教育熱心はどこまで?
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不安定な社会情勢やSNSなどを通じて得る過剰な教育情報によって、子どもの教育に奔走し、過干渉な子育てをする親が増加しています。行き過ぎた「教育熱心」が及ぼす危険性とは?そして子どもを疲弊させないために、親がどうあるべきか、各専門家に取材しました。
2023.08.10
男の子の育て方、女の子の育て方。平等に育てることが注目されがちだけれど、やはり男の子と女の子にはそれぞれ生まれながらの特徴があると感じる人も多いのではないでしょうか。脳と人口知能を研究する黒川伊保子さんが、家族がもっと楽しくなるような「男性脳・女性脳をいかしたコミュニケーション」をテーマに、全5回にわたりKIDSNA STYLE読者のお悩みに答えます。
黒川さん:小学2年生の男の子とのことですが、男性脳の視線は『外』に向いているので、目標になるターゲットが不可欠です。ロールモデル(憧れの選手やアーティスト)、理想の造形物や「母親を幸せにする」「地球を救う」など、誰もが認める最終ゴールを決めることが大事です。
だから男の子は、大谷翔平選手に憧れて野球を始めたり、精巧なロボットに憧れてプログラミングを始めたりします。そして、クールなアイテム(道具や賞、段位)を与えられると、モチベーションが上がります。日本の格闘技に昇段試験があり段位によって帯色が違うのは、長続きさせる秘訣と言っていいと思います。
黒川さん:一方で女の子の場合、女性脳の視線は『自分』に向いているので『素敵な自分』をイメージできるかどうかが重要です。また、共感しあえる仲間や、気持ちをわかってくれる指導者が不可欠です。
女の子は、衣装にうっとりしてバレエを始めたりしますよね。それはいわゆる女の子らしいことだけに限らず、空手や数学ができるクールな自分にうっとりする女子もいます。いずれにしても『素敵な自分』が好きなんですね。共に泣いたり笑ったりできる仲間がいれば、長続きします。
黒川さん:ただ男女ともに言えることは、脳が「自然に出逢う」ことが大事だということ。与えてあげられるものならいくらでも与えてあげればいいし、やりたくない時は無理に探さなくてもいいと思います。相談者さんの息子さんも、今はたまたまやりたいことに出会っていないだけかもしれません。
ショパンコンクールで入賞したロシアのピアニストに「どういうきっかけでピアノを始めたの?」と尋ねたことがあります。彼の両親はプロの演奏家で、兄と姉には幼い頃から楽器を教えこんだのに、末っ子の彼には音楽家以外の道を進ませようと、いっさい楽器に触れさせなかったのだそう。
そのため、兄弟のなかで彼だけが自ら望んでピアノに手を伸ばし、自分の楽しみのためだけに弾き、そして最高のピアニストになった。この話は、脳科学的に真理を突いています。脳が自然に出逢うこと、自ら望んで触れること。それが、その脳に必要なものに最高のタイミングで出逢えるコツなんです。
黒川さん:とはいえ、親がしないことを子どもに与えるには習い事しかありません。だから、習い事もいいと思いますよ。我が家もピアノを習わせたりしました。ただし、強要しないこと。嫌がったり飽きたりするようなら、さっさと止めて次に行けばいい。
そして、望めばまた元の習い事に戻ってもいいのです。子どもの脳にはタイミングもありますし。一度始めたらやり抜く、みたいな根性論は脳の発達を妨げます。受験に挑戦するとしても根詰めずに、軽やかな遊び心をもってできたら素敵ですね。
ーー黒川さんが「男性脳・女性脳をいかしたコミュニケーション」をテーマに、KIDSNA STYLE読者のお悩みに回答いただく本連載。ぜひ他の回もご覧ください!
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小学2年生の息子には習い事をやらせたいのですが、なにもやりたがらない息子にモヤモヤしてしまいます。また、なにか始めたとして続けられるかも心配です。