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子どもに「やめてほしい癖や習慣」をやめてもらうための親の考え方
家族がいっしょに過ごす時間が長くなる今の時期、子どもやパートナーに対してつい感情的になってしまう。そんな声がママたちから聞こえてきます。KIDSNA読者より寄せられたお悩みに、精神科医の水島広子先生に答えていただきました。
まずは「本当は何をしたかったのか」インタビューする
まずは、子どもの事情を理解するようにしてみましょう。
「どうしていつもそうなの!」と失敗したことやできないことばかりを見るのではなく、「本当は、何をしたかったのか」を子どもにインタビューしてみるのです。
たとえば相談者さんの歯ブラシのケースでは、「いつも歯ブラシを噛んでいるけど、どうしてそうしたいの?」と聞いてみてください。すると、「イライラしてるときに歯ブラシを噛むと気持ちが落ち着く」とか、「噛んだ感じが口触りがよくて気持ちいい」といったような返事があるかもしれません。
そうしたら、その返事を「なるほど」といったん受け止め、「じゃあ噛む用の歯ブラシはこっちにして、磨く用の歯ブラシはこっちにしよう」と提案してみるとよいでしょう。どちらかの歯ブラシに特別なシールを貼ってあげるとなおいいかもしれません。
そもそも、子どもの行動は親を怒らせようとしてやっていることとは限らないのです。
そして同時に、子どもは「できない理由」を自分からは説明できません。どうしてやめられないのか、どこで引っかかっているのか、自分からは伝えることが難しいのです。
だからこそ「悪い子」と決めつけるのではなく、できないことには理由があるはずと考えることで、子どものありのままを認めてあげましょう。
さらに、第1回のお悩みの解答でも話しましたが、子どもは新しい考えやワクワクすること、親に頼られて自分のアイディアが取り入れられることが大好き。
そのため、どうしてその癖や行動をしたいのかまずは理由を聞く。その答えを受け入れる。そして解決策を一緒に考える。というステップが好ましいでしょう。
期待と現実のズレを自覚する
このように、子どもがやめてほしいことをやめてくれない、などとつい怒ってしまう背景には、親の「期待すること」と「実際の現実」が違うということがあります。
私たちは現実がこうであってほしいという期待を、日常的にあらゆるものや人、状況に対して抱いています。
怒りという感情は、この期待と現実のズレが強く感じられるときに湧いてくるものです。
たとえば、忙しい日なのに子どもがいうことをきかないとき、「忙しい日くらい、いい子でいてほしい」という期待をどこかしらで持っているので、それと違う現実に直面すると怒りを感じるということなのです。
ここで注意してほしいのは、「期待しすぎ」と思うと自分のことを責めてしまうし、「期待できない」と思うと絶望的になってしまうということ。しかし、「この期待が現実的かどうか」というふうに考えれば、前向きになれると思います。
たとえば、この子の年齢から考えて現実的かな、この子の性格からみると現実的かな、といった視点で考えられるようになると、子どもが本当にやりたかったことは何か、という「子どもの事情」も冷静に見れるようになってくるのです。
つい怒ってしまう日があっても大丈夫。その子にどんな期待が合っているかを知るチャンスであり、日頃の思い込みを修正するチャンスでもあるのです。
怒りの感情は「困った」のサイン。子ども自身に頼る
期待と現実のズレをなくせるようになってくると、怒りの感情もコントロールできるようになっていきます。
子どもに対してキレてしまうという方の話を聞くと、「最初は怒りをがまんしていた」という方も多いです。不満をためることで、「この子は自分にとってよくないことをする存在」という思いにつながり、子どもとの関係も悪くなってしまいます。
だからといって、怒りの感情を持つ自分を責めないでください。怒りと上手につきあうためには、「怒りとは、自分は困っていると知らせてくれる感情だ」と捉えてみるのです。
このサインが出たときは、自分自身の困った事情も伝えたうえで、「こういうことで困っているから、助けてくれる?」と伝えてみるとよいでしょう。
子どもは大人から頼られることが大好きです。「〇〇しなさい!」「〇〇してはだめ!」といわれると反抗しかしない子どもでも、「助けて!」というと、やさしく協力してくれるもの。そして実際に自分がママやパパの役に立てれば、自信や自己肯定感にもなります。
まとめ
- できないことを責めるのではなく「本当は何がしたかったのか」子どもの事情をインタビューする
- 子どもの年齢や性格などの「現実」と、子どもに対して抱く「期待」にズレがないか確認する
- 怒りの感情は「困っている」のサイン。子ども自身に助けを求めてみる。
<取材・執筆>KIDSNA編集部