幼児教育における「道徳」とは?今注目を集める「心の教育」を解説

幼児教育における「道徳」とは?今注目を集める「心の教育」を解説

2025.09.12

幼児教育とは就学前に行われる生活習慣や人間性、道徳性など、学習の基礎となる「考える力」を育む教育のことを指します。近年、「幼児教育」という言葉はさまざまな場面で注目を集めるようになり、中でも「道徳性」は保育所保育指針・幼稚園教育要領が示す「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の1つにも挙げられています。幼児期の道徳性の教育は子どもの人生において重要であることは理解しつつも、どのように行ったらよいかイメージがつきづらいと感じているパパやママも多いのではないでしょうか?そこでこの記事では、幼児教育における道徳の必要性や学ぶメリットについて詳しく解説します。

幼児教育における「道徳」とは?

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文部科学省が定める保育所保育指針・幼稚園教育要領の「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の1つとして「道徳性・規範意識の芽生え」があげられており、具体的には以下が設定されています。

友達と様々な体験を重ねる中で,してよいことや悪いことが分かり,自分の行動を振り返ったり ,友達の気持ちに共感したりし,相手の立場に立って行動するようになる。また,きまりを守る必要性が分かり,自分の気持ちを調整し,友達と折り合いを付けながら,きまりをつくったり,守ったりするようになる。

文部科学省|幼児期の終わりまでに育ってほしい姿

つまり、善悪の判断や相手の立場に立ってものごとを考えられる力を育むことを指しており、社会性や自己肯定感の土台となる要素として位置づけられているようです。

そもそも幼児教育とは?

「幼児教育」と聞くと、計算の速さや記憶力の向上など、学習面の教育をイメージする人が多いかもしれません。実は幼児教育とは、小学校就学前の0~6歳の子どもを対象とした教育全般のことを指し、学習面だけでなく心身ともに健康でいられる土台作りが主な目的です。幼児教育で得られる能力は人格形成の土台ともいわれ、生涯において非常に大切な要素の1つです。

「教育」といっても、保育園や幼稚園など保育・教育機関だけでなく家庭や地域など幼児が生活するすべての場での体験や経験が幼児教育としてみなされています。

幼児教育で「道徳」を学ぶメリット

2018年~2019年にかけて、小中学校では「道徳」が「特別の教科」として位置づけられました。道徳性の発達および心の教育は、国として力を挙げて行っていく分野にはなったものの、「足が速くなる」「テストで100点を取る」などのわかりやすい指標がないため、なかなかメリットが可視化しづらいのが特徴です。以下では、道徳性の発達や心の教育を行うことによる主なメリットを2つ紹介します。

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非認知能力が高くなる

非認知能力とは、意欲や社会性など数値化しづらい能力のことを指します。非認知能力の高さはすなわち自身の思考や行動をコントロールする力や協調性、コミュニケーション能力などに直結しており、人生における幸福度に影響するともいわれています。道徳心は非認知能力の1つされており、道徳性の発達は豊かな人生において重要な役割を果たすといわれています。

困難に負けない強い心を養う

道徳性の発達はものごとのよしあしを判断する力を養います。自分の言動に対して自信を持って行動できるようになるため、自己肯定感の安定にもつながるでしょう。失敗や挫折、変化や新しい状況に置かれてもストレスを感じづらく、安定した心で対応できるため常に高いパフォーマンスを発揮できる人間になることにもつながります。

【年齢別】幼児期に教えたい道徳

幼児期は人格形成において土台となる大切な時期です。一方で、道徳性は一朝一夕で身につくものではなく、年齢に合った教育を行っていくことが重要とされています。以下では、年齢別に身につけたい道徳性の例を紹介します。

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1歳児~2歳児

このころの子どもは、まだ「ルールを守って遊ぶ」というのが難しい時期です。集団生活に慣れていない子どもも多いため、「順番を守る」など基本的なルールを守れるようにサポートしてあげることが大切です。順番が守れなかった子どもを叱るのではなく、保護者が間に立って誘導してあげ、順番が守れた際はおおげさに褒めてあげるなどの取り組みを繰り返し行うことで少しずつ理解できるようになっていきます。

3歳児~4歳児

このころの子どもは、「相手にも考えや心がある」ということに少しずつ気がつく時期です。例えば、絵本などを読みながら登場人物の気持ちを考えることができるようになったり、罪悪感や自尊心など複雑な感情が芽生えたりすることもあるようです。

4歳児~5歳児

このころの子どもは、ルールに加えてマナーや思いやりの気持ちを持てるようになる時期です。例えば、「電車やバスの優先席はお年寄りや体の不自由な人に譲ったほうがよい」「小さい子と一緒に遊ぶときは、少し手加減をしてあげよう」など、少しずつではありますが他者のことを考え、尊重したり共感したりすることもできるようになります。

【参考】

保育士バンク!|【幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿】「道徳性・規範意識の芽生え」。子どもを育む保育の実践事例

保育士バンク!|【10の姿】「道徳性・規範意識の芽生え」とは。保育士の援助の仕方や具体事例

 

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家庭でできる道徳教育のコツ

先ほども述べたとおり、幼児教育は保育園や幼稚園などの保育・教育施設だけでなく社会全体で行っていくものです。家庭でも子どもが道徳性を身につけられるようサポートしてあげましょう。

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まずは大人が実践する

当たり前のようですが、子どもは周囲の大人のふるまいを見て育ちます。食事の前には手を洗う、「おはよう」などの挨拶をする、思いやりを持って人に接するなど子どもに守ってほしいルールやマナーは、まず大人が積極的に行い、お手本を見せることが大切です。

子どもを一人の人間として尊重する

自分が尊重される経験がなければ、他者を尊重できるようになりません。「子どもは未熟なもの」と押さえつけるのではなく、子どもの考えや行動を認め、一人の人間として尊重してあげましょう。子どものいいところを見つけ、褒めてあげるのも効果的です。

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ルールについて楽しく学べる機会を作る

「寝る前は歯を磨く」「遊び終わったおもちゃは片づける」など、家庭や生活のなかでもルールがあることを伝えましょう。ルールを守るとどんな暮らしができるのか、逆にルールを守らないとどんなことが起きるのかなどもセットで教えてあげるのも大切です。子ども向けのアニメや教材などを使用し、視覚的に教えてあげるのもいいでしょう。

子ども自身の葛藤に寄り添う

子どもはルールとして頭では理解していても、なかなか実践できないことは珍しくありません。ルールが守れなかったときは叱るのではなく、まずは子どもの葛藤に寄り添ってあげましょう。気持ちを代弁してあげたり、本人が自分の行動を振り返ることができるよう問いかけてあげることで、ルールを守ることの大切さについて納得感を持てるようになるかもしれません。

絵本の読み聞かせ

絵本の読み聞かせは、親子のコミュニケーションを促します。道徳に関する絵本に限らず、子どもが好きな本をたくさん読んであげましょう。登場人物はどんな気持ちだったか、なぜこのようなふるまいをしたのかなどを話し合うだけでも、道徳性を育むきっかけになりますよ。

「愛される経験」で子どもの道徳性を育んで

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道徳性を育むための第一歩は、「自分は価値のある人間である」と子ども自身が実感することにあります。子ども自身が安定した心を持つことで、周囲にも正しく、優しくなれるのです。そのため、「幼児期にどれだけ愛情を受け取ることができるか」は子どもの道徳性を育むうえで非常に重要です。子どもに強く折れない心を育みたいと考えているパパやママは、ぜひ子どもにたくさんの愛情を注いであげてください。

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