大学生から「うるさい、恥ずかしい、興味がない」とボロクソに…40年で初の1位獲得のためにFMV社長が行った作戦
大企業病を破壊した「逆転の構図」とは
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富士通のパソコン「FMV」が好調だ。そこには、2021年に社長に就任した大隈健史氏による改革がある。象徴的なのが、Z世代向けの商品開発プロジェクトだ。平均年齢24.5歳という「異例」のチームによる取り組みで、社員の意識は大きく変化したという。大隈社長に、ライターの鬼頭勇大さんが聞いた――。
新社長就任から2年あまりでパソコンシェア1位に
「FMV」ブランドのパソコンを手掛ける富士通クライアントコンピューティング(FCCL)が好調だ。前身の富士通時代から40年以上も“万年2位”だった国内個人向けパソコン市場で、2023年度に初となるシェアトップへ輝くと直近の2025年8月までがっちりとキープしている。
そこには2021年に就任した大隈健史社長による社員の意識改革があった。変化の模様は前編で記したが、その改革の象徴ともいえるのが、2022年秋に若手社員主導で始めた「FMV From Zero Project」だった。
同社としては初となる若手社員を集めた社長直下のプロジェクトはどのようなものだったのか。それを通じて、2位に甘んじていた企業はどのように変化したのか。舞台裏を大隈社長に聞いた。
大隈社長によると、個人向けパソコンには大きく分けて3つのセグメントがある。
一つが、オールインワン。これはデスクトップなど多機能かつ持ち運びをあまり想定しないものが該当する。そして大画面のノートパソコンと、より携帯性に長けたモバイルノートパソコン。
FMVはこのうちオールインワンでシェア1位、大画面でも1位タイだった。一方で「明確に劣後していた」(大隈社長)のがモバイルノートパソコンだ。
大学生から言われた率直な意見
大隈社長は「FMVは長期間かけて築いたブランドでもあり、壮年~高齢層の顧客に強い特徴がありました。一方、若い世代をどう攻略するか。これがシェア1位を奪う上でのキーとなるはずだという確信がありました」と話す。
「特に街に出ると、寂しい思いをするんですよ。カフェなどに入るとノートパソコンを開いて作業している人はたくさんいますが、リンゴのマークばかりで富士通のマークが入ったものは一つもない。誰も使っていないんです。これは非常に深刻だな、と」(大隈社長)
そこでまず、大学の研究室などと連携しながら市場の調査を行った。大隈社長は学生たちからの意見を振り返り「ボロクソに言われましたよ」と笑いながら話す。
例えば、まず寄せられたのが「とにかくうるさい」という声だった。教室や図書館でパソコンを開いて何かしようとすると、冷却ファンが音を立てて稼働する――これが学生たちからすると「恥ずかしい」となり、不評だった。