「死ぬ直前が一番金持ち」なんてバカらしすぎる…森永卓郎の結論「新NISAでも、タワマンでもない最高の投資先」
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老後に向けた資産形成はどうすればいいのか。1月にがんで亡くなった経済アナリストの森永卓郎さんは「新NISAや高騰が続く都心のマンションを買うだけが資産形成ではない。ライフスタイルを少し見直すだけで、私は月13万円の年金だけで妻と2人で暮らせた」という――。 ※本稿は、森永卓郎『日本人「総奴隷化」計画 1985ー2029 アナタの財布を狙う「国家の野望」』(徳間書店)の一部を再編集したものです。
帰宅は週末のみ、育児は妻に任せきり
私は1980年代半ばから日本における格差の問題を論じてきましたが、今ほど格差の開いた時代はないと思っています。その行き着く先が一部の富裕層と、ブルシット・ジョブに明け暮れる奴隷になった国民の二極化です。
私自身もこの問題に直面しました。新型コロナウイルスが大流行した2020年の春、これまで順調だった仕事が軒並みキャンセルになって収入が大幅に減ってしまったのです。
それまで私の生活は、2拠点生活でした。平日は都心のマンションで寝泊まりをして、週末に自宅のある埼玉県の所沢に帰っていました。週末は講演の依頼も多く、家を空けることが多かったのです。仕事自体は充実していましたが、育児はもっぱら妻任せ。近所の住人の顔もわからずじまいでした。
ところが、生活が一変。自宅に引きこもりの生活が始まります。そんな矢先、新型コロナの影響で「東京近辺から来ないように」と県間移動の自粛が求められる緊急事態宣言になり、2018年から続けてきた群馬県昭和村にある「道の駅あぐりーむ昭和」が運営する10坪ほどの畑での週末だけの「農業体験」を中断することになったのです。
コロナ禍の「一人社会実験」
私にとって、農業体験は単なる土いじりではありませんでした。コロナによる収入減で老後生活をシミュレーションするための「一人社会実験」の場でもありました。
当初、農業に関してはズブの素人だった私は、ほとんどの農作業を道の駅のスタッフ任せでした。農地の整備から種や苗の準備……農作業の指導をイチから手ほどきを受けたのです。
実際、農作業をやってみると思いのほか重労働なことに気づかされます。雑草を抜く作業はとても大変で、立ったまま3時間も作業時間を要します。さながら長時間スクワットをしているような負荷があり、足腰が鍛えられます。運動不足の私にとっては一石二鳥で、小さな畑でも家族3人が十分なほどの野菜が収穫できるほどでした。