子育て支援はマイナスをゼロにするだけでは不十分?【読者企画会議#3】

子育て支援はマイナスをゼロにするだけでは不十分?【読者企画会議#3】

2023.11.13

ジェンダー、性教育、脳科学など独自の切り口で子育てを考えるKIDSNA STYLE。今後世の中に発信するテーマを読者といっしょに考える「読者企画会議」を開催。会議では自由に意見を交換し、KIDSNA STYLEが次に切り込むテーマの芽をいっしょに探していきます。第3回のトークテーマは、「仕事、育児、家事、自己研磨、趣味・・・優先順位の理想と現実」。

これまでの読者企画会議の記事はこちら▽▽▽

日本は管理職ママや専業主夫に寛容な国になれるのか?【読者企画会議#1】 

ママ・パパに必要なコミュニティの形とは?【読者企画会議#2】

「育てるを考える」をコンセプトに、他にはない切り口で育児や生き方のヒントを発信してきたKIDSNA STYLEで、読者が潜在的に知りたいテーマを探すべくスタートした企画「読者企画会議」。

今回のトークテーマは、「仕事、育児、家事、自己研磨、趣味・・・優先順位の理想と現実」。

事前アンケートの結果として気になった点は、1位は育児と答えた人が圧倒的多数であること。一方で自己研磨については4位・5位が71%を占めていたこと。そして、理想の順位と現実の順位にはギャップがあると答えた人は100%という結果も。

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育児が1位というのは不動の順位なのかもしれないが、本当にそこに対する葛藤はないのだろうか。

また、議論のなかで「もし家事代行に月10万円分まで助成金が出るとしたら使う?」という話題が出たが、この問いに対する参加者の考えは、現代のママ・パパが求めている社会を反映しているのではないだろうか?


「優先順位1位が育児」と答えた人が92.4%だが......

ーー優先順位の1位は育児と回答した人が92.4%でしたが、皆さんの順位はいかがでしょうか?

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※写真はイメージ(iStock.com/yamasan)

Mさん:私は1位育児・2位仕事・3位家事・4位自己研磨・5位趣味です。育児は特に子どもが小さいうちは子どもの命に関わることだし、仕事もしないとご飯が食べられない。掃除をしていない部屋で子どもがおもちゃに滑って転んだら大変なことになるかもしれないから、家事も大事。生活や命に関わることが上位にくるのは合理的なことだと思います。

Kさん:私は1位育児、2位家事、3位仕事、4位趣味、5位自己研磨の順位です。子どもを授かる前までは仕事が好きだったし、週末はいろいろなところに出かけたり、仕事と趣味の優先順位が高かったのですが、上の子を授かってからは仕事や趣味に関する興味がかなり薄くなりました。

だから全体的には理想通りの順位というわけではありませんが、育児が不動の1位であることは間違いないです。そこに不満もありません。

ーー1位が育児であることが幸せと感じているなら素敵ですよね。


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※写真はイメージ(iStock.com/kohei_hara)

Aさん:私は自信をもって「ぜったいに育児が1位」とは言えないので、育児を1位と答えた人が92.4%と聞いて、世のママ・パパの愛情深さに感心しました。ただ、私も悩みながらも強いて言うのなら育児が1位だったので、同じように葛藤がありつつの「育児1位」の人もいるかもしれないと思いました。

Iさん:私は育児と仕事と趣味が同率1位です。自分の人生なので、仕事で結果を残したいし頑張りたい。子どもがいちばん大事であることはもちろん本当だけれど、仕事をおろそかにはしたくありません。

ただ、全部を頑張りすぎてときどきパンクしちゃいそうになることもあるし、全部が中途半端になっているのではという不安もありますね。

ーーこれで本当にいいのかなと不安になることもありますよね......。


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※写真はイメージ(iStock.com/yamasan)

Iさん:私はいま育休中なのですが、子どもを認可外の保育園に預けて、副業を頑張っています。その理由は、子どもがいても本気で仕事を続けるには、会社に頼らずに自分で稼いでいける力が必要だと感じたから。

本職はリモートが原則禁止だし、育児を応援すると言ってはいても、本心では歓迎していない雰囲気を感じます。子育てママのキャリアをサポートすることは、結局のところまだ難しい社会なんだと思います。

副業の仕事が終わらなくて保育園のお迎え後にも娘にはYouTubeを見せながら仕事をしてしまう日もあります。ただ、仕事が終わったあとは子どもと触れ合う時間を取れています。だから、自分のなかでは育児を大事にできていると思っていますが、かわいそうと言われたこともあるし、他人から見たらどうかはわからないですよね......。


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※写真はイメージ(iStock.com/kohei_hara)

そもそも育休は1年間で足りるのか

ーー今回事前アンケートでは「もともと管理職として働いていたけれど、いざ子どもが生まれたら愛おしくてなかなか離れがたい」という意見がありました。

「基本的に育休は1年間しか認められず、すごく短いと感じています。復帰後のキャリアが保証されていたら、仕事と育児とで優先順位をつけなくてもどちらも頑張れるのに」というコメントもいただきました。第1回でも話題になりましたが、育児とキャリアがすごくアンバランスですよね。

そもそも育休の基準が1年間ということについてどう思いますか?


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※写真はイメージ(iStock.com/maruco)

Kさん:短いですよね。本当はもっと長く子どもとの時間を過ごしたいのに、キャリアを維持するためには早々に復職しないといけない状況はものすごい葛藤があると思います。

私自身も産前は仕事が好きだったので1年で復帰するつもりだったのですが、産まれてみると子どもがかわいくて離れがたくなってしまいました。幸いなことに当時在籍していた会社は最長3年間の育休が取れる会社だったので、2歳3カ月まで延長することができました。その時期の子どもと濃密に関われたことは、本当に良かったと思っています。

ーー国の育休制度として、保育園に入れなかった場合は2年間まで取得することができるはずなのに、現実には2年間も取得したらキャリアに支障が出たり、そもそも会社の風潮として1年以内に戻ってくるのが当たり前とされていたり、権利を使い切れないことは残念ですよね……。

Mさん:原則1年間と決まっているのはナンセンスだし、それは少子化しちゃっても仕方ないと思います。特に女性からしたら1年間では全く足りないですよね。ただ、もしパパも1年間の育休が取れて夫婦ふたりで育児をスタートできるのであれば、すごくラクになると思います。


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※写真はイメージ(iStock.com/maroke)

Mさん:私も2人目のときは3カ月だけ育休を取りましたが、新生児期にワンオペは本当にしんどいですよね。

ーー先日テレビで、パパが1年間の育休を取ることに対して大御所芸能人が「それは取り過ぎだ」と言ったことが、SNSでも話題を呼んでいました。

Mさん:大御所の方の時代とは育児の難易度が全然違いますよね。地域がいっしょになって子どもたちを育てていた時代と比べられても......。

ーー特に都心部に住んでいるママは孤立した状態でワンオペで育児をしていることが多いですよね。パパが1年間寄り添ってくれたらとても救われますよね。


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※写真はイメージ(iStock.com/maroke)

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もし10万円の手当てがあれば家事をラクにすることに使う?

ーーアンケートでは家事は2位が61.9%、3位が19.0%と、上位に位置づけられていることが多かったです。なんとなく家事は好きで上位にしているというよりは、やらないといけないから上位にいる気がします。

Iさん:私は家事が苦手で結婚するときに「私は家事はしません」と宣言しましたし(笑)、実際に家事をやっている意識はあまりないため、5位にしました。

ただ、娘のご飯を作ったり掃除機をかけたり最低限のことはもちろんしていて、自分のなかで「子どものためにしていること」は、家事ではなく育児と捉えているのかもしれません。洗濯物は娘と遊びながらいっしょに干したり、掃除も育児の延長線上に考えています。


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※写真はイメージ(iStock.com/maroke)

Kさん:私は2位が家事ですが、もちろん家事が大好きでやっているというわけではありません。ただ、主人も手が空いているときは自分からやってくれるし、できる限り家電に頼っているので、家事に時間を費やしているという感覚はありません。

洗濯乾燥機や食洗機、お掃除ロボットに加え最近は電気圧力鍋も導入しました。子どもを抱っこをしながらでも材料さえ入れたら数分後にはできあがっているから、子どもと触れ合う時間も増えたし、物に頼って家事の時間をうまく工夫することはできるのかなと思います。

ーーもし、「家事代行サービスが月10万円分まで使える助成金が出る」という制度があったとしたら使いますか?

まさきちさん:もしそれがあれば、たしかに家事の優先順位は下がるかもしれないですよね。でも、もし10万円の助成金の使い方が自由だとしたら家事代行サービスには使わないかな。子どもが喜ぶ服を買ったり、子ども関連のことに使うと思います。


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※写真はイメージ(iStock.com/maroke)

Kさん:私も10万円もらったら家事代行ではなくて、旅行とか家族みんなの思い出をつくることに使うかなと思います。

ーー社会からの子育て支援が十分ではない現代、マイナスをゼロにするような制度は増えているかもしれませんが、ママ・パパが求めているのはそこだけではなく。ママ・パパは、子育てをプラスにできるような楽しいことや生活に彩りを持たせるようなことに関心を持っているのかなと感じます。


どうしても優先順位の低いママ・パパの自己研磨

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※写真はイメージ(iStock.com/kohei_hara)

ーー自己研磨については5位と答えた方が57.9%、4位が31.6%でしたが、やはり子育て中に自分に時間を使うことは難しいのでしょうか?

Mさん:私は自己研磨といえば仕事である動画編集のスキルをあげるとか、仕事と趣味と自己研磨がいっしょになっている感じですね。

Iさん:私も同様です。仕事のために勉強をすることも好きだし、子どもが寝たあとで勉強する時間も好きで、それは仕事であり趣味であり自己研磨なのかなと思います。

Kさん:私は今は全く自己研磨をしていないので、Iさんのように自己研磨し続けられるのは、いいエネルギーを持っているんだなと尊敬します。


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※写真はイメージ(iStock.com/Izf)

Kさん:私はいま自分に使える時間があっても病院や鍼に行ったり、自分の健康に関することが優先になってしまいます。以前、2人目の出産後に2週間入院したことがあって、私が健康じゃないと家庭がとても大変なことになると実感したこともあり......。

もともと好きだった美容やファッションは自己研磨のひとつだと思いますが、そこに時間を使おうとは今は思わないですね。

Aさん:実は私はKIDSNA STYLEのライターとして働いています。以前は全く関係のない仕事をしていたのですが、今の生活で育児が頭の大半を占める以上は、育児と仕事を結び付けられたら一石二鳥だと考え、この仕事を始めました。ある意味、仕事や育児を頑張ることが自己研磨にもつながっているのかなとふと思いました。

また、夫婦不仲ではないけれど何があるかはわからないので、自分で稼げる力を身につけたいと思っていて。培ったキャリアを一度手放してしまったので、未来のことを考えると自己研磨の順位を上げていく必要があるとは考えています。


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※写真はイメージ(iStock.com/Tomohiro Fujita)

ーー仕事のスキルを上げるとか、美や体力を保つというような自己研磨だけではなくて、「子どものためにいい教育ってなんだろう」などと、新しいことを調べたり考えりすることも一種の自己研磨なのかもしれませんね。

Aさん:よく「育児中のマルチタスク能力は、社会に出たらすごく重宝される」という話題も聞きますよね。

Kさん:たしかに聞きますね! 今は目の前のことに精一杯だけれど、今やっていることが将来別の形で活きるということもあるのかもしれないですね。

ーー理想と現実の優先順位が違っていて不満や焦りも多いかもしれませんが、いま目の前のことに向き合うことはきっと間違いではないですよね。子どもがかわいくて仕事に復帰したくない人も、葛藤がありながらも育児を1位だと答えた人も、いつか別の角度から道が拓けてくることもあるのかもしれません。


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※写真はイメージ(iStock.com/paulaphoto)

編集後記:育児を優先順位の1位に置いている人は、そのことに幸せを感じているのか、そうせざるを得ないだけなのか。もちろん育児が最優先であることに、幸せを感じられたらいちばんいい。ママ・パパに優しい社会の制度や風潮ができたら、「育児が1位」ということに幸せを感じられる人がもっと増えていくかもしれない。

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