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共働きのご夫婦が医療費控除を受ける際、家族の医療費を夫婦で分けて申告するのか、あるいはどちらか一方にまとめて申告するのかで迷うことがあるかもしれません。今回の記事では、共働き夫婦が医療費控除を申告する際の「夫婦どちらにまとめるのが有利か」という判断基準や、確定申告に必要な書類の書き方についてご紹介します。
※この記事は、2025年11月10日に更新されたものです。
医療費控除とは
家族の状況などによって、医療費を多く払う年もあるでしょう。1年間に支払った医療費が基準額を超えるとき、管轄の税務署に確定申告をすることで、基準額を超えて支払った分の医療費が課税所得から控除され、税金の一部が還付されます。この制度を医療費控除といい、所得控除のうちのひとつです。
医療費控除の対象となる「医療費」とは?
医療費控除の控除対象となる費用の具体例は以下のとおりです。
- 病院で支払った診療費、治療費
- 入院費用
- 処方箋で購入した医薬品の費用
- あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術費用
- 助産師による分娩の介助費用
- 治療に必要な松葉杖や補聴器などの購入費用
- 介護保険の対象となる介護費用
- 通院にかかった交通費
一方、以下の費用は控除対象とならないため、注意が必要です。
- 予防接種や健康診断の費用
- 入院時の差額ベッド代
- 通院にかかったタクシー代
- 自家用車で通院した場合の駐車場代・ガソリン代
- ビタミン剤・サプリメントの費用
通院にかかった交通費の中でも、タクシー代やガソリン代など車に関連したものは対象外となるため注意が必要です。また、病気の予防や健康増進にかかる健康診断費用やサプリメント代も対象外となります。
医療費控除を受けられる条件
30代ママ
国税庁のホームページによると、医療費控除を受けられる条件は、自分にかかった医療費や生計を一にする配偶者や親族にかかった医療費であることとされています。また、1月1日から12月31日までの1年間に支払ったことも条件となるようなので、いつ支払った医療費なのかをしっかり確認する必要がありそうです。
対象となる医療費控除額
iStock.com/SARINYAPINNGAM
30代ママ
思いがけないトラブルで出産に医療費がかかってしまい、出産育児一時金では補填しきれませんでした。妊婦健診で自費で支払った金額や上の子どもの薬代などもあわせると控除を受けられる金額を超えそうだったので、医療費控除を受けようと思いました。
医療費控除はかかった医療費が全額控除・全額還付となるわけではありません。確定申告をする人のその年の「総所得金額等」に応じて、以下の計算式で求めた金額が所得控除の対象となります。
医療費控除額 = (実際に支払った医療費の合計額 - 保険金などで補填される金額の合計) - 基準額
【基準額について】
控除額の計算に用いる「基準額」は、確定申告をする人のその年の総所得金額等によって異なります。
総所得金額等が200万円以上の場合:基準額は10万円となります。
総所得金額等が200万円未満の場合:基準額は総所得金額等×5%となります。
「保険金などで補填される金額の合計」とは、加入している生命保険などから支払われる保険金・給付金などをいいます。なお、医療費控除の上限金額は200万円です。医療費控除は1年間に支払った医療費の合計額で計算するため、領収書などで医療費控除額を確認してみるといいかもしれません。
また、2017年1月1日からは、健康診断や予防接種など病気の予防のための取り組みを受けた個人が、ドラッグストアなどで購入した医薬品などに対して控除を受けられる「セルフメディケーション税制」というのも施行されているようです。
「セルフメディケーション税制」では、処方薬のうち、副作用が少なく安全性の高いものを市販するスイッチOTC医薬品も対象になるようです。スイッチOTC医薬品に該当するかどうか気になる場合は、購入の際に薬剤師などに確認してみましょう。
また、受けた治療や医薬品の費用が控除対象となるのかどうかが気になる場合は、国税庁のホームページを確認するか、病院や薬局の窓口などで直接問い合わせてみるとよいかもしれません。
【共働き夫婦の判断】医療費控除の申告はどちらにまとめる?
医療費控除を受ける場合、夫婦で分けて申告するのと、夫婦どちらかでまとめて申告するのとでは、どちらが有利になるのでしょうか。
夫婦どちらか「所得の高い方」にまとめるのが基本
所得税は、所得が高いほど高い税率が適用される超過累進課税という方法で課税されます。医療費控除は課税所得を減らす「所得控除」であるため、夫婦で年間所得の高い方(=高い税率が適用されている方)が確定申告で医療費控除を受けた方が、結果として還付される税金が多くなり、節税効果が高くなるようです。
40代ママ
私はパートの仕事をしていて所得が少ないために夫の扶養になっているので、医療費控除は夫婦合算して行っています。所得の高い夫にまとめて申告した方が、還付金が多いと聞いたのでそうしています。
育休や扶養などで所得が少ない場合は要注意
育休中で所得が少ない場合や、夫婦どちらかが扶養になっている場合は、所得が少ない方を避けて、所得が高い方にまとめて確定申告をすることが有利になるようです。控除の対象となる期間が定められているので、育休などで所得が変わった場合は、あらかじめ計算をして夫婦どちらにするかを決めるとよいかもしれません。
20代ママ
育休中に治療費がかかり医療費控除を受けようと思いました。私の所得が少なかったので、夫婦まとめて夫が確定申告することにしました。
夫婦で分けるケース
共働きでそれぞれが社会保険などに加入し、かつ夫婦それぞれが多額の医療費(例:視力回復手術、高額な歯科矯正など)を支払った結果、各自の医療費だけで控除の要件(10万円超など)を満たし、かつ個別の申告の方が有利になる場合は、別々に申告することもあります。
医療費控除に必要な書類と手続き
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医療費控除を受けるためには、会社員であっても確定申告が必要です。共働きで忙しいご夫婦がスムーズに手続きを進めるためのポイントをご紹介します。
必要な書類書類
確定申告書・・・税務署でもらうか、e-Tax(オンライン申告)で作成・提出が可能です。郵送やe-Taxなら、忙しい共働きのご夫婦も活用しやすいでしょう。
医療費控除の明細書・・・医療費や薬代などの領収書は添付せず、明細書に支払った金額を記入して提出します。領収書の枚数が多い場合は、国税庁のサイトでダウンロードできる「医療費集計フォーム」を利用すると便利です。
源泉徴収票の原本・・・給与所得のある方が確定申告をする際、申告金額を証明するために必要です。
医療費通知・・・医療保険者から交付された通知がある場合、これを添付することで明細書の記載を省略できるようです。大切に保管しましょう。
医療費控除の明細書の書き方
領収書の代わりに提出する明細書には、下記の5つの事項を記載する必要があります。
- 医療を受けた人の氏名
- 病院、薬局など支払先の名称
- 医療費の区分
- 支払った医療費の額
- 支払った医療費の額のうち生命保険や社会保険などで補填される金額
医療費控除は生計を一にした配偶者や親族が対象となるため、医療を受けた人の氏名を正しく記入しましょう。
領収書の保管について
医療費の領収書は提出不要ですが、確定申告期限の翌日から起算して5年間は、税務署から提示または提出を求められることがあるため、源泉徴収票などと一緒にまとめて保管しておくことが必要です。
申告期間
確定申告は1月から12月の所得などについて、翌年2月中旬~3月中旬までに書類提出をして申告する必要があります。
夫婦の所得を考えて医療費控除の申請をしよう
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共働き夫婦が医療費控除を申告する際は、原則として年間所得の高い方に家族全員分の医療費をまとめて申告することで、最も高い節税効果(還付金)を得られる可能性が高まります。
育休中や扶養になっているなど、所得状況が変わった場合は特に、夫婦で相談し、どちらが申告した方が有利になるのかをあらかじめ計算してみるとよいでしょう。
※記事内で使用している参照内容は、2018年11月19日時点で作成した記事になります。


























3月から子どもが歯科医院で歯の矯正治療を受けることになったので医療費控除を受けようと思いました。かぜなどで処方された薬代もあわせて控除を受けられると聞いたので、12月末までの医療費で申告しました。