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子育ての意見が合わないパートナーの行動が変わる伝え方
家族がいっしょに過ごす時間が長くなる今の時期、子どもやパートナーに対してつい感情的になってしまう。そんな声がママたちから聞こえてきます。KIDSNA読者より寄せられたお悩みに、精神科医の水島広子先生に答えていただきました。
相手の性格やタイプに合わせた役割分担の提案を
相談者さんのパートナーの方がそうとは限りませんが、一般的に女性より男性の方が変化に弱い傾向にあります。
その前提で考えてみると、子どもほど予定通りに動かず、不規則な存在はありません。
ふだんはやさしい人が、子どもを怒鳴ったり、腕をひっぱったりするというのは、子どもの突発的な行動に対してパニックを起こしている可能性が高いです。その場合、たとえ妻に説得されたとしても「あなたはうまくできていない」というメッセージを受け取るだけで、改善には至りません。
そのため、できるだけ「平時」に役割分担することをおすすめします。
「あなた几帳面な性格だから、子どもが不規則に行動するのって苦手じゃない? それにあなたのほうが子どもに接する時間が短いから、『遊び担当』をお願いできる? その代わり子どもに伝える役はわたしが引き受けるよ」といったように、相手の苦手やストレスを汲み、提案してみる。
相手のタイプに合わせたこのような伝え方であれば、パートナーの方も、自分を否定された気持ちにはならないでしょう。
また、夫自身が子どもの腕をひっぱることをよしとするような環境で育っていた、ということも可能性としてあり得ます。
その場合も、相手を否定したり、「うまくできていない」というメッセージは送らない。子どもに対してやさしく接しているところを見つけたら、「自分がああいう環境で育ったのに、子どもにはやさしく接していてすごい」と褒めてみてください。
内容は妥協せず、伝え方を工夫する
今回のようなケースは、家事や育児にも通じるお悩みです。
実際には子どものほうが一般論が通じやすいし、子どもはこれから成長してくれるからまだがんばって根気強く伝えようという気になるでしょうけれど、きっと夫に対しては「こんなお願いごとを一生繰り返すの?」といやになってしまうこともあるでしょう。
だけど、「あなたのやり方では子どもが怪我してしまうからやめて」といったように、相手が「うまくできていない」というメッセージになってしまうと、相手はより意固地になってしまいます。
要望を話すときは、伝えたい内容は妥協せず、伝え方(メッセージ)を変えてみるということが効果的です。
もうひとつ例を出すと、たとえば「靴下を裏返しではなく表に戻してほしい。そして脱ぎっぱなしではなく洗濯機に入れてほしい」ということを伝えたかったら、この2つの要求のどちらかを諦めるなどの妥協はしない。
その代わり、「ここが不十分だからだめ」「これくらいやって当然」という伝え方ではなく、「どこまでだったらできそう?」と聞いてみたり、裏返しのままだけど洗濯機に入っていたら「ちゃんと洗濯機に入れておいてくれたんだね、ありがとう」とお礼をいうように、伝え方を工夫することで、だんだんと習慣として定着して次の要望も行動に移してくれやすくなります。
「役割期待のズレ」に気づく
私が専門とする対人関係療法では、あらゆる対人ストレスを「役割期待のズレ」として見ます。
自分が相手に期待している役割を相手が果たしてくれていれば、ストレスは生じません。しかし、自分が期待している役割を相手が果たしてくれなかったり、やらないでほしいと思うことをされてしまったりすると、ストレスに感じます。
あるいは、相手が自分に期待している役割が、自分の苦手なことだったり、やりたくないことだったりするとストレスになります。
たとえば、夫が妻から不適切な役割を求められると、「なぜこんな忙しいときに」「どうして自分でやらないのだ」「そんなことが自分にできるだろうか」などと、不満や不安を感じます。
だからこそ、先ほどお伝えしたような「あなたは遊ぶ担当で、私は注意担当をするのはどう?」というふうに役割分担を話し合うように、きちんと相手への期待を伝えるコミュニケーションをすることが大切です。
自分が相手にどんなことを期待しているのか、それを伝えたうえでどう思ったか、そしてどこまでならできそうか?といったことを話し合うのです。そうすることで、「なぜできないのか」ではなく、「どうやったらできるようになるか」という建設的な話につながります。
役割期待のズレが起きたとき、相手がどこまでなら耐えられるかというのも平時に話し合っておくのがよいと思います。妻が自分を見るといつも怒っている、という印象を持たせるといい結果を招きません。
相手の心情を慮りながら、こちらの要望を少しずつ伝え、相手も自分にどんな役割期待を持っているのか、相互にコミュニケーションをとれるといいですね。
まとめ
- できないことを責めるのではなく、性格やタイプに合わせた役割分担について平時に話し合う。
- やってほしいことを減らして自分が代わりに行うなどの妥協はせず、伝え方を工夫する。
- お互いがお互いに対する「役割期待」にズレがないかコミュニケーションを取る。