近くて小さなゴール、遠くて大きなゴール。やる気が出るのはどっち?【男性脳と女性脳#2】

近くて小さなゴール、遠くて大きなゴール。やる気が出るのはどっち?【男性脳と女性脳#2】

男の子の育て方、女の子の育て方。平等に育てることが注目されがちだけれど、やはり男の子と女の子にはそれぞれ生まれながらの特徴があると感じる人も多いのではないでしょうか。脳と人口知能を研究する黒川伊保子さんが、家族がもっと楽しくなるような「男性脳・女性脳をいかしたコミュニケーション」をテーマに、全5回にわたりKIDSNA STYLE読者のお悩みに答えます。

スモールステップがよいと聞くけど本当?ゴール設定の仕方は?

一年生男の子のママ
一年生男の子のママ

今年、息子が小学校にあがりましたが勉強に対するやる気があまりないようです。勉強のモチベーションはどのように作っていったらよいのでしょうか? 子育てではよくスモールステップが大事だと聞きますが、次から次に目標が高くなると、ついていけるのか心配です。

黒川さんの回答:男の子は遠くて大きなゴール 女の子は近くて小さなゴールを

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黒川さん:やる気を発揮する場面や、やる気を引き起こす方法は男女で大きな違いがあります。質問者のお母さんは女性脳を持つはずなので、ゴールや目標を決めるとき、近くて小さいほうがラクな気がしたり、ゴールが遠すぎるといつまでたっても辿り着けない気がしてやる気がなくなってしまうと感じるのではないでしょうか。

女性脳は遠く大きなゴールに向かうのが苦手な一方で、プロセス自体を無邪気に楽しむことができます。「テスト」「遠足」「運動会」など、いま目の前にあることに夢中になっているうちに時が過ぎていくほどに。

大地震などの非常事態があったとき、先が見えない状況でもその日のうちに精力的に動きだしたのが女性だったと言われることがあります。町が壊滅しても「とにかく今日の夕飯を」と動き出せるのが女性脳の素晴らしいところ。

一方で、ゴール指向で目的意識が強い脳を持つ男の子の子育ては、遠くに大きなゴールや目標を置くことがとても大切です。女性脳とは正反対で、目標が遠く高いほど今をラクに過ごせるのが男性脳。

※写真はイメージ(iStock.com/ImagineGolf)
※写真はイメージ(iStock.com/ImagineGolf)

黒川さん:近くに簡単なゴールを設定してしまうと、ゴールだと思っていた場所が通過点に過ぎないと知ったとき、男性脳は疲弊してしまいます。まずは、遠い憧れの最終ゴールを設定すること。そして、それとは別に、通過点としての細かいゴールも用意してあげます。通過点と知ってのスモールステップなら、男の子もモチベーションを下げずに頑張れます。

ーー遠くて大きいゴールのほうがラクだと感じるというのは、多くの女性には知らない感覚かもしれませんね。

黒川さん:そうですよね。うちの息子が掛け算の九九を習ったときのエピソードがあります。1の段、2の段が言えるようになってホッとしている息子に「じゃあ次は3の段だね」と言ったら「え、ここがゴールじゃないの」と、がっくりと落ち込んでしまったことがありました。

※写真はイメージ(iStock.com/Wavebreakmedia)
※写真はイメージ(iStock.com/Wavebreakmedia)

黒川さん:だから私は「掛け算は9の段まであるし、それが終われば割り算を習うの。その次は分数や因数分解、ベクトル、微分積分。あなたが理系の大学院まで行くとしたら、17年間あなたは算数と付き合うのよ」と伝えました。

当時の息子には、微分積分なんて言われてもなんのことやらわからなかったと思いますが、「九九なんて、はるか遠い道のりのほんの一部にすぎない」ことは伝わったようでした。その後、数学に関しては「まだやるの」「なんでやるの」などという言葉は聞いたことがありません。

大企業の取締役フロアが立派なのも、偉人の銅像を建てるのも、男性脳に遠い目標を見せるため。男性脳にはロールモデル(憧れの人)が不可欠なんです。「大谷翔平みたいなすごい選手になる」といったように、ビッグな目標を掲げることは本当に大切。

小さくて近いゴールがいい女性脳。大きくて遠いゴールがいい男性脳。正反対であることを知ると、子どもの成長の過程がもっと楽しくなるかもしれませんね。


ーー今後も「男性脳・女性脳をいかしたコミュニケーション」をテーマに、黒川さんがKIDSNA STYLE読者のお悩みに回答します!次回のテーマはきょうだいの育て方です。

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Profile

黒川 伊保子

黒川 伊保子

株式会社 感性リサーチ 代表取締役社長 人工知能研究者、随筆家、日本ネーミング協会理事 1959年、長野県生まれ、栃木県育ち。1983年奈良女子大学 理学部 物理学科卒。 ヒトと人工知能の対話研究の立場から、コミュニケーション・サイエンスの新領域を拓いた、感性研究の第一人者。脳の気分を読み解くスペシャリスト(感性アナリスト)である。コンピュータメーカーにてAI開発に携わり、男女の感性の違いや、ことばの発音が脳にもたらす効果に気づき、コミュニケーション・サイエンスの新領域を拓く。 2003年、(株)感性リサーチを設立、脳科学の知見をマーケティングに活かすコンサルタントとして現在に至る。特に、男女脳論とネーミングの領域では異色の存在となり、大塚製薬のSoyJoyをはじめ多くの商品名に貢献。人間関係のイライラやモヤモヤに〝目からウロコ〟の解決策をもたらす著作も多く、『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』をはじめとするトリセツシリーズは大ヒットとなり、累計100万部を突破している。

2023.07.20

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