だから売上高「150億円→552億円」に激増…プロ野球にもJリーグにもなかった「男子バスケリーグ」の斬新な戦略
「スマホや雑誌で情報を収集する」という明確な顧客像
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男子プロバスケットボールプロリーグ、B.LEAGUE(Bリーグ)が盛況だ。そこには従来の日本のスポーツにはなかった事業戦略があるという。日本政策投資銀行著、編集『スポーツビジネス成長論』(ダイヤモンド・ビジネス企画)より、一部を紹介する――。(第2回)
プロ野球での不便さを活かした取り組み
16年に発足したBリーグは「地域密着」をはじめとした、Jリーグの設計を大きく踏襲しつつも、過去日本のプロリーグが直面した課題に対する反省点を踏まえた事業戦略を展開している。
その一つが「デジタルマーケティング」の徹底的な推進だ。プロ野球やJリーグID導入前のJリーグでは観戦者やファンクラブのような顧客データが個別のチームに集約管理されているため、とあるチームのファンが試合観戦でどの席を好んで購入し、どんなグッズを買うのか、試合観戦前にどんな飲み物や食べ物を買うのかなど顧客の行動を一貫して追うことができず、効果的なマーケティング施策を打つことが難しくなっていた。
また、それぞれのクラブで顧客情報の管理システムをもつため、システムの維持管理費や人件費の面において、全体最適が働いていない状況だった。その反省点を踏まえ、Bリーグでは顧客情報をリーグ統合型のデータベースであるBリーグファンプラットフォームで一元化している。
このプラットフォームによってチケット、ファンクラブ、オンラインストア、来場者という顧客の行動別にクラブの垣根を越えて情報を取得することができるようになっている。リーグで一括管理することで蓄積されるデータ量が拡大し、様々な分析を行うことが可能となる。顧客の動きを可視化分析し、各クラブにフィードバックすることで戦略的にサービスを提供することができ、ファンベースの拡大、チケット収入の向上に繋げている。