三流は話を遮り、二流はその場だけしのぐ…感情的になり話が噛み合わない部下に一流が繰り出す"切り返し"
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会話が噛み合わないときはどうするべきか。慶應義塾大学大学院・特別招聘教授の米澤創一氏は「会話が噛み合わない人は、必ずしも悪意を持ってそうしているわけではない。相手の立場や感情に配慮し、聞き方を工夫する必要がある」という――。 ※本稿は、米澤創一『なぜ、あの人との会話は噛み合わないのか』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
ビジネスシーンで多発する「噛み合わない会話」
噛み合わない会話の代表例のひとつが、「質問にきちんと答えてくれない」状況です。
質問者「このプロジェクトの今フェーズの終了日は来週金曜日で合っていますか?」
αさん「プロジェクトの進捗状況ですが、先週のミーティングで議論したように、いくつかの課題が浮上しています。特に、データ分析の部分で予想以上に時間がかかっていて、チームメンバーの何人かは残業をしています。それから、クライアントからの追加要望もあって、スコープ(実現する範囲)が少し広がっていますね。ただ、全体的には順調に進んでいると思います」
質問者が投げかけたのは「はい」か「いいえ」、もしくは「わかりません」で答えられる質問です。
「来週金曜日」で合っていれば「はい」ですし、「いいえ」であれば、正しい今フェーズの終了日を併せて答えてあげるほうが親切でしょう。「わかりません」なら、今フェーズの終了日を知っていそうな人を伝えるのもいいかもしれません。
しかし、αさんは、今フェーズの終了日については答えず、そのプロジェクトの進捗状況や課題を話し始めています。会話の内容から、今フェーズの終了日は知っていそうではありますが……。
質問に答えない人は、なぜ質問に答えないのか
このように、質問にきちんと答えられない人は意外なくらい多く見られます。「はい」「いいえ」で答えられるはずの質問をしても、「はい」「いいえ」で答えず、その質問の周辺の情報について延々と話すのです。
延々と話しているうちに、元の質問が何だったかも忘れてしまっていることもたびたびです。その長い話の中に答えはあるのかもしれませんが、質問した人にそれを探させるというのは酷な話です。
本質的な問題は、質問者の意図、本当に知りたいことを認識しないまま、自分の持っている知識をひたすら披露してしまうことです。
αさんのような人は、話題そのものへの興味や知識は豊富で「細部には強い」一方、相手の質問の“意図”や“背景”といった全体像をいったん俯瞰することが苦手なのだと言えます。
つまり、「具体的な情報はたくさん語るが、抽象的に“この質問は何を求めているのか”を捉える意識が薄い」ために、要所を外してしまうわけです。