やっぱりイチローはかっこよかった…MLB殿堂入りに「1票足りないのはすごく良かった」と言った真意
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イチロー氏(51=マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が日米両方の野球殿堂入りとなった。ライターの広尾晃さんは「一部メディアでは満票選出でなかったことが、さも大事件のように報じられているが、見当違いも甚だしい。殿堂入り投票は人気投票ではないことを、改めて認識すべきだ」という――。
MLBで殿堂入りのすごさを解説する
今年1月16日、公益財団法人野球殿堂博物館は、イチローの野球殿堂入りを発表した。候補になって1年目の選出だった。
さらに21日(日本時間22日)には、米国野球殿堂(Hall of Fame)が今年の殿堂入りメンバーを発表し、日本人で初めてイチローが選出された。こちらも候補になって1年目で選出された。日米同時の殿堂入りはまさに快挙というべきだろう。
NPBからMLBに移籍する選手は、少なくとも数年は日本で活躍してからMLBに移籍する。そこから殿堂入りする成績を残すのは、信じられないような偉業である。
イチローは、1992年から2000年まで9シーズンNPBで活躍。獲得したタイトルは、7年連続首位打者、打点王1回、盗塁王1回、最多安打5回、MVP3回。さらにベストナイン、ゴールデングラブは各7回、オールスターに7回も出場している。
1994年には当時のNPB記録のシーズン210安打をマークした。通算打率.353は、NPB基準の4000打数には未達だが、NPB史上では断トツの1位である。
27歳でMLBマリナーズに入団。MLBでは2001年から19年まで19シーズンを過ごした。
獲得したタイトルは、首位打者2回、盗塁王1回、MVP1回。タイトルではないが最多安打は7回。2004年にはMLB記録のシーズン262安打をマークした。
シルバースラッガー3回、ゴールドグラブ10年連続10回、さらにオールスターにも10年連続で選出された。そしてマーリンズ時代の2016年にはMLB史上30人目の3000本安打を記録している。
1年目での当選もほぼ確実だったが…
NPBの野球殿堂は、実質的にNPB、MLBの成績の「合わせ技」で評価されたと思われるが、MLBでは海外のプロ野球やマイナーリーグの実績は一切考慮されない。イチローは27歳からMLBに挑戦し、MLBの球史に残る成績を残したのだ。
特に3000本安打は、殿堂入りの「パスポート」と言っても良い。
昨年まで33人が「3000本」をクリアし、そのうち28人が殿堂入りしている。
5人の内訳は、殿堂入りの候補資格ができる引退後5年未満の選手2人(アルバート・プホルズ【歴代10位、3384安打】、ミゲル・カブレラ【17位、3174安打】)と、野球賭博で球界追放となったピート・ローズ(1位、4256安打)、薬物疑惑が報じられたアレックス・ロドリゲス(23位、3115安打)、ラファエル・パルメイロ(30位、3020安打)の3人だ。
発表前からイチローの殿堂入りは確実視されていた。それだけでなく、日本出身で初の野手(新庄剛志も同時にMLBに移籍)、MLBシーズン最多安打、打撃だけでなく「レーザービーム」など守備でも沸かせたことを考えると、1年目での当選もほぼ確実だった。薬物疑惑やスキャンダルが一切なかったことも、好感を持って受け止められた。
しかしながら「満票」はどうだろうか?