました。
今回のテーマは、「性の多様性」。
持って生まれるからだの性だけではなく、「性的指向(好きになる性)」や、自分が女性なのか男性なのか、どちらでもないのかといった「性自認」、服装や言葉遣いなどの「性表現(らしさの性)」は昨今メディアでもよく見聞きするようになりました。
この「性的指向」と「性自認」、「性表現(らしさの性)」を合わせて、SOGIE(ソジ)という言葉も、よく使われるようになっています。
これは、マイノリティ・マジョリティに分類せず、誰もが持つ要素として、性の多様性を表す新しい考え方です。
『セイシル』に寄せられた相談の中には、「自分は女性だけど体が変化するのが違和感」「男になりたくて、学校の制服を着たくない」「同性を好きになってしまった」など、性のあり方について悩む子どもたちが多くいることが分かっています。
未就学児から小学生までの小さい子どもを持つ保護者は、今のうちからどんなふうに考え、子どもとどんな接し方をするのが良いのでしょうか?
今回このテーマについて話すのは、こちらの4名です。
子どもの「性のあり方」を親は決めつけている?
最初のトークテーマは、保育園・幼稚園、小学校での「好きなもの」の傾向について。
「男の子だけど人形遊びやおままごとが好き」、「女の子がスカートを嫌がる」「男の子がスカートを履きたがる」などの経験について、親自身が持つ、性別に対するさまざまな固定観念が浮かび上がりました。
Nさん
Mさん
うちもそうです。長女が5歳のとき、誕生日プレゼントにリカちゃん人形を買ってあげたくて、本人も「ほしい」と言ったので買ってあげたのですが、その後で、「本当は戦隊ロボットがほしかった」と、ぽろっと言われました。
お兄ちゃんも弟も持ってるのだからそれをいっしょに使って、せっかくなんだから女の子のものを買った方がと嬉しいだろうと思っていたのですが、本人は自分専用のロボットがほしかったようです。
Aさん
5歳の長女は「ザ・女子」でピンク色やプリンセスが大好き。
でも3歳の長男がピンクのものや女の子っぽいものを選んだときに、長女は弟に向かって「男の子なんだからピンクじゃないでしょ」と言うんです。
すかさず私は「男の子がピンクが好きでもいいんだよ」と言うのですが、そのたびに本人は悲しそうな顔をしてあきらめてしまう。周囲が、その子が本当に好きなものを選ばせないようにしてしまってるのかなと思うと、今後どうフォローしていったらいいか悩みます。
Tさん
僕のところはまだ2歳なので、正直ないですね(笑)。
でも、最近可愛いものが好きになってきて、そのようすを見ていると、「これって親が仕向けてるから好きって言ってるだけなのでは?」と思うことがあります。妻は可愛い服装をさせたがるけど、子どもが小さいからと言って、本当に本人が好きではないものを着させているのかもしれない、と。
また、娘が「おいしい」を「うまい」と言うときがあるのですが、妻はそれを「おいしいって言いなさい」と正すんです。
お行儀が悪いからという理由なんでしょうけど、これがもし男の子だったら言わないんじゃないかって。親って、「らしさ」をいろんなものにくっつけて求めることがありますよね。
Nさん
同じです。息子が「うまい」って言っても何も思わなかったのに、娘が言ってたら僕は注意しちゃってたんですよね。「女の子はこうである」と無意識に思っていたんだなと気づきました。
ママパパは実際に家でどんなふうに対応している?
次の話題は、子どものジェンダーバイアスに気づいたら親としてどう対応しているか。
子どもたちの学校や友だち間でのリアルな体験と、性別に対する固定観念や偏見を持たせないための家庭でのコミュニケーションの工夫も聞くことができました。
Mさん
日曜って、『プリキュア』と『仮面ライダー』を続けて放送するじゃないですか。うちは男の子ふたりと女の子ひとりですが、3人いっしょになって観てます。
だけど、小学5年生の長男は最近、「プリキュアには興味ないよ」と言うようになってきました。4歳の次男も「俺、男だし」と言うこともあり、保育園や小学校で性別で分類されるような経験をしたり、友だち同士の関係で難しいこともあったりするのかなと思います。
Nさん
娘が男の子としか遊ばなかったり、「男になりたい」と言い始めた時期があり、保育園の先生に相談したことがあります。
そのときは「園でも気づいたことがあったら教えてください」という感じで大ごとにはならなかったので、その後は自然に任せています。
最近は、娘の一人称について少し悩んでいますね。最初はお兄ちゃんの真似をして「俺」だったのが「僕」になり、その後「私」になったのですが、今は「ぼかぁ」と言っています。特に修正しないでおこうとは思うのですが……。
Mさん
私は、子どもたちが小さいころから、LGBTQがテーマの絵本やドラマ作品などをいっしょに見て、「男の人同士で愛し合っても女の人同士で愛し合ってもいいんだよ」と話してきました。
息子にも娘にも、「ママには聞いてもいいんだ」という安心感を持ってほしくて、できるだけ日常の中で話すようにしています。
Nさん
僕自身はまだ子どもに対してそうした伝え方ができてないので、いろんな人がいるんだよってことを具体的に伝えたいと思いました。
将来、LGBTQ当事者が“異質なもの”として目の前に現れてしまうと、抵抗感や違和感からいじめなどにつながってしまうと思うので、その固定観念や心の壁がない小さいうちに、絵本を読むのはいいですね。
Mさん
私は、ふたりのパパがいるペンギンの家族を描いた『タンタンタンゴはパパふたり』(ポット出版)を子どもたちに読ませたのですが、子どもたちはそこで扱われているテーマがどうというよりも、絵本として興味があるだけなので抵抗なく読んでいました。「パパがふたりの家族ってあるんだー」とふつうに受け入れていましたね。
Aさん
昔からあるアニメ作品は特に性のすりこみがひどくて、スカートめくりやお風呂を覗くシーンが当たり前にありますよね。一方で、海外の最近の子ども向け作品はいろんな顔、いろんな肌の色のキャラクターがたくさん出ているような気がして。価値観が変わってきてますよね。
だからといって昔の作品を観るなとまでは言えないけど、少しずつコントロールしていけたらと思っています。夫はまだ「男なんだから」と長男に言ってしまうことが多いので……。「ママはこう言うけどパパはこう言う」だと子どもも混乱しますし、夫婦でも話さなきゃなと。
LGBTQをどう捉え、どう話すか
最後は、子どもたちの将来について。
子どもが思春期になって、性に違和感を感じたり、恋愛対象について悩んだときに親としてどう接するか?そして、今の日本社会で子どもたちがどう生きていくのかについても話題に。
たとえば今後、中学生になった子どもが「男になりたい」「女になりたい」と言ったらどうするか?というトークテーマでは、リアルな親の心境が語られました。
Nさん
受け入れようと思うけど、心もからだも「本当に男になりたいのか」の見極めは難しいですよね。
本人が相談してくれるんだったら、受け入れた上で、必要な知識を与えてあげたいですね。
Tさん
子どもには、学校と家庭という大きな2つの社会がありますが、自分の子どもが思春期になったらと想像すると、僕だったらまず「学校はいつでもやめていいよ」って言うかな。自分の性のあり方で悩んだときに、学校で理解が得られないんだったら。
Mさん
相談してもらえる関係性になろうと思うと、小さいころからのコミュニケーションが大事ですよね。
Mさん
私は、いつ子どもに打ち明けられてもいいように、第一子が生まれた時から、「子どもがもし同性愛者だったら」ということについて夫婦で話していたので、自分自身も夫もそのことについて受け止められないことはないと思っています。
だけど、自分たちが絶対的に当事者の気持ちがわからないので、安易に「大丈夫だよ」とか言わない方がいいのかなと。
思春期で「自分はふつうじゃない」と孤独を感じると思うので、知り合いの同性カップルの人たちと会って話してみてもらうのはどうかなと考えています。
学生時代は特に、LGBTQの人たちって本当にいるの?と思うでしょうし、私自身も大人になってそういう方々と出会うまで実感は持てなかったし。だからそういう人と会ってもらえれば、「自分だけじゃないんだ」と思えるかもしれないと思いました。
Nさん
まずは親が、「自分の子どもは大丈夫」や「自分の子どもには関係ない」という意識を持っていたら子どもの多様な価値観を奪ってしまうので気を付けようと思いました。
Aさん
小さい子どもでも思春期の子どもでも、「自分はこうだ」とか「自分はこうしたい」ってはっきりと自覚する前に、自分はふつうとは違うのかもしれない、でもどうしたいのかも分からない、というモヤモヤ期があるのではないかと思っていて。
本人に話してもらえないと親は気づけないからこそ、モヤモヤ期にできるだけ寄り添いたいし、いっしょに考えていける存在にならないといけないなと思います。
子どもには絶対的な味方がいるということを忘れないでほしいし、当たり前のことですが、「どんなあなたでも大好き」ということをずっと伝えていきたいと思いました。
Profile
村瀬幸浩
東京教育大学(現筑波大)卒業後、私立和光高等学校保健体育科教師として25年間勤務。この間総合学習として「人間と性」を担当。1989年同校退職後、25年間一橋大学、津田塾大学等でセクソロジーを講義。従来の性教育にジェンダーの視点から問題提起を行ってきた先駆者。一般社団法人“人間と性”教育研究協議会会員。著書に『恋愛で一番大切な“性”のはなし(KADOKAWA)』、共著に『おうち性教育はじめます(KADOKAWA)』など多数。
<出典>
<取材・執筆・撮影>KIDSNA編集部
8割以上の家庭が「性教育」を実施しておらず、その理由は「何をどう説明したらいいかわからない」。
なぜ子どもが小さいうちから性教育をすることが重要なのか?
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異性のきょうだいがいるとよくあることかなと思いますね。
6歳の長女は、8歳のお兄ちゃんの影響で戦隊ものだったり、戦いごっこが好きなようです。