KIDSNA編集部の連載企画『天才の育て方』。 #04は大澤正彦にインタビュー。「ドラえもんを作る」夢を着々と実現へと近づけている彼のパーソナリティはどのようにして育まれたのか、後編では家族との関わりや彼自身の特長からそのルーツを探る。
ブレない夢を持ち続けた結果、あらゆる活動が夢へと繋がっていく。その根底にあるのは、やると決めたらやりきる信念と、ためらいなく実行するエネルギーだろう。
これらはどのように育まれてきたか、幼少期からのご両親との関わりについて聞いた。
「両親は何事においても、まず『イエス』から入ります。やりたいと言えば『ダメと言ってもあなたはやるでしょう。やることは良しとします。ただ危険なことはしないでね』という感じですね。
心配しながらも良い意味で諦めているから、やりたいことを止められたことはないです」
ーー幼少期、大澤さんが「やりたい」と言っていたこととは?
「妹が習っていたピアノの先生が美人という動機でピアノをはじめたり、カードゲームがやりたくて英会話教室に通ったり(笑)。ピアノの先生の繋がりで子役をやっていたこともあります。
興味を持ったら絶対やりたい、やると決めたら必ずやる、という子どもだったようで、小さい頃の習い事も高校や大学の進路も、全て自分で決めました。親から何かを強制されたことはないです」
ーー自分の意志でやることを選び挑戦してきたたことが、今の行動力や決断力に繋がっているのかもれませんね。
「やりたいと言って止められた経験がないことは、大きいと思っています。やりたいことはやるものとして育ったので、やりたいと思った瞬間身体が動いていることが多いですね」
ーー幼い頃から、ご家族の間では頻繁にコミュニケーションを取られていましたか?
「取っていたと思います。妹も含めて家族みんなで何でも言い合っていました」
ーーご両親と意見が合わなかったり、ぶつかったことは?
「あります。とことん喧嘩していました。今はないですけど、小学校の頃は自分も絶対譲らないし、両親も頑固だったので(笑)。
父は寡黙な人で何を考えているのか、どんな人なのかもわからず中学生の頃は仲が悪かったです。でも高校生の頃に『風力発電を作りたい』と言い出して。父の仕事とは全く関係がないし、その発想が予想外すぎて一気に父を好きになりました。
その後父が工作を始めたと思ったら風力発電で特許を取っていて。この人尊敬できる、とドキドキしましたね。この有言実行する力を見習うのだと思いました」
ーー工作好きは受け継がれているのですね。高校や大学を首席で卒業したり、孫正義育英財団に入ったとき、ご両親の反応はいかがでしたか?
「両親はとても不器用なんです。だから大抵のことは『よかったね、さすがです』とメールで一言返されるのが定番ですね(笑)。でも、リアクションが薄くてもすごく喜んでくれていると感じています。なので、これは喜んでくれそうだと思うことはどんどん伝えています」
さまざまな体験を自分の思うように実行しつつも、全ての過程が夢を実現するために用意されていたかのように、彼の経験は筋が通っているように感じる。
重ねてきた経験から繋がった今、そしてその先に、彼はどのような想いを抱いているのだろうか。
ーーAIや人工知能の研究が進みロボットとの意思疎通が可能になった場合、ロボットにはどのような活躍を期待しますか?
「さまざまあると思いますが、子どもの心に寄り添う存在になれたら、本当にやる意味があると思っています。
親とのアタッチメント形成がうまくできていない子どもにとって、別の人とのアタッチメントでも効果があるとわかっているのなら、その相手はロボットでもいいのでは?と考えることもありますね」
ーーまさにドラえもんのように、相手のことを想い話せたり行動ができるロボットがいたら、楽しいことも増えそうですね。
「今過ごしている当たり前の生活の中で、少し寂しい瞬間を埋めてくれたり、みんなで遊んでいる中にドラえもんがいてさらに楽しくなったり。
ドラえもんがいることによってガラッと変わってしまう世界は自分の考えとは違っていて、少しプラスされる幸せを作りたい、というのが自分のイメージですね」
ーー人工知能について「怖い」という感覚を持つ人もいると思いますが、どう考えますか?
「人工知能は『人間を超えた』とか『人の仕事を奪う』と言われていますが、人工知能の本質を知らないから怖く感じている、というのが現状です。解決策はただ一つ、自分が人工知能と付き合って知るしかない。
人工知能と呼ばれるものと一緒にいると楽しい、という現体験をすることでしか、なんとなく怖いという人工知能のイメージはなくならないと思います。
人工知能とポジティブに向き合うという意味においても、ドラえもんが貢献ができたら、それは素晴らしいことだと思います」
孫正義育英財団に所属し、講演会で登壇したり取材を受ける機会もある彼は「みんなが押し上げてくれたから自分が今ここにいる」と語る。
彼自身はその才能をどのように捉えているのだろうか。
ーー周りに「この人は天才だな」と感じる人はいますか?
「妹、、ですね。勉強はできないのですが、面白いんですよね。『その発想はなかったな』ということを毎回会うたびに感じます。妹の話は笑いが止まらないくらい面白くて、天才だな!と思いますね。
極論を言えば、みんなが何かしらの天才だと思っています。
世の中にある既存の価値観で測れば『天才』って限られた人だけかもしれませんが、『この人のAとBとCとDの特徴を組み合わせたら、上に出る人はいないよね』という風に人をみていたらみんなが天才的に思えるし、そう感じています」
ーー天才というと頭がいい人、何かに非常に長けている人と考えがちですが、大澤さんの定義は、そういった考えとはかけ離れているのですね。
「そうかもしれませんね。自分の周りには頭が良い人たちがたくさんいますが、彼らは頭が良いだけでなく、意思のある活動をしていたり、思想を持っているというところに価値を感じるし、そこを好きになっているのだと思います。頭が良いことが彼らの最大の価値だったら、みんな一緒になっちゃいますよね」
ーー大澤さんはなぜ天才なのだと感じていますか?
「自分は『ドラえもんを作る』ためにロボットを作り、プログラムを書く、心理学も勉強したし、コミュニティを作って人を集め、人をとことん好きになる。これだけの軸を揃えたら自分は一番になれますか?と尋ねた時、認めてくれる人はきっとたくさんいるだろうと思います。
『自分らしさ』という軸を立てた時に、誰しもが天才になれるのではないでしょうか」
取材中、専門分野をわかりやすく的確に話す丁寧さと、家族や友人とのエピソードを楽しそうに話す彼は気の良い青年だった。夢は実現するという信念を持ち続け、周りへの配慮を忘れない彼の人柄こそが、彼が持つ一番の才能のように感じた。
<取材・執筆・撮影>KIDSNA編集部
2018年08月24日
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鍵本 聡
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予測不能な時代を生き抜くために必要な「〇〇力」。前回は、やり抜く力(グリット力)とは後から伸びしてくる力であること、後天的に鍛えることができる力であることを、脳科学者の細田千尋先生に教えてもらった。では、子どものやり抜く力を鍛えるために親はどのようなコミュニケーションを取ったらよいのだろうか。
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2022年のバズワード「メタバース」。今後5~10年後に確実に私たちの生活の一部となっていくものであり、未来を生きる子どもたちを育てるうえで無関係ではいられない。今回はメタバースが子どもたちの教育にどのような変化をもたらすのか、さらには未来の働き方について探っていく。
予測不能な時代を生き抜くために必要な「〇〇力」。前回はどんな子どももワクワクする力を持っていること、ゴールや目的に捉われずに自由に行動することが好奇心を引き出すことを、脳神経科学者の青砥瑞人先生に教えてもらった。では、子どもがワクワクに対し夢中になって突き進むために、親はどのように接するのがよいのか
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