「興味×能力」で子どもの自己を育む【探究学舎 宝槻泰伸③】

「興味×能力」で子どもの自己を育む【探究学舎 宝槻泰伸③】

子どもたちは学びを通してワクワクしながら、それぞれの探究を進めていってほしい。そう語る探究学舎代表 宝槻 泰伸(ほうつき やすのぶ)さんにお話を伺うインタビュー動画コンテンツ『KIDSNA TALK』。第3回目となる今回は、「子どもたちが持つ多種多様な可能性」と「保護者の方に気付いてほしいこと」について語っていただきました。

KIDSNA TALK

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加藤
探究学舎さんの学びの特徴であり、ビジョンにも掲げられている「興味開発」について伺います。
子どもには興味のある学びをさせてあげたいと思っても、「何に興味を持っているのか」「何が得意なのか」が明確にならないと難しい気がします。
宝槻 泰伸さん
ですが、そんなに簡単に「子どもの興味」って明確にはならないと思いませんか。

例えば、10歳の子が「音楽が得意です」と言ったら将来は音楽。7歳の子の絵がとても上手で書くことに夢中になっていたら、絵を書くことを資質として社会に出すようにしようと思います?
加藤
私はできないです。7歳や10歳だと仕事をするまでにはまだ時間があるので、他の可能性もあるのでは、と思います。
宝槻 泰伸さん
そう思うのはあたりまえです。

イメージは30歳です。30歳で人間が固まればいいんです。

30歳まで色々やってみて失敗して「あぁ、勘違いだった」でいいんです。そうやって積み重ねて自己が少しずつ確立していけばいいんです。30歳までは旅だと思ってください。
探究学舎 代表 宝槻泰伸さん
探究学舎 代表 宝槻泰伸さん
宝槻 泰伸さん
「やって失敗」「やってみて勘違い」でいいんです。そうやって、成功体験と失敗体験をくり返すんです。だって、成功体験だけの人生なんてあるわけないですから。

あのオリンピック選手たちでさえも「栄光と挫折」を味わっているんです。

だから30年くらいかけて自分を作っていくと思えば、小さいころに「やりたいこと、やることを固めなきゃ!」って思わなくていいんです。そう思うことが四角い考えです。

 現代社会は、人生100年時代です。だから三分の一の30歳までが「自己確立期」。そして、30歳〜60歳、70歳くらいまで、確立した自らの知識や経験をもとに転職を繰り返すかもしれないけど仕事を本気でやっていく、というのがしっくりくると思うんです。

その理由として、戦国時代の元服、成人は15歳くらいでした。それは享年50、つまり人生50年といわれているからです。だから現代は、2倍寿命が伸びているから成人と考える年齢も倍に伸ばして考えようというわけです。
 
宝槻 泰伸さん
法律上の成人年齢とは異なりますが、文化としては30歳くらいという見方が感覚的には合っていると思います。

そう考えると、10代20代は自分のやりたいことを探して、自分の資質とか自分の可能性を開発していく開発期であり、この時期を私たちは「興味開発期」といっています。

できることを開発していくのを「能力開発」と呼ぶことに対し、やりたいことを探すことを「興味開発」。 だから「やりたいこと」と「できること」の二つができると自分が見えてくると思います。
 
加藤
確かに、やりたいことはあるけど、できることがない人には仕事を頼めないです。
宝槻 泰伸さん
でも、逆に「できること」はあるけど「やりたいこと」がないという大人の方って、結構多いと思います。

なぜかというと、これまでの教育が「能力開発」一辺倒だったからです。

だからその反省を私たちが、いま行うならこれからの子どもたちには「能力開発」と「興味開発」の両方を勉強して、やりたいことができる、そういうことを30年間のロードマップで考えてあげようっていうことです。
加藤
確かに、おっしゃる通りですね。
宝槻 泰伸さん
特に、資格取得などの「能力開発」を行う教育機関や塾はたくさんあるんですが、「興味開発」を標語とする教育機関はあまり聞いたことがありません。 

ですから、「興味開発」市場を切り開くというのが私自身のミッションです。そして、これからたくさんのプレーヤーが「興味開発」という旗印を掲げてみんなで時代を作っていけたらいいなと思っています。

もっと言えば、30年の折り返しである15歳で義務教育期間が終わるので、これまでの常識であった高校に通って大学に進学して就職する、というメインストリームが少しずつ相対化していくと思っています。
 
 
加藤
そう考えると、学校で「大きくなったら〇〇になりたい」と言わせる必要はないですね。
宝槻 泰伸さん
ハイ、なぜ「〇〇になりたい」と言わせる必要がないのか。それは、職業は手段だからです。

仕事はひとつの働き方で成り立っているのではなく、様々な作業が組み合わさりチームで価値を作っています。

だから「〇〇になる」という職業名は、転職で入れ替わることもあります。だからこそ早い段階で「自分の〇〇になる」を決める必要はないんです。
 
宝槻 泰伸さん
ですが、「〇〇になる」を選ぶために「やりたい」ことを見つけるようにはしてあげたい。

例えば「宇宙の仕事をしたい」とか「人を笑顔にしたい」「地域を支えたい」「世界をまたにかけたい」といったことです。

何になるかの前に「何をやりたいか」っていうことが決まっていれば、「何になるか」は自然と決まってくるはずです。

でも、「何をやりたいか」ってすぐに決められると思います?
加藤
思わないです。
宝槻 泰伸さん
でも、多くの人が明確とは言わないまでも表現することはできるはずです。

例えば、「ワクワクしていたい」「いつも新しいことに触れていたい」とか、「ひとつのことに集中していたい」「変化が苦手なので安定、安心していたい」といったことです。

だから私が常に大事にしたいと思っているのは、人間の中心にある「在り方」です。

「在り方」が自覚できている人は、「自分がどうありたいか」という大事なポイントを理解しているから、何をやっていても幸せになれるんです。

逆に自分がどうありたいかが不自覚の人は、「ほんとは何やりたかったんだっけ?」って迷っちゃうんです。

だから最初の〇〇に“なる”は「Becoming」、“何をやるか”は「Doing」。そして“どうありたいか”は、Being。だから「BecomingよりDoing」、「DoingよりもBeing」です。
 
宝槻 泰伸さん
あなたやあなたの子どものBeingはなんだろうか。それは一言でいうと「存在」です。

あなたの存在やあなたの子どもの存在、個性をつかまえることを30年かけてやりたいんです。

 だからこそ、10歳、20歳で何になりたいか職業が決まっている必要はないです。
 
加藤
ですが、アスリートや音楽家といった職業に20代、30代になってからなりたい、と思ってもなれないという意見もあると思います。
宝槻 泰伸さん
確かに一部の職業は、早い時期に決めないとなかなか達成できないかもしれません。ですが、でもそれは一部の例外です。ほとんどの仕事は、そんなに早く決める必要はないです。
加藤
そうですね。頭でっかちになっちゃいけない、ってことですね。
宝槻 泰伸さん
そうです。だからこそ日常生活の中で自分の思考回路に四角い自分を丸くしておく自覚をするスイッチを入れておいて、思い出すことがとても大切なんです。
加藤
おっしゃるとおりですね。それが子どもにも伝わってきますものね。
宝槻 泰伸さん
子どもたちの「好き!」「やってみたい!」は千差万別です。何が正解なのか、成功なのかは誰にもわかりません。

だからこそ子どもたちとご家族と共に関わりの中で一歩ずつステップを上り、積み上げ、作っていく。そのプロセスが豊かで、尊いものであるということこそ、わたしたちが伝えていきたいことです。
 
加藤
教育現場は、これまでの偏差値重視の学歴社会から、グローバル化と科学技術の進歩などによって、これからも変わっていくことでしょう。

だからこそ、自らが興味を持って解決すべき課題を見つけ、探究する力がますます重要になっていくことは間違いありません。

そして、それは子どもだけではなく大人にも言えることなのかもしれません。宝槻さんにお話を伺ってそう強く感じました。

2022年05月18日

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