高市早苗でも、麻生太郎でもない…公明党に連立離脱させた"池田大作のいない創価学会"の苦しい特殊事情
カリスマが消えた組織が原点回帰を始めた理由
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「自民党への注文」はこれまでもあったが…
10月10日、公明党は1999年以来続けてきた、国政における自民党との連立をやめると決断した。今後の日本政治を大きく揺るがしていくだろう衝撃的なニュースだ。
自民党では10月4日、総裁選挙が行われて高市早苗衆議院議員が当選。日本史上初の女性総理誕生か、という流れになった。しかし公明党は直後から、その流れに待ったをかけるような動きを取り始める。
公明党の斉藤鉄夫代表は4日の夕方、高市氏のもとを訪ねて、①「政治とカネ」の問題のけじめ、規制強化②首相としての靖国神社参拝を控えること③外国人排斥ムードの抑制――といった要求を伝えた。高市氏はこれを受けて、靖国神社秋季例大祭への参拝取りやめを決めるなど、一定の歩み寄りを見せたが、「政治とカネ」の問題については、なかなか公明党側に色よい返事をしていなかったという。
また、自民党・高市体制は10月7日、萩生田光一衆議院議員を幹事長代行に起用すると発表した。萩生田氏は2022年から騒がれ始めた、いわゆる「自民党の裏金問題」に関与していた議員の一人とされる人物。この人事にはすでに世論からの一定の批判も出ているが、公明党サイドはより神経をとがらせたとされる。
周知のことではあるが、1964年に公明党を創設した人物とは、新宗教団体・創価学会の池田大作名誉会長(2023年に死去)である。池田氏は、「憲法9条だけは絶対に変えてはいけない」「日本と中国は一衣帯水(近くて親しい間柄)の国」といった発言で知られた、政治信条としてはリベラル寄りの人物だった。
公明党もそれに沿って、党としては中道左派くらいのポジションで長く歩んできた経緯がある。よってこれまでも、公明党は自民党の保守的な政策態度などにいろいろと注文を付けてきた事実があり、今回の自民党・高市新総裁に対する公明サイドからの注文も、それ自体は理解できる行動だ。
また、そうした態度を示すことによって公明党は「自民党のブレーキ役」を自任し、連立政権内での存在感を保ち続けてきた。逆に言うと「公明党からの自民党への注文」とは、それによって自民からさまざまな譲歩を引き出し、連立のなかでも埋没せず、公明党としての手柄を得るための駆け引き戦術の一つであった。