「ぼったくり」と大炎上したのに大盛況…「3850円のえきそば」が大阪・関西万博で"逆転ヒット"を遂げた理由
社長の願い「叩きあうより、高めあう世の中になってほしい」
Profile
万博開幕当初「高すぎる」と非難された「3850円のえきそば」が一転、大盛況に終わった。批判一色だった風評は、どのようにして覆されたのか。フリーライターの宮武和多哉さんがまねき食品・竹田典高社長を取材した――。
非難の声も大盛況、184日で一体何が
万博が開幕した4月当初、万博西ゲートにほど近い「MANEKI FUTURE STUDIO」で提供された「究極の神戸牛すき焼きえきそば」(究極のえきそば)は、数ある「万博グルメ」のなかで、もっとも話題を呼んだといってよいだろう。
神戸牛をふんだんに盛り付けた一杯は、お値段が「3850円」。原型である「えきそば」(姫路駅の立ち食いそば)の数倍の価格とあって、当初は何かと非難を受けがちであった。しかし、実際に店舗はいつも賑わい、想定の2倍、3倍の売り上げをたたき出しつつ、万博閉幕まで人気を保ち続けた。
「3850円」という価格に否定的な意見が多かった開幕当初から、なぜ評価が好転していったのか。店舗を運営する「まねき食品」竹田典高社長にお話を伺い、激動の万博期間を振り返っていただいた。
3850円にはちゃんと理由がある
「まねきのえきそば」はもともと、現在のJR姫路駅構内で、いわゆる「駅そば」(駅利用者向けのそば店)として提供されていたもの。1949年の発売から既に80年近い歴史があり、「黄色い中華麺に和風だし」という独特のスタイルを貫く一杯は、列車の乗り換え客や学校帰りの高校生、鉄道ファンなど、多くの人々に愛されてきた。
この「えきそば」を提供している「まねき食品」は、大阪・関西万博への出店を思い立つ。そして、完成した「MANEKI FUTURE STUDIO」の看板商品として開発したのが、「えきそば」をベースにした「究極の神戸牛すき焼きえきそば」(以下:「究極のえきそば」)だ。
普通の「えきそば」と「究極のえきそば」の違いは、すべて極上の食材を使用し、手間をかけていること。通常の「えきそば」が“かん水”を使った中華めん+和風だしを使用しているのに対して、「究極のえきそば」はオリジナルの生めんと、ホタテ・ハマグリなどでとった出汁を組み合わせており、お盆に乗せて運んでいる時点で香りが違う。
そして「究極のえきそば」は、三大和牛の一角をなすブランド牛・神戸牛の肩ロース肉が、たっぷり100gも乗せられている。また能登半島地震の被災地復興の願いを込めて輪島塗の漆器で提供している。「えきそば」とは見かけが似ていても別個のもので、「3850円」という価格に見合ったものだ。