「おねだり知事」のニュースにドキッとした…市長だった私が20代の女性職員に「おねだり」してしまったもの
野球ファンだから、どうしても欲しくなった
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権力を手にすると人は変わるのか。千葉県の鎌ケ谷市長を5期19年間務めた清水聖士さんが、市長の仕事を赤裸々に綴った『市長たじたじ日記』(三五館シンシャ)より、自身がパワハラ、おねだりをしかけた瞬間を紹介する――。
私もブチギレたことはある
基本的に私は怒らない性格だ。怒りの沸点が高いのだ。脳がそういう構造なのではないか。いつもひょうひょうとしているとよく言われる。
人からタメ口(※1)をきかれても怒らないし、議会で野次を飛ばされても怒らない。家で娘や妻に怒ることもまったくない(怒られることはたまにある)。
そんな私が19年間に及ぶ市長生活で一度だけブチギレたことがある。
私が鎌ケ谷市役所職員組合の強力なバックアップを受けて市長に当選したことは著書『市長たじたじ日記』第2章で述べた。そうしたこともあり、職員組合主催の旗開き(新年の会)や納涼祭には必ず来賓として呼ばれた。これらの会合には、労働組合(自治労)の幹部と組合員をあわせ総勢150名ほどがつどう。結構、大きな催しで、私を含めた来賓がひと通りあいさつしてから乾杯、しばらく歓談のあとにビンゴゲームなどの余興があるのが恒例だ。
ビンゴには必ず賞品がつく。賞品がビンゴの盛り上がりを左右するため、職員組合執行部は必死になって賞品集めを行なう。これが簡単ではないらしい。予算が潤沢にあるわけではないから、近隣の労働組合から融通してもらったり、来賓から提供してもらったり、四苦八苦していると聞いた。
私はその会合に手ぶらで行っていた。賞品集めに苦労する執行部に何か協力してあげたいと思っていたが、私にはそれができない。そういう会合に政治家が何か持っていけば、公職選挙法違反の「選挙区内にある者への寄付(※2)」に該当するからだ。
※1 タメ口……41歳で市長になったとき、市役所の部長や課長はみな年上で必然的に職員にも敬語で話すようになった。まわりの市の若手市長の中には、かなり年配の職員に対してタメ口でしゃべっている人もいたが、傍で見ていてあまり良い感じを受けなかった。期を重ねて、年下の職員が増えるにつれて、年下には敬語まじりのタメ口で話すようになったが、年長者にはずっと敬語だった。
※2 選挙区内にある者への寄付……候補者やその関係者が、選挙区内に住む個人や団体に対して、金品や物品を贈る行為を指す。選挙運動期間中のみならず、地域の行事への寄付、学校や福祉施設への物品の提供、香典や祝い金の送付などは禁じられている。違反すると、本人だけでなく、寄付を受けた側にも処罰が科される場合がある。首長や議員は常日頃から慎重な対応が求められるのだ。