だから富士通「FMV」を40年間で初のシェア1位にできた…外資コンサル出身社長が見た日系企業の知られざる強み
変化や改革は外資の方がスピーディーだが
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富士通のパソコン「FMV」が好調だ。2021年に、外資コンサル出身の大隈健史氏が富士通クライアントコンピューティング社長に就任すると、わずか3年でPC国内販売シェア1位(※)となった。40年以上、2位だった会社をどのように改革したのか。大隈社長に、ライターの鬼頭勇大さんが聞いた――。 ※全国家電量販店の販売実績を集計する第三者機関データに基づくFCCL社集計
社内にあった「2位じゃダメなんですか?」の空気
「FMV」ブランドのパソコンを手掛ける富士通クライアントコンピューティング(以下FCCL)が好調だ。“万年2位”だった国内個人向けパソコン市場において2023年度、NECを抜き、初となるシェアトップに輝くと以降もキープ。同社調べでは、直近の2025年8月まで連続で1位に君臨している。
富士通がパソコン事業に参入したのは、今からさかのぼること44年前の1981年。そこから40年以上も王座に手が届かなかったFCCLを変えたのは、外資企業、それも競合といえるレノボ出身の社長だった。
富士通のパソコン事業部を前身とするFCCLは、2016年に富士通100%子会社として分社化し創立、2018年に富士通がLenovoに51%を譲渡しジョイントベンチャー企業となり現在に至る。2021年にはレノボでアジアパシフィック地域の中小企業(SMB)領域を統括していた大隈健史氏(45)が新社長に就任した。
すると、就任3期目の2023年度に国内個人向けパソコン市場の年間トップシェアに輝く。以降の推移は冒頭で触れた通りだ。そもそもなぜ、長年2位の座に甘んじていたのか。大隈社長は「マインドセットの面が非常に大きかったのではないでしょうか」と分析する。
「就任後、シェアトップを目指そうと社内に発破をかけてまわりました。そこで社内に『2位じゃダメなんですか?』という空気が少なからずあることに気付いたんです。2位ではあるが、ビジネスは十分にできている。ブランドもある。何でわざわざ今さら目指す必要があるの?――こうした思いが背景にあったのだと思います」