「廃棄品」が10g500円で飛ぶように売れる… 過疎地の農家の「拒絶」と向き合ったヨソモノ39歳女性の勝ち筋
「怒り」が原動力…米シリコンバレーも高評価で「世界販売」へ
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和歌山の山間にある、かつらぎ町。人口1万5000人ほどの過疎の町でできたグミが今、ネットで大人気だ。原材料は、以前は規格外サイズだからと廃棄されていた15種の果実。「砂糖や着色料、香料、保存料を一切使わないグミをわが子に与えたい」。そんな育児をする母親たちの思いを叶えた39歳の女性起業家が構想から4年半かけた商品化までの苦難の道を、フリーランスライターの野内菜々さんが現地取材した――。
10円玉約2枚分の分量で500円でもバンバン売れる理由
「果物の甘さがぎゅっと濃縮してる。甘いのも甘酸っぱいのもあって、一袋でいろいろ楽しめる。大人は一袋、一瞬でなくなります!」
「無添加なので赤ちゃんにも罪悪感なく食べさせられます」
和歌山の過疎地で、年間3トンもの廃棄フルーツを美味しくて付加価値の高いドライフルーツに生まれ変わらせた商品がある。「無添加こどもグミぃ〜。」(以下、グミ)だ。
固すぎず柔らかすぎない絶妙な食感を追求したこの商品は、1袋10g(10円玉約2枚の軽さ)で500円と安くはない。ところが、子育て世代から絶大な支持を集め、2025年3月には累計販売数12万袋を突破し、毎年120パーセント超のペースで売上を伸ばしてきた。
原料は和歌山産の規格外フルーツ。ポイントはゼラチンや着色料、香料はもちろん、砂糖や保存料も一切使わないこと。柿、いちじく、りんご、みかんなど、約15種類を一口大にカットし、絶妙な乾燥具合で仕上げている。
このグミが構想から商品化するまでに要した歳月は約4年半。ゼロから開発したのは、3児の母でもある猪原有紀子いのはらゆきこさん(39歳)だ。
関西地方の都会育ちだった猪原さんは、夫(大手通信会社の新規事業の創出組織)の仕事を機に大阪から和歌山へ移住。ある日、山に捨てられた大量の柿を見て、「これを使って子ども用のおやつを作ろう」と決意。2018年から試作と販売を始め、2022年に「株式会社やまやま」として法人化した。
「開発準備中は、地域の人たちとの価値観の違いから、なんども壁にぶつかりました」
地域住民と価値観の違いによって一人きりで抱え込んで袋小路に入ってしまうことが度々あり、やるせなさや悔しさを感じていたという。猪原さんはどうやって苦難を乗り越え、商品化と販売にこぎつけたのだろうか。