「目が悪い」は認知症リスクを高める…「メガネをかけていれば大丈夫」ではなかった"近視"の恐ろしさ
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大人になってから近視になる人が増えている。眼科医の窪田良さんは「近視が将来の失明リスクだけでなく、認知症リスクも高めるという研究結果がある。近視の進行をいかに防ぐかが、老後のQOLを左右するだろう」という――。
視覚障害があると認知症リスクは2.4倍
日本では65歳以上の15%に認知機能障害が生じていると言われています。15%と言えば約6~7人に一人の割合。年末年始やお盆に実家に帰省した際、親の老いを目の当たりにすると今後の不安も募るものです。
実は、視覚障害は認知障害と密接に関連しているという奈良県立医科大学の調査結果があります。これによると、重度でなくとも軽度視力障害を有する人は、有さない人と比較して、認知症を発症するリスクが2.4倍高かったとのことです。
※ Association of Visual Acuity and Cognitive Impairment in Older Individuals: Fujiwara-kyo Eye Study
この結果を見て、臨床医としても研究者としても長く眼科業界にいる身としては、「やはり、そうか」いう感想を持ちました。
目は「脳の一部」で大切な臓器
というのも、目は脳の一部であり、脳の一部が飛び出したのが目と言ってもよいと考えているからです。同じく顔にある口や耳、鼻などとは進化の過程が異なるとされ、人間を含めた脊椎動物において目は「脳の延長」として発生したと言われています。
そして人間は外部情報の9割を目に依存し、脳の50%は視覚情報処理に使われています。
特に眼球の奥にあって視神経と繋がっている網膜は中枢神経の一部とされ、身体のなかで最も血流量が多いのは実はこの網膜だと言われています(網膜の次は腎臓)。
中枢神経とは脳と脊髄を指し、全身から集まってくる情報を処理し、指令を発信。その中枢神経から、体温や血圧、内臓の機能を調整し、感覚や運動をつかさどる末梢神経が出ています。
そう考えると、目は直径およそ2cm、重さはおよそ7gしかないとても小さな臓器ではあるものの、脳との密接な関係を持ち、人間の身体においてとても大切な臓器であることがおわかりいただけるかと思います。