こちらの記事も読まれています
成果を求めないことが才能を伸ばす。子どもの才能を見つける2つの方法
Profile
教育評論家
教育評論家
親野智可等(おやの・ちから)/教育評論家。本名、杉山桂一。長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。『子育て365日』『反抗期まるごと解決BOOK』などベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。Twitter、Instagram、YouTube、Blog、メルマガなどで発信中。オンライン講演をはじめとして、全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。
子どもに夢中になれることや好きなことを見つけてもらいたいと思う親は多いと思います。のびのびと子どもの才能を伸ばしていくことができるのは、どのような環境なのでしょうか。公立小学校で23年間以上たくさんの親子に接してきた教育評論家の親野智可等先生に話を聞きました。
子どもの才能を見つける方法
ーー子どもの才能や得意なことをできるだけ伸ばしたいと思うのは、親として自然なことだと思います。子どもにどのような才能があるか見つける方法はあるのでしょうか。
親野先生:子どもの才能を見つける方法は2つあります。
ひとつは、とにかく子どもを観察すること。たとえば、子ども向けのテレビや動画を見て一緒に歌ったり踊ったりする子もいますが、これを当たり前のことだとそのまま流さずに、じっくり観察してみてください。
子どもを普段からよく見ていたら、その子の得意なこと、好きなことの方向性が見えてきます。その中に才能を発揮できるものが見つかるかもしれません。
もし歌ったり踊ったりするのが好きそうなら、もっと動画を見せる、リトミックなどの習い事の体験教室に参加してみるなど、子どもの好きなことをさらに深めるきっかけを与えることで思わぬ才能が見つかることもあります。
親野先生:また、子どもにさまざまなことを「お試し」で体験させてみると、才能が見つかることもあります。
将棋で有名な藤井聡太さんも、たまたま5歳の時に祖母に初心者向けの将棋盤をもらったことがきっかけだったといいます。
対面でもネットでもかまいません。親御さんが情報網を張り巡らせ、子どもが興味を持ちそうなものを探し、勧めてみて、子どもが「やってみる」と反応したものを体験させてみましょう。
そのときに「最低3ヶ月はやらせなければ」「すぐにやめさせたらやめ癖がついてしまう」などと考える必要はありません。あくまで「お試し」なので、深く考えず、とにかく体験させることが大切です。思わぬ才能が見つかるきっかけになるかもしれません。
とにかく大事なのは、親御さんがやらせたいことよりも子ども本人がやりたがることや楽しくできることを優先することです。「子どものためになる」「将来役に立つ」などの親御さんの思い込みを優先して、子ども本人が乗り気でないことをやらせるのはやめたほうがよいでしょう。
子どもの才能を伸ばすために
ーー子どもが才能をのびのびと開花させるのはどのような環境なのでしょうか。親としてできることについて教えてください。
親野先生:親御さんが子どもの「監督」ではなく「応援団」に徹することが重要です。
あれこれ指示を出したり、否定的な声かけをするのはNGです。子どもに共感を持って接し、肯定的な言葉をかけることが子どもの才能を伸ばすことにつながります。
子どもが才能を伸ばす親の特徴
親野先生:子どもが取り組んでいることに対して、昇級や合格などの「成果」を求めない親御さんの言動は子どもに伝わります。逆に「子どもは続けたがるけど、まったく上達しないからこの習い事が無駄なのかも…」と考える親御さんの下では、子どもの才能は伸びません。
大切なのは、子どもの「やりたい」という気持ちです。
親御さんの考え方を押し付けないことも大切です。もちろん親として、経験に基づいたアドバイスをしたいと感じることもあるでしょう。子どもにそれを話してあげることはよいのですが、考え方を押し付けないようにしてください。
どうするかの最終決定は子どもの意思を尊重すべきです。
親が意識すべきこと
親野先生:「好きなこと=才能ではない」ということは、親御さんが意識しておくとよいでしょう。傾向として好きなことと才能が一致している場合が多いですが、必ずしもイコールではありません。
過去にこんな子がいました。小さな頃から走るのが早くて小学生の時も陸上大会などで活躍し、中学生になっても市の大会で優勝していた子が、高校生になって「もう陸上はやりたくない。音楽をやりたい」と言い出したそうです。
親や先生は「才能があるのにもったいない」と止めましたが、その子の話をよく聞いてみると、実は、走ることが好きではなかったらしいのです。ただそれが自分でもわからず、周囲に言われるままに陸上を続けていたそうです。
最終的に、もし音楽の才能がなくても、好きなことならそれでよいと本人も周囲も納得し、その子は音楽系の部活に入部し、楽しく取り組んでいるようです。
子どもがやりたくないことを強制してやらせても、一生懸命取り組むことができず、むしろ強制する親御さんに対する不信感を抱きかねません。
また、子どもに自分の人生を自分でコントロールできないというマインドがセットされてしまい、自分に対する無力感や芽生え、自己肯定感が下がってしまうこともあります。
「やめたい」への対処法
親野先生:どんなに才能があること、好きなことでも、子どもが「やめたい」と言い出すこともあるでしょう。
そんな時、親御さんは「もう少しがんばってみたら」と声かけをしがちですが、それよりもまずは子どもの話をよく聞いてあげてみてはいかがでしょうか。
「それは大変だね」「そんなことがあったのね」と共感しながら聞くことで、子どもはたくさん話してくれると思います。そうすると、話の中から子どもが「やめたい」と言い出した理由が見えてきます。
たとえばそれがピアノの習い事をやめたいと言い出した子どもなら、ピアノ自体が嫌になったのではなく、先生との相性がよくないという理由かもしれません。その場合は教室を変えたらよいのです。
ピアノも先生も好きだけど、同じ時間帯に攻撃的な子がいるなどお友だちに原因があるなら、曜日を変えてもらうことを考えてみてはいかがでしょうか。
ただ、子どもの話を聞いた上で、ピアノ自体が嫌になった、他にやりたいことがあるという理由なら、その時はやめるという選択をするとよいでしょう。
もし、ピアノも大好きで才能的にも性格的にも向いているはずなのに、ただ、今ちょっとした壁にぶつかっているという状況なら、乗り越えさせるためのサポートをしてあげてください。
このように、まずは「やめたい」と言い出した子どもの状況を見極め、それぞれの対処法を考えるためには、子どもをよく観察し、共感を持って話を聞くことが大切です。
やりたいという気持ちが才能を伸ばす
親野先生:子どもがやりたいという気持ちを持って取り組むことなら、才能も伸びますし、自己肯定感や親子の信頼関係にもつながります。
夢中になれること、好きなことなら、一生懸命覚えようとして記憶力も強化され、それについて人に伝えたいという気持ちからコミュニケ―ション力も高まるでしょう。
子どものやりたいという気持ちを親御さんが応援してあげることで、子どもは才能をぐんぐん伸ばしていけると思います。