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子どもが喜んで「きょうだい喧嘩」をやめる意外な方法
家族がいっしょに過ごす時間が長くなる今の時期、子どもやパートナーに対してつい感情的になってしまう。そんな声がママたちから聞こえてきます。KIDSNA読者より寄せられたお悩みに、精神科医の水島広子先生に答えていただきました。
子どもは「手放しの天才」。基本は見守る
まず相談者さんに必要なのは、「きょうだい喧嘩は当たり前」という認識です。
きょうだいは絶対にケンカをするものなので、それを完璧主義的にゼロにしようとするとかえって歪みが生じます。ケンカしながら人とのかかわり方を学んでいくものだと考えて、ある程度は子どもの仕事だと思ったほうがいいですね。
また、子どもは「手放しの天才」です。
どれほど怒っても根に持ったりせず、相手をすぐにゆるします。これは子どもの「“いま”に集中する力」に由来するといえるでしょう。一般的には、親が心配するほど、子どもはきょうだい間のケンカについて気にしていないのです。
ただ、安全上の理由などから、どうしてもすぐにやめさせたい、というときには「くすぐり」をおすすめします。手をあげる親も少なくありませんが、それだと子どもは恐怖を感じ、結果的に自己肯定感の低下につながります。
こうした最終手段としての実力行使の目的は「すぐにやめさせる」ことであり、「怖い思いをさせる」必要なまったくないはず。
だから私自身も、自分の子どもたちが小さかったころは「いうことを聞かないとくすぐるぞ~」とくすぐることで、子どもたちは感情的な緊張から解放され、笑って逃げることでその場が落ち着くようになりました。
子どもにアイデアを聞いて喧嘩を「遊び」に変える
ケンカが始まってしまってからでは、どうしても叱ったり引き離すくらいしかできません。
そのため、きょうだい喧嘩が起こる前の「平時」にルールを話し合っておくことをおすすめします。
特にいまの時期は、リモートワークをする親御さんも多いでしょうから、「コロナ禍での特別ルール」をお子さんといっしょに話し合って決めるのもいいでしょう。
子どもはどうしても、綱引きをしてしまうものです。こちらが「やめなさい!」「だめ!」と綱を引くと、子どもは「やめない!」「いやだ!」と綱を引き返します。
ところが、「頼りにしているからね」「ケンカをやめて静かにしてほしいのだけど、すごーいって思うようなやり方、ない?」と親側が綱から手を離すことで、子どももそれ以上綱を引けなくなり、頼られることに喜びを感じ、協力してくれます。
それに対して「そうか、ママ全然気が付かなかったわ」と褒める。すると子どももうれしくなって、どんどんと改善するためのアイデアを出してくれるようになっていきます。
つまり、子どもは大人に「一人前扱い」されるとうれしくて、その期待に応えようと力を発揮するのですね。
ほかにも、怒鳴ったり怒ったりする代わりに、子ども自身がワクワクするような遊びに変えてしまうことで、「やるべきこと」よりも「ワクワクすること」に対して子どものやる気が発揮される場合も。
たとえば、「静かにしてください」と書いた紙を作って部屋のドアに貼り、「あの紙が出たよ!」とイベント感を出すだけでも、子どもは「遊びが始まった」と興奮してくれますよ。
安定した「愛着形成」のために頭ごなしに怒らない
ここまでいくつかの対処法をご提案してきましたが、子どもを「〇〇しなさい」と抑えつけたり、頭ごなしに怒ったりしてはいけない理由は、子どもの愛着形成の観点から見ても大切なことです。
特に、子どもを一人前扱いしたほうがよいというのは、その場での効果だけでなく、子どもが育つうえでその後の影響にもプラスに働きます。
幼い子どもは、親に甘え、それが満たされることで安定した「愛着」のスタイルを形成していきます。
そのため、親はわけのわからない不安定な存在であってはなりません。
なぜ怒られているのか分からないほど感情的な叱り方をされたり、一度は安心したのに裏切られる、といった体験は「愛着の危機」。子どもは親の顔色を伺うようになり、その癖は大人になってからもつづいてしまいます。
だからこそ、常に意見を聞いてくれたり、提案したら取り入れてくれる親であることが子どもを安心させ、安定した愛着形成の土台となるのです。
その結果、子どもは安心して冒険し、チャレンジすることができます。こちらのいうことを聞いてほしいときでも子どもを尊重し、条件つきではなくありのままを愛す「無条件の愛」、そしていつでも「味方」であることを示す姿勢が重要でしょう。
まとめ
- 親がストレスに思うほど子どもはケンカを根に持たない。危ないときは「くすぐり」を。
- 子どもを一人前扱いし、ケンカをしていない平時にアイデアを聞いてみる。
- 張り紙を作ってみるなどしてケンカをワクワクする「遊び」に変える。