【松田悠介】わが子をグローバル人材にするなら「教育投資」を

【松田悠介】わが子をグローバル人材にするなら「教育投資」を

オンラインのインターナショナルスクール Crimson Global Academy 日本代表の松田悠介氏にインタビューする連載企画。第2回の今回は、グローバル人材育成には保護者の“教育は投資”という考え方が必要だと、熱く語ってくれた。

特集記事

海外での学びがリーダーを増やす

第1回では、グローバル教育×オンライン教育の可能性について語ってくれた松田悠介氏(以下、松田氏)。そもそもなぜ、グローバル教育を推進する活動に取り組むに至ったのか?

「なぜ海外留学や海外進学をすべきと考えるか。それはやはり、海外での学びが大きく視野を広げ人生を変えた、という僕自身の経験にもとづいています」

Crimson Global Academyで、海外留学や海外進学を目指す生徒と海外の超一流の教育者・個別指導員をオンラインでつなぎ、幅広い学習支援をしている松田氏。
プロフィール

松田悠介/大学を卒業後、体育教師として中学校に勤務。体育を英語で教える Sports English のカリキュラムを立案。その後、千葉県市川市教育委員会 教育政策課分析官を経て、ハーバード教育大学院(教育リーダーシップ専攻)へ進学し、修士号を取得。卒業後、PricewaterhouseCoopers Japan にて人材戦略に従事し、2010年7月に退職。退職後、全国で厳しい環境に置かれている子どもたちの学習支援を展開するLearning For All を設立し、2014年に独立法人化。2012年からはTeach For Japan の創設者として日本国内の教育課題の解決に取り組み、2016年6月にCEOを退任。2018年6月にはスタンフォードビジネススクールで修士号を取得。2018年7月にスタンフォード大学の客員研究員に着任し、あわせて日本人のアメリカやイギリスのトップスクールへの留学支援を展開するCrimson Education Japan の代表取締役社長、オンラインのインターナショナルスクールCrimson Global Academyの日本代表に就任する。著書に『グーグル、ディズニーよりも働きたい「教室」(ダイヤモンド社)』。

自身は大学卒業後、中学校の体育教師として勤務。そこで“学校を作りたい”という思いを抱き、マネジメントやリーダーシップを学ぶためハーバード教育大学院に合格。1年間の留学から帰国したのちに、NPO法人Teach For JapanとLearning for Allを立ち上げ、社会課題の解決や教育格差の是正に取り組んできた。

そのなかで、次のステージへと進むためハーバード教育大学院卒業から8年後に再びアメリカへ。スタンフォード経営大学院で学んだのちに、Crimson Global Academyの日本代表に就任している。

――教育格差などの社会課題に取り組んだのち、グローバル人材の育成に取り組もうと思ったのはなぜですか?

「Teach For Japanで日本の教育格差の問題に取り組む中で、自分ひとりでこの問題を根本的に解決する見通しが立たないと感じました。そのとき、僕のように思いを持って、課題意識を持って立ち上がるリーダーが100人、1000人、10000人になればこの課題を解決できるかもしれないと思ったんです。

周囲を見てみれば、社会問題に当事者意識を持ち、主体的に取り組んでいる社会起業家の人々はみなさんやはり海外経験を持っていました。
iStock.com/skynesher
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僕自身も2回の海外留学で、優秀な仲間とともに切磋琢磨しながら学んだことで圧倒的に視座が高くなりました。かつ日本を客観的に見る機会を得るので、日本の可能性と課題に気づくことができるのだと。

こうした人生が変わるきっかけを与えることと、社会的ミッションを持って立ち上がるリーダーをひとりでも増やそうという目的で、今の海外留学や海外進学をサポートする仕事を行っています」

子どもの教育はハイリターンな投資である

高い学費は子どもの未来で返ってくる

独立行政法人日本学生支援機構による「2018(平成30)年度日本人学生留学状況調査結果」では、2018年に大学等が把握していた海外留学をしている日本人学生の数は、約11万5000人とされている。文部科学省の統計による同年の大学生・短期大学生数は約303万人ということを考えると、海外留学をしているのは4%にも満たない。

海外留学を含むグローバル教育を推進するうえで、日本でネックになっているのはどのような部分なのか。

「日本は先進国の中でも貧しい国で、厚生労働省が発表した2019年のデータでは、現金給与総額の名目賃金、そこから消費者物価指数を除いた実質賃金も減少しています。

いつの間にか子どもの教育にお金をかけられるほどの家庭状況ではなくなってきているのです。
iStock.com/AzmanL
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一方で、中国や韓国は子どもを海外の一流大学にどんどん送っている。なぜそうなるかというと、やはり教育に対するコスト感覚の違いです。中国や韓国は、『教育で人生を変える』という価値観を持っていて、幼稚園生のころから数百万円単位のお金をかけて塾に通わせるほど、グローバル人材に育てるために教育は一世一代ものなんです。

日本では、国内の大学の学費が4年間で400万円程度、アメリカの大学に行くと寮費とあわせて2500万円程度だとすると、単純にその費用の比較だけで国内に決めてしまう。それだけ“教育に投資をする”というマインドがないんです」

――投資のマインドでいうならば、断然アメリカである、と。

「たとえば日本の大学を卒業した人たちの初年度の年収が300万円~400万円くらいだとすると、アメリカのトップスクールを卒業したら700万円くらいで、投資銀行などに勤めれば1000万円くらいからのスタートです。

さらに、GoogleやFacebook、Twitterなどのシリコンバレーにある企業だと平均年収で約3300万円。そうすると、低く見積もっても初年度の年収が600万円くらいになるわけです。日本の大学を出た新卒と比べると200~300万円の差です。その状態で40、50年働くと、最初は200~300万円の差だったところが累積的に広がっていきます。
シリコンバレー iStock.com/georgeclerk
シリコンバレー iStock.com/georgeclerk
これを生涯賃金の差で言うと、2億5000万円から3億円ぐらいの差になります。つまり、アメリカの大学の費用2500万円の投資対効果が3億円を超えるとなれば、ふつうは誰でも投資するじゃないですか。だけど日本人はこういう考え方を持っていない。4年間で数百万円で済むVS数千万円かかる、となってしまうんです」

――日本は教育にお金をかけにくい現状があり、“今”の出費だけを見てしまうということですね。

「子どもが社会に出たあとのリターンを考えてみてください。海外で学ぶことで世界的に求められる人材になっていくため、年収も上がり、さまざまなチャンスにも恵まれます。

また、さまざまな統計にも目を向けていくべきです。日本の人口は1億2000万人から2060年には8000万人になり、高齢化率は40%になると言われています。一方、世界は72億人の人口が100億人に達すると言われている。つまり、海外の大学に進学することによって、日本の縮小市場ではなく、成長のエネルギーが溢れている世界の成長市場をフィールドでチャレンジできる。学費をハイリターンな投資と捉えることが、グローバル教育には必要です」

幼児期からの語学や感性教育も投資の一つ

――子どもが未就学児のころから、教育投資としてできることもあるのでしょうか。

「僕は語学は早ければ早いほどいいと思っています。それと同時にやってほしいのは、アートや音楽。
iStock.com/CherriesJD
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海外ではテストの点数では測れない“非認知能力”や、ものごとに主体的に取り組む姿勢も求められますし、何よりもこれからはAIの時代。今ある仕事が人工知能に取って代わられることを考えると、人間に求められることは感性や直感です。

ハーバード大学やスタンフォード大学など、海外のトップスクールの試験では、スポーツやボランティアなどの学校以外での“課外活動”が重要視されます。

これは、合格するためのものではなく、自分の“好き”と徹底的に向き合い、情熱を持って取り組むもの。好奇心を持って探求し続ける、その子にとっての“マイプロジェクト”を持ってみてください」

松田悠介氏インタビュー第2回の今回は、グローバル人材育成における教育投資の重要性について語ってもらった。最終回となる次回は、海外留学や海外進学を考えている保護者におすすめしたい書籍を松田氏がセレクト。今すぐ読むべき6冊を紹介する。

<取材・執筆>KIDSNA編集部

2020年06月23日

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