ひらがなを覚えたての子どもが書く文字を見てみると、左右が逆の鏡文字になっていることは、めずらしくありません。子どもの書く文字が鏡文字になってしまうのには、どのような原因があるのでしょうか。また子どもに対しては、どのように対応するのがよいのでしょうか。ママたちの体験談とあわせて紹介します。
ひらがなやカタカナを覚えたばかりの子どもの書く文字が、鏡に映したように左右反転している様子を見たことがありませんか。子どもが字を書けるようになり、その成長が嬉しい一方で、大体いつも同じ字が鏡文字になっていて気になるというママやパパもいるのではないでしょうか。
実は鏡文字の現象は世界共通で、英語圏の子どもでは「b」が「d」になってしまったり、「p」が「q」になってしまうこともあるようです。なぜ子どもは鏡文字を書いてしまうのか。また鏡文字は直さないといけないのか。直すにはどのような方法があるのか。ママ・パパが気になっていることをまとめてみました。
子どもの書く文字が鏡文字になりやすい原因についての明確な研究結果は未だなく、さまざまな要因が関係しているといわれています。
子どもにとって、上下の区別は分かりやすいものの、左右の区別は難しいものです。「右はお箸を持つほうの手」と認識している子どもも多いですが、右と左を瞬時に判断できるようになるにはある程度の年数を要します。そのために文字を書くときにも左右を把握できずに、反対にしてしまうことが多いようです。
人が文字を認識するとき、線や曲線、点などの「構成要素」から先に把握し、そのあと左右の位置関係を認識するといわれています。例えばアルファベットを覚えたときに「b」と「d」を混同しがちなのは、構成要素を「半円に縦棒がくっついている」と認識はしているけれど、左右の関係までは捉えられていないことが原因です。
特に、文字そのものに慣れていない子どもは、このように大まかに文字の構成を捉える傾向が強いため、左右が反転してしまうことにもつながっています。
人は右脳で感性や感覚を、左脳で言語など論理的な情報を司っていると言われています。しかし、小さい子どもは右脳に比べ左脳が未発達です。そのため、目から入った文字の情報がイメージとして右脳に伝わるものの、左脳で論理的に処理することができずに、結果として鏡文字となってしまうことがあるようです。
利き手が左手の場合、鏡文字になりやすいと言われています。実際に「あ・う・ち・す・ろ・る」などを左手で書いてみるとわかりますが、多くの文字は時計回りに流れて書くために、左手で書くと書きにくさを感じるのです。その書きにくさから、左利きの子どもは特に鏡文字になりやすい傾向があります。
子どもの書く文字が鏡文字であることに気が付いたら、ママ・パパはどうするのがよいでしょうか。
自然とひらがなが目に入る環境を整えてあげることは、鏡文字を直すことにつながります。子ども部屋やトイレの壁、お風呂の壁などに貼ってみてはいかがでしょうか。常にひらがなが視界に入ってくることで、自然と頭の中に正しい文字をインプットしていくことができます。
子どもが左利きの場合は、右手でも文字が書けるようにしてあげることで、自然と鏡文字が直る場合もあるようです。左利きの子どもを右利きに矯正するかどうかは家庭の方針によりますが、右手での文字の書き方を教えてあげることが、鏡文字を直すひとつの手段にもなります。
また、左利きの人に通じやすい表現方法を使うことで、正しい文字を理解してくれることがあります。例えば「ー」と横棒を引く場合に、右利きの人は左から右に「線を引く」という感覚があります。しかし、左利きの人にとっては、左から右に「線を押す」と伝える方が、正しい書き方をイメージしやすいのです。
大人になってから意図的に鏡文字を書こうとすると、どうなるでしょう。実際にやってみると意外と難しく、頭の体操をしている感覚になることが分かります。
このことを活用して、脳トレとして鏡文字を取り入れている高齢者施設があり、また鏡文字を書くトレーニングをするような書籍も発売されています。大人がやってもクイズ感覚で楽しむことができますよ。
芸術家であり工学や解剖学などさまざまな分野で偉大な功績を残したレオナルド・ダ・ヴィンチには、自身のノートに書き記していた文字はほとんどが鏡文字だったという逸話があります。
なぜレオナルド・ダ・ヴィンチは鏡文字が使っていたのか理由については諸説あり、左利きだったため鏡文字が書きやすかったのかもしれないという説や、他人に見られたくないためにあえて鏡文字を使っていたという説があるようです。
未就学児から小学生の子どもを持つママからは、鏡文字に関してこのような体験談を聞くことができました。
子どもが鏡文字を書いていても、いつかは直ることなのであまり気にしていない、というママの声が多いのが印象的でした。しかしなかには、左利きのために文字が書きづらく、鏡文字の原因になっていることもあるかもしれません。子どもの様子をしっかりと見て、どのようにしたら文字が書きやすくなるのか、アドバイスしてあげられるとよいでしょう。
眞々田容子(クローバーこどもクリニック)
台東区蔵前の小児科クローバーこどもクリニック院長。信州大学医学部卒業。日本小児科学会専門医、日本アレルギー学会専門医。ホリスティック医学協会会員。
症状だけを診ていくのではなく、患者さんの心身全体の状態をみていく”心と身体をつなげる”医療をしています。
お母さんの子育ての不安が少なくなるよう、診療内でお話しをしっかり聴いていきます。
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2021年07月25日
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