人生のピークは「50歳」を目指すといい…92歳の作家・五木寛之さんが「長生きしてよかった」と思う瞬間
人類が初めて経験する「地図も羅針盤もない旅」
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日本人の寿命がどんどん延びている。作家の五木寛之さんは「人生100年時代は50歳をひとつのピークと考えて、まずは最初の50年で山の頂をめざし、残りの50年でゆっくりと下山をしていくのだ」という――。 ※本稿は、五木寛之『あきらめる力』(宝島社)の一部を再編集したものです。
「いいこともあるし、悪いこともある」
問 五木さんご自身が「長生きしてよかった」と思えることは何でしょうか? |
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歳をとれば、いろいろ不自由なことも増えますし、病気もします。ですから、長生きしてよかったかと聞かれれば、「いいこともあるし、悪いこともある」としか答えようがありません。
よかったことを挙げるとすれば、多くの人と出会い、話ができることでしょうか。もともと私は人と話すことが好きで、昔から対談集、対話集を数多く出してきました。80代半ばを過ぎたいまでも、毎月二人ずつぐらい対談をしています。
私がこういう年齢になったからこそ、会って話をしたいと思ってくださる方もいらっしゃるでしょうから、歳を重ねるのも悪くはないなと思ったりします。
トランプ大統領の登場は「面白そう」
もうひとつ、いまも世の中の動きを見続けられることは、長生きをしたおかげだと言えるでしょうね。インタビューなどで「いまの趣味は何ですか?」と聞かれることが多いのですが、そんなとき私は、「世の中を見ること」と答えています。
たとえば、アメリカでトランプというとんでもない大統領が出てきた。意外に思うと同時に、「これからどうなるんだろう?」「面白そうだ」と思ってしまう。
反知性主義がどこまで広まっていくのか。アメリカのリベラル派はどう対抗していくのか。興味は尽きません。
世界経済を見ても、かつては「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた時代がありましたが、いまの日本経済は低迷し、代わりに中国が台頭している。中国の勢いはこのまま続くのか。一方で、もうひとつの超大国であるアメリカは、どう中国と対峙していくのか。壮大な歴史ドラマを見るような気分で眺めています。