オス牛とメス牛とでは肉質は全く違う…スーパーで「同じ値段でより柔らかくて美味しい肉」を調べる簡単な裏技
「性別」と「エサ」は牛肉の肉質を大きく左右する
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スーパーで「より美味しい牛肉」を選ぶにはどうすればいいのか。焼肉作家の小関尚紀さんは「オス牛とメス牛では、メス牛のほうが肉質が柔らかい性質がある。豚肉や鶏肉にはできないが、牛肉に限っては牛の性別を調べる簡単な方法がある」という――。 ※本稿は、小関尚紀『大人の「牛肉」教養』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
オス牛とメス牛の肉質の違い
目の前に、美味しそうな二つの牛肉があるとします。
一つはオス牛の肉で、もう一つはメス牛の肉です。「好きなほうを焼いて食べていいよ!」と言われました。さて、あなたはどちらの肉を選びますか?
私なら迷わず、メス牛の肉を選んで食べます。牛肉を食べる上で、牛の性別は重要な要素になるからです。
人間の場合、男性と女性の体形には性差が見られますよね。男性は骨格と筋肉が発達しやすく、女性は脂肪がついて丸みを帯びやすくなります。
これは、牛にも同じことが言えます。つまり、オス牛は皮下脂肪が少なく、肉質が硬めになる一方で、メス牛は皮下脂肪が多く、肉質が極めて柔らかくなるのです。
さらに、この柔らかさの秘密は、筋肉の種類にもあります。
筋肉には「遅筋ちきん」と「速筋そっきん」の2種類がありますが、メス牛は筋線維が細かい遅筋の割合が多いことがわかっているのです。
・オス牛 → 皮下脂肪少ない/肉質硬め
・メス牛 → 皮下脂肪多い/肉質柔らかめ
オス牛は去勢されて脂肪をつきやすくさせている
先の例では、私は柔らかい肉が好みなのでメス牛を選びました。ほとんどの人が同様に柔らかい肉を好んでいるでしょう。そのため、一般的に「メス牛のほうがオス牛よりも美味しい」とされているのです。さらに、メス牛はオス牛よりも不飽和脂肪酸の含有量が多く、脂質の融点が低いので、あっさりと食べやすい特徴もあります。
このように言うと「じゃあ、オス牛の肉は市場に出回らないのか」と質問されることがあります。
じつは食用のオス牛は、生後すぐに去勢されることが多いのです。こうすることで脂肪がつきやすい体質にして、メス牛のようにきめ細かく、より柔らかい肉質を目指すことになります。
そして、オス牛(去勢牛)のほうがメス牛よりも体が大きく育つので、肉量が多く取れます。生産者にとっては1頭あたりの肉量を多く取れるほうが利益を上げやすいので、じつは市場で取引されている牛肉の多くは、オスの去勢牛なのです。
「去勢なんて残酷な……」と感じたかもしれません。しかし、この工夫があるからこそ、私たちは美味しくて柔らかいオス牛の肉を食卓で楽しめているのです。