大阪万博を走る「中国製EVバス」でトラブル続出…書類だけのシンプル審査で「補助金天国」というEVバス業界の闇【2025年9月BEST】
「全国初のEVスクールバス」も4台すべて使用中止
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2025年9月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト3をお送りします。ビジネス部門の第3位は――。 ▼第1位 これで北陸新幹線が完成する…鉄道ジャーナリストが提案「米原ルート」でも「京都ルート」でもない"ウルトラC" ▼第2位 日本人にまったく馴染みがなかったのに…デパ地下で1日300キロもバカ売れして国民的惣菜になった「珍味」とは ▼第3位 大阪万博を走る「中国製EVバス」でトラブル続出…書類だけのシンプル審査で「補助金天国」というEVバス業界の闇 大阪・関西万博で運行しているEVバスでトラブルが相次ぎ、国土交通大臣が供給する福岡県の企業に車両の総点検を指示した。自動車生活ジャーナリストの加藤久美子さんは「輸入EVバスの認証に関する審査が緩いだけでなく、多額の補助金が書類だけで出されているのは問題だ」という――。
万博来場者の「足」となっているe Mover
閉会まで1カ月を切った大阪・関西万博。閉幕が近づいてきたこともあって9月に入ってからは平日も大混雑となっている。その万博の会場内の外周路で走り回っているのが、大阪メトロが運営するバス「e Mover」である。
全車両が電気を動力源として走行するEVバスでおよそ3~5分間隔で運行されている。チケットは1回利用(400円)と1日乗り放題(1000円)の2種類がある。
また、e Moverには自動運転バスもある。通常のe Moverとは走るコースも異なっている。なお、「自動運転」といっても、ドライバーは運転席に座っており、「無人運転」というわけではない。
今年4月の万博開幕以来、このe Moverに使われている車両は自動運転車含め不具合が多発している。
北九州の企業が150台、大阪メトロに納入
これらのEVバスは中国の製造会社、威驰腾汽車(福建WISDOM)、南京恒天领锐汽車有限公司(KINWIN/YANCHENG)、愛中和汽車(VAMO)の3社によって製造されており、北九州市に本社をかまえるEVモーターズ・ジャパン(代表取締役社長・佐藤裕之、以下EVM-J)という会社が輸入し供給している。
同社は2019年4月1日に設立された新しいEVベンチャー企業で、社長の佐藤氏は同じく北九州市内のソフトエナジーコントロールズで最高技術責任者や代表取締役に就任し、退職の後にEVM-Jを設立し現在に至る。また、EVM-J副社長の角英信氏もソフトエナジーで代表取締役に就任。2019年2月に同社を退職し、EVM-Jに転職している。
EVM-Jが万博に100台のEVバスを納入するというリリースが出たのは2023年6月15日。EV関連のメディアにも寄稿している筆者は当然、同社の名前と北九州にあることを知っていたが、納入の実績がほとんどなく設立間もないEVベンチャーが、いきなり万博で100台もの電気バスを納入したことを知って、当時、非常に驚いた。
しかも1社独占で100台。最終的には現在150台に増えており、さらに、大阪市内を走るオンデマンドバスも2025年3月末までに同じ大阪市高速電気軌道株式会社(大阪メトロ・大阪市交通局)に40台が納入されている。
なお、このオンデマンドバスは9月1日、大阪市福島区で中央分離帯に乗り上げる事故を起こしている。「ハンドルがきかなくなった」ことで中央分離帯に乗り上げたそうだが、回送中でけが人が出なかったことは不幸中の幸いだった。