やっぱり日本の政治家はズレている…「コメの値段」を無視して「税金のバラマキ」に飛びつく国会議員の無責任
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食料品の値段はこれからどうなるのか。キヤノングローバル戦略研究所山下一仁研究主幹は「アメリカから輸入する穀物価格が上がると懸念する声があるが、それは完全な誤りだ。政治家たちは消費税の減税で盛り上がっているが、議論の方向がずれている」という――。
アメリカ関税措置で「食料品の値段は下がる」
トランプ政権の関税措置に対処するため、消費税、特に食料品の消費税率削減・廃止が政治の大きな争点になってきた。
アメリカの関税措置に対応するために、なぜ消費税減税が必要なのか、個人的には全く理解できない。ただ一点、関税の影響について大きな誤解があるようなので、今回はそのことについて論考したいと思う。
今回、重要な点は日本が関税を引き上げるのではないということだ。
日本政府は関税引上げという対抗措置は打たないと初めからトランプに白旗を揚げている(それが功を奏してアメリカが課す関税率は24%から10%に引き下げられた)。日本が輸入する食料・農産物の関税はそのままなので、アメリカの関税措置によって食料品の価格は上がらない。
アメリカの関税措置で同国のインフレが進み穀物価格が上がるので、「日本が輸入する小麦や穀物を飼料として使う牛肉などの価格が上がる」と主張するエコノミストがいるが、完全な誤りだ。自動車の関税引き上げでアメリカ国内の自動車価格は上がるが、アメリカは穀物等の輸出国なので同国で消費される穀物には関税がかからず価格も上がらない。インフレというのは全体の物価水準が上がるというだけで、全ての品目の価格が上がるのではない。個々の品目では下がるものもある。
この基本的なことが理解されていないようだ。それどころか、アメリカの関税措置によって、日本が輸入する食料・農産物の価格は下がるのだ。