てぃ先生に聞く「手作り=愛情」、親世代との価値観の違いにどう対応する?

てぃ先生に聞く「手作り=愛情」、親世代との価値観の違いにどう対応する?

2021.08.04

Profile

てぃ先生

てぃ先生

保育士/子育てアドバイザー

関東の保育園に勤める男性保育士。 ちょっと笑えて、可愛らしい子どもの日常をつぶやいたTwitterが好評を博し、フォロワー数は46万人を超える。 Twitter原作のマンガ『てぃ先生』(KADOKAWA/メディアファクトリー)は20万部を突破、著書である『ほぉ…、ここがちきゅうのほいくえんか。』(KKベストセラーズ)は15万部を超える大人気作に。他にも『ハンバーガグー!』『園児がくれた魔法の言葉』などを出版。 保育士として勤務する傍ら、その専門性を生かし、子育ての楽しさや子どもへの向き合い方などをメディアなどで発信。全国での講演活動も年間50本以上。 他園で保育内容へのアドバイスを行う「顧問保育士」など、保育士の活躍分野を広げる取り組みにも積極的に参加している。 ちなみに、名前の読み方は「T」先生。

子育てに関するママパパのさまざまなお悩みに、現役保育士のてぃ先生とKIDSNA編集長・加藤が赤裸々にトークするKIDSNA TALK。今回はしつけや伝統的行事などに対する世代間のギャップをテーマに、てぃ先生とトークします!

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KIDSNA編集長加藤
KIDSNA編集長加藤

今回は日常のマナーやしつけから伝統的な行事といった、代々受け継がれてきた育児についてです。

自分の母親や祖母が「これやりなさい」ということに対して、「これってどこまでやるべきなの?」というのが悩ましいところです。

まずひとつめが箸の持ち方。「自分の親が厳しかったから、自分の子どもにもつい厳しくしてしまいます」というご意見がきました。

てぃ先生
てぃ先生

マナーって、結構判断が難しい部分があって、本人は正直困らないことが多いですよね?でも、そのマナーを守らないと周りの人間が不快になったり、気持ちよく過ごせなかったりすることなので、

「周りの人に迷惑がかかる」ことを保護者がどれだけ重視するかによって変わってくるじゃないですか。

たとえば、くちゃくちゃと音をたてて食べるというのも、周りは嫌だけど本人は別に問題ないじゃないですか。

KIDSNA編集長加藤
KIDSNA編集長加藤

私の周りでよく聞くのは、両親どちらかが海外の国籍の場合。どちらを重視するかはすごく難しいようですね。

子ども本人は、どちらのアイデンティティもあるから気にしないけれど、日本人側はやはり気にすると聞きます。

てぃ先生
てぃ先生

それって結局、全部使いわけじゃないですか?

たとえば、お母さんは日本人でお父さんはアメリカ人だったとき、バイリンガルでどちらの言語も進めていくとしても、日本語を使ったほうがいい場面では日本語を使うし、ここは英語が便利だよねと思えば英語を使うし。

つまり、お箸とか色々な文化的なものや、価値観的なものも、言語と同じでその場のいわゆるTPOに合わせてできるようにしておけばいいんじゃないかな?

KIDSNA編集長加藤
KIDSNA編集長加藤

その場に応じて使い分けをするためには、お箸にしても言語にしてもある程度はどちらもできた方がいいですね。

てぃ先生
てぃ先生

そうですね。たとえば、今後お子さんが自分から「海外に行きたい」と言わない限り日本に住む予定なら、日本の文化多めの選択でいいと思うんですが、今から留学考えていたり、その可能性があるなら、海外の様式も覚えておいた方がいいかなとは思いますね。

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KIDSNA編集長加藤
KIDSNA編集長加藤

続いてたくさん来ていたのが、日本に昔から伝わるお祝いや儀式についてです。

てぃ先生
てぃ先生

お宮参りから始まって、一升餅持たされて畳の上で泣いてるやつね。

KIDSNA編集長加藤
KIDSNA編集長加藤

「正直必要ない」「意味も分からない時期に重たいものを持たされて泣かされて可哀想」という意見がいくつかきています。

こういったお祝いや儀式ってやらなきゃいけないのかな?と疑問に思いつつ、「子どものため」といわれてやっているご家庭もあると思いますが、いかがですか?

てぃ先生
てぃ先生

まず前提として、そういう文化って選ばれて必要だから残ってきたものだと僕は思うんですよね。

今は2021年ですけど、これまでもたくさんの伝統や文化が存在していたのだけれど、必要じゃなくなったタイミングで滅んできたわけです。

たとえば2020年の日本でいえば、これまで印鑑の文化がありましたけど、「もうなくそう」ってなったじゃないですか。

つまり今まではその文化、伝統が必要だったとしても「これからはいらないよね」という選択をしてもいいんですよ。

一升餅を背負うイベントも、「一生食べ物に困らないように」という願いがこめられた素敵な文化だと思いますが、ご近所付き合いもない今の時代にあの大きな餅をどうしようってなりますし、餅にこだわる必要があるのかは考えた方がいいとは思いますね。

KIDSNA編集長加藤
KIDSNA編集長加藤

豆まきはどうですか?

てぃ先生
てぃ先生

「鬼は外、福は内」っていう言い方をしない保育園も結構多くて。あとは豆はまくけど、鬼が出てくるっていうのはもうしない。

KIDSNA編集長加藤
KIDSNA編集長加藤

「鬼は外」は言わず、「福は内」だけやるっていうのも聞いたことがありますね。

てぃ先生
てぃ先生

僕は今、保育士13年目ですけど、13年前は先生たちが鬼のお面をつけて「うぉ〜!」って子どもたちを追いかけて、子どもたちは「いや〜!」って逃げ回ってました。

あらためて考えると、「節分」という文化はいいけれど、「鬼が出てきて子ども怖がらせる」必要はないよね?という。

KIDSNA編集長加藤
KIDSNA編集長加藤

保育園での豆まき然り、時代の中で変わっている部分って絶対ありそうですね。

てぃ先生
てぃ先生

そう、絶対あると思いますね。だから「自分の時はあったらから、子どもにも」というのは、ものによっては安易かもしれないですよね。

KIDSNA編集長加藤
KIDSNA編集長加藤

でも子どものこととなると、自分が経験したことをさせてあげたいとなりがちですよね。

てぃ先生
てぃ先生

あるいは自分が経験できなかったからこそ子どもにはやらせたいという。これ、どっちもありますよね。

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KIDSNA編集長加藤
KIDSNA編集長加藤

先ほどの話題にも通じますが、「自分の母(子どもにとっての祖母)が、『おんも(外)』や『えんこ(座る)』など昔の子どもに対する言葉を子どもに使ってきて、なんとなく嫌で言い直してしまう」というエピソードが届きました。

てぃ先生
てぃ先生

それはその親御さんの対応でいいと思います。

ただ、たとえば最初は子どものしゃべりやすさで犬のことを「わんわん」とか「ワンちゃん」と言うじゃないですか。別にどちらがいい、どちらが間違っているというわけではないんですよね。

そのうちどこかのタイミングで「犬」と言うようになるのであまり気にしなくてもいいと思います。

KIDSNA編集長加藤
KIDSNA編集長加藤

言葉に限らず、ご自身の親世代との考え方の違いにどう立ち回るのが一番適切ですかね?

てぃ先生
てぃ先生

そういう意味では祖母の目の前では言わないのが一番いいと思います。それで、家では自分の家庭のルールで別の言葉を教えるのがお互いストレスなくていいじゃないですかね?

KIDSNA編集長加藤
KIDSNA編集長加藤

でも、言いたくなっちゃう気持ちもすごいあるんですよね。

てぃ先生
てぃ先生

そりゃそうでしょうね。言葉遣いに限らず、たとえばですけど「女の子はかわいければいい」と言われたら、「今の時代の価値観とは合わないことを教えないで」とかは言っていいんじゃないですか?

ただ、やっぱり子どももある程度の年齢になると家ではこう、おじいちゃんおばあちゃんの前ではこうって、使い分けできるものなんですよ。

僕達大人だって今こうやってすごく真面目に喋ってますけど、家に帰ったら「あーめんどくさ!」みたいになるじゃないですか(笑)。そういう使い分けがあっていいと思います。

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KIDSNA編集長加藤
KIDSNA編集長加藤

あとは、親世代との価値観といえば「3歳までは子どもとずっと一緒にいたほうがいい」とか、とくに「母親が子どもをみるべき」という考えがいまだに根強くあるじゃないですか。

今の世の中、共働きの家庭のほうが多くなっていて、親世代が子育てをしていた時代とは社会状況が違うわけですが、この圧倒的な価値観の違いに対してどう思われますか?

てぃ先生
てぃ先生

正直何が正解っていうのは子どもが育ってみないと分からない部分がありますよね。たとえば、本当に3歳まで一緒にいた子の方が将来的に幸福度が上がるというデータがあるなら、考えたほうがいいかもしれません。

ただ、たとえそうだったとしても、今の日本の子育てはもはや共働きでなければ成り立たない現実があるわけで。だから仮に理想がそうだったとして、それをそのお父さんお母さん側の責任として求めるのは間違ってると思いますね。

KIDSNA編集長加藤
KIDSNA編集長加藤

働きたい気持ちと、周りからの無責任な「1歳から保育園に預けるの?」という言葉に罪悪感を感じちゃうママって多いと思うんですよね。

てぃ先生
てぃ先生

育休とかもそうですよね。父親の育休が進まないというけど、このご時世、パパももういい加減、「育児をちゃんとやらなきゃ」って意識はみんなあると思うんですよ。

トイレの洗剤や柔軟剤、洗濯機、掃除機のテレビやwebの広告にも、今や男性タレントがいっぱい起用されて「男性も家事育児をするのが当然」という風に、社会は変わりつつある。

でも、いまだパパたちは気軽に育休が取れなくて、理想と現実の間で板挟みになって苦しんでいる人は多いと思うんですよね。

だから仮に今後もし、ママと子どもが一緒にいることが「正しい」として、今そのやってることが間違ってたのか?といったら、今できる精一杯のことをしているんですから、罪悪感を感じる必要ないんです。

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KIDSNA編集長加藤
KIDSNA編集長加藤

最後は「手作り」=「愛情」という考え方についてです。もちろん食事でも手作りの方が美味しい場合もありますが、それが絶対の愛情の証ではないですよね。

そう頭では分かっているのに、つい「手作り」という言葉に敏感になったり、頑張ってしまうのは何故なんでしょうか。

てぃ先生
てぃ先生

手作りの良さって多分、出来上がったものじゃなくて、その過程にあると思うんですよね。たとえば、手編みのマフラーを編んで、それを知らさずにプレゼントされても、「何かあまりきれいじゃないな」って思うことって多分あると思うんですよ(笑)。

でも、もし手編みだと知らされていたり、作っているところを毎日見ていたら、「こんなに一生懸命頑張って作ってくれたんだ」とプレゼントされたらすごく嬉しくなると思うんですよね。

KIDSNA編集長加藤
KIDSNA編集長加藤

自分にかけてくれた時間や思いですよね。

てぃ先生
てぃ先生

だからといって冷凍食品とかが、悪いって訳じゃないんですよ。ただ、見え方としては手が掛かってるものの方が、愛情がこもっているように「見える」んですよね。 

ただ、それはバランスだと思います。何でもかんでも手作りで、結局それでお父さんお母さんが疲弊して、子どもが遊んでほしい時に「今もう疲れてるから遊べない」ってなったら本末転倒でしょう。だから本当にバランスだと思いますね。

KIDSNA編集長加藤
KIDSNA編集長加藤

私も娘が毎日お弁当なので最初は手作りを頑張るんですけど、やっぱどうしても続かないんです。あと衛生的なことを考えたら冷凍食品を使った方が安心というのを聞いて。

でも親とかがたまに見ると「冷凍食品、かわいそう」って言われるんですよ(笑)。

てぃ先生
てぃ先生

全般的にいえることですが、たとえば、布おむつにこだわりなさいとか、おむつの名前が手書きじゃないから愛情が伝わらないとか言う人もいますが、僕は面倒な家事はどんどん手放すべきだと思います。

食洗器もお掃除ロボットも、金銭的な問題が許す限り、便利なものはにはどんどん頼って、できた時間で手を掛けた方が喜びそうなところをやるのはありだと思います。

KIDSNA編集長加藤
KIDSNA編集長加藤

毎日が全部フルの手作りじゃなくって、うまく抜いて週末だけ手をかけるとかでも十分。家庭内でどうしたら納得度が高く、みんながハッピーになれるかにつきますね。

てぃ先生
てぃ先生

そう!全員がハッピーだったら毎日外食でもお惣菜でもいいと思いますね。

次回更新は8/11(水)です。お楽しみに!

第2回「子どもが意地悪したとき・されたときの対応」はこちら

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