仲良く会話ができる家族で居続けるためには?【男性脳と女性脳#4】

仲良く会話ができる家族で居続けるためには?【男性脳と女性脳#4】

男の子の育て方、女の子の育て方。平等に育てることが注目されがちだけれど、やはり男の子と女の子にはそれぞれ生まれながらの特徴があると感じる人も多いのではないでしょうか。脳と人口知能を研究する黒川伊保子さんが、家族がもっと楽しくなるような「男性脳・女性脳をいかしたコミュニケーション」をテーマに、全5回にわたりKIDSNA STYLE読者のお悩みに答えます。

子どもが大きくなるにつれ、問い詰めるような会話が増えてしまいました

小学生の女の子のママ
小学生の女の子のママ

夕食時など家族で顔を合わせるとき、楽しく会話をしたいのに、日々時間に追われているので「宿題やったの?」「なんでまだやってないの?」など問い詰めるようなことばかり言ってしまい、雰囲気を悪くしてしまいます。家族が仲良くいられる会話の秘訣を教えてほしいです。

黒川さんの回答:5W1Hの質問はNG。「どうして」を「どうしたの」に変換

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黒川さん:家族の対話には2種類あり、「心の対話」と「問題解決の対話」です。心の対話とは、気付いたことや、感情の共有から始まり、共感で紡いで、新たな気づきや安心感で着地する会話。問題解決の対話とはゴール設定で始まり、問題点の指摘をし合って、解決で着地する会話。

もちろん問題解決の会話も必要ですが、家族の仲良しでいられるためには心の対話が不可欠です。

※写真はイメージ(iStock.com/kohei_hara)
※写真はイメージ(iStock.com/kohei_hara)

黒川さん:「宿題やったの?」「学校どう?」などの5W1Hの質問はまさに問題解決の対話で、親は単純に聞いていたり会話のきっかけとして質問してみたケースもあるかもしれませんが、いきなりの5W1Hの質問は「なにか責められてる!?」と家族の気持ちを尖らせるゴングのようなものです。

親がこのような会話をついしてしまうのは、幼い命を守る癖が抜けないためです。ネガティブなことにいち早く気づいて、それを速攻確認する。それが自己管理のできない幼い命を救ういちばんの方法だったから。

「この泣き方っておむつ?ミルク?」「転ばないかしら?」「喉に詰まらないかな?」そうやってちょっとしたネガティブな気づきを重ねて、小さい子を無事に育ててきたでしょう。その癖が抜けなくて、「宿題やったの?」「学校どう?」なんて聞いちゃうんですよね。

でもこれって、相手の自己管理能力をまったく認めていない発言。たとえて言えば、家に帰ってきた夫が「めしできてるのか」「今日、何してた?」と尋ねたのと一緒ですからね。

これを繰り返す親に育てられたら、自ら行動を起こさない「指示待ち人間」になってしまったり、反発して自分を信頼しようとしない親にうんざりしたり。

※写真はイメージ(iStock.com/takasuu)
※写真はイメージ(iStock.com/takasuu)

黒川さん:特に共感を大切にする女の子は、5W1Hの会話に敏感で「責められてる」と感じがちなので、より気を付けないといけません。

とりわけお父さんは、子どもが大きくなってくるとなんて話しかけていいかわからないという人も少なくありませんが、「今日会社でこんなことがあってさ……。」と自分の話を呼び水として、何気ない会話を始めてみるとよいでしょう。

一方で男の子との会話で気を付けたいことは、結論から話すこと。ゴール指向の男の子にとっては、会話のゴールも必要なんです。ゴールが見えずにダラダラ話されると、もはやモスキート音にしか聞こえていません。

※写真はイメージ(iStock.com/Stígur Már Karlsson /Heimsmyndir)
※写真はイメージ(iStock.com/Stígur Már Karlsson /Heimsmyndir)

黒川さん:たとえば「学校からのプリントは帰宅後すぐに出してほしい」という話をしたいなら、それだけにすべき。「こないだ遠足のプリントがランドセルの底でぐしゃぐしゃになっていたでしょう?去年もさぁ......」などと話したあとで本題に入っても、男の子にはもう届きません。

男女ともに使ってほしいテクニックは「どうして宿題やらないの?」を「宿題やってないけど、どうしたの?」に変換する方法。「どうしてやらないの?」には怠慢さを責められているニュアンスがあるけれど、「どうしたの?」に変えるだけで、なんとかできないかいっしょに考えているような優しさが含まれているように感じます。

「どうして宿題やらないの?」と聞いて「忘れちゃうんだよ」と返されたら腹が立つけど、「宿題やっていないけど、どうしたの?」という質問に「忘れちゃうんだよ」と返されたら、「じゃあどうしたら忘れないかな」と建設的な会話に持ち込むことができる気がしませんか?


ーー今後も「男性脳・女性脳をいかしたコミュニケーション」をテーマに、黒川さんがKIDSNA STYLE読者のお悩みに回答します!次回のテーマは習い事について。

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Profile

黒川 伊保子

黒川 伊保子

株式会社 感性リサーチ 代表取締役社長 人工知能研究者、随筆家、日本ネーミング協会理事 1959年、長野県生まれ、栃木県育ち。1983年奈良女子大学 理学部 物理学科卒。 ヒトと人工知能の対話研究の立場から、コミュニケーション・サイエンスの新領域を拓いた、感性研究の第一人者。脳の気分を読み解くスペシャリスト(感性アナリスト)である。コンピュータメーカーにてAI開発に携わり、男女の感性の違いや、ことばの発音が脳にもたらす効果に気づき、コミュニケーション・サイエンスの新領域を拓く。 2003年、(株)感性リサーチを設立、脳科学の知見をマーケティングに活かすコンサルタントとして現在に至る。特に、男女脳論とネーミングの領域では異色の存在となり、大塚製薬のSoyJoyをはじめ多くの商品名に貢献。人間関係のイライラやモヤモヤに〝目からウロコ〟の解決策をもたらす著作も多く、『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』をはじめとするトリセツシリーズは大ヒットとなり、累計100万部を突破している。

2023.08.03

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