187億円の税金で「ムダな船着場」をつくっただけ…国も、大阪府も、大阪市も沈黙する「船で行ける万博」の大誤算

187億円の税金で「ムダな船着場」をつくっただけ…国も、大阪府も、大阪市も沈黙する「船で行ける万博」の大誤算

目標「年間30万人」をこっそり削除する行政の無責任

「船で行ける万博」を掲げた大阪・関西万博。しかし、計187億円を投じて整備された航路は、定期船が就航することなく閉幕を迎えた。本当に万博は成功だったのか。フリーライターの宮武和多哉さんが、その明暗を取材した――。

「万博は成功」で済ませていいのか

構想当初から「船で行ける万博」と喧伝されていた大阪・関西万博は、まわりを海に囲まれた「夢洲ゆめしま」という立地を活かし、神戸・京都や大阪市内の各地から、渋滞しらずの船でスイスイとアクセスできる……はずだった。

半年経ったいま、どうだろうか? 開幕の2年前に検討されていた12航路のうち、就航できた5航路は「出る船が次々と満員御礼」にまで成長した。しかし、大半の航路は船の就航自体なし。中には、船着場と同時に計画した「年間30万人を集客する旅客船ターミナル」もろとも手付かず、といったケースもある。どうやら万博の船運は、場所によってくっきりと成功・失敗の事例が分かれているようだ。

なぜ、ここまで「“明”と“暗”」が分かれたのか。半年間にわたる万博が閉幕を迎えるいま、「万博の船運」を振り返っていく。

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【明】当初ガラガラも満席続きに

万博が閉幕しようとしている中、堺旧港・中之島・ユニバーサルシティ~夢洲(万博会場)航路を運営している「ユニバーサルクルーズ」の予約ページを見る限り、8月5日時点で最終日までほぼ全便が満席、予約できない状態となっている。

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堺航路をはじめ各航路は、すでに満席となっている(出典=ユニバーサルクルーズホームページより)

しかし、ユニバーサルクルーズによると、万博開幕当初は「利用率は軒並み1~2割。1人か2人しか乗っていない便も多い」状態であった。なぜ、打って変わって乗船客は激増したのか?

当初伸び悩んだ最大の理由は、電車だと数百円で済む区間で2800~3800円を要するという「高額な運賃」にあった。同社は7月に「他の交通機関に対抗するには値下げしかない」と決意の上で、最大7割の値下げに踏み切ったことで、利用者が一定数増加したという。

また運賃値下げに加え、万博協会より全旅客船利用者に特典が付与された。内容は「10~12時台のチケット保持者は、予約の1時間前から西ゲートの優先レーンを利用可能」というもの。

この頃にはすでに、午前9時台の万博チケットが入手困難になっており、船を利用して「優先入場利用証明書」をもらえば、まだ入手が容易であった10時台を購入して、9時台に会場入りできる。いわば、船の利用がファストパスのような扱いになったようなもので、各航路は「家から遠くても乗りに行く」(例:家が大阪市北部でもわざわざ堺市まで回り込んで船に乗る)人々が激増。「値下げ」「優先入場」効果が相まって、8月上旬ごろにはチケット売り切れ・満席が続くようになったという。

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2025.10.16

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