なぜ中学入試で「ブランコ問題」が頻出するのか…塾の勉強だけでは手に入らない難問を解けるようになる力
スーパーに買い物に行ったときの姿で差が出る
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中学入試での理科と社会の問題が変化している。プロ家庭教師集団名門指導会代表の西村則康さんは「近年では知識を暗記するだけの学習では太刀打ちできない内容になってきた。知識を身につけるための『根っこの部分』をきちんと育ててほしい」という――。
理科も社会も「暗記だけ」では太刀打ちできない
中学受験では国語と算数が重要科目とされ、理科・社会の勉強は軽視されがちだ。実際、塾の授業も国語と算数に比べてコマ数が少ない。また、これらの科目はテスト前に暗記をすれば何とかなると思われやすい。しかし、昨今の理社入試は単に知識を問うだけの問題はほぼ出題されない。暗記だけで乗り切ってきた親世代は、無責任に「ちゃんと覚えておきなさいよ」と言うが、知識を暗記するだけの学習では太刀打ちできない内容に変わっていることをぜひ知っておいてほしい。
まず、以前よりもテスト用紙の枚数が増大している。例えば理科入試の難しさで知られている渋谷幕張中では、10枚以上ものテスト用紙が配られる。大問1つに対する説明文はとてつもなく長く、大人でも怖じ気づきそうになるレベルだ。さらに各問題にはデータとしての資料や図、説明のイラストなどが入り交じる。
これをたった40分で読み解き、設問に沿った回答を提示しなければならない。しかも、回答は「なぜそうなのか?」という因果関係を書かせる記述であったり、複数の選択肢(しかもそれも長文)の中から、即座に正しい答えを見つけなければいけなかったりする。
つまり、親世代が知っている入試問題とは大きくかけ離れているということだ。もともと麻布中や栄光中などの難関校ではこうした傾向があったが、今は偏差値50レベルの学校(四谷大塚偏差値)でも、問題文の長文化、複数の資料の読み取り、記述回答が主流になりつつある。
大学入試の変化が中学入試に反映されている
では、なぜ学校はそのような問題にシフトチェンジしているのか?
まず、大学入試の内容がそのように変わってきていることが大きい。知識を記憶しておくことや、素早く解くといった処理能力は、今はAIに勝るものはない。それよりも、人間にしか持つことができない好奇心や創造力、問題解決力を育んでいこう、という流れが、大学入試の中身を変え、中学入試にも反映されつつある。
知識を丸暗記し、入試対策用の問題ばかり解いてきた子はもういらない。それよりも、日頃から世の中で起きていることや自然現象に興味や関心を持ち、自分事として考えようとする子に入ってきてもらいたい。その素地を見極めるために、入試の中身を変えてきているのだ。そのため、塾の授業で習ったことやテキストの内容がそのまま出されることはない。学校によっては、塾では習ったことのない初見の問題が出題されることもある。