「最初の半年はお金が出ていくだけ、貯金は底をつきかけた」熟練コンサルが明かす"経営コンサル業"の難しさ
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経営コンサルタント業の倒産が増えている。何が起きているのか。2003年に百年コンサルティングを創業した経営コンサルタントの鈴木貴博さんは「倒産しやすいコンサル業には3つのパターン、破綻に至る要因にも3つのパターンがある」という――。
経営コンサルタント業に資格は必要ない
企業の信用情報を提供する東京商工リサーチによれば、2024年の経営コンサルタント業の倒産が154件と、2023年に続いて2年連続で過去最高を更新したようです。
原因別では不況型倒産が全体の約3分の2と大半を占め、従業員数5名以下の事業者が全体の93%、資本金1億円未満の中小企業がほぼすべてを占めたといいます。
事業規模的に私の会社と同じ規模の会社で倒産が増えているわけです。幸いにして私の周囲の同業者が破たんしたという話は聞かない一方で、私から見れば事業構造を一番よく知っている業界ですから、何が起きているのかはだいたい見当がつきます。
経営コンサルタントの視点で、なぜ経営コンサルタントの倒産が起きているのか、分析してみましょう。
最初に、業界の概要から説明しましょう。経営コンサルタント業は他の士業と違ってそもそも資格が必要ありません。極端な話をすれば、自分が何らかの経営ノウハウを持っていると思った読者の方は今日からでも経営コンサルタントを名乗ることができます。
次に経営コンサルタントとして儲かるためにはそのノウハウがカネになることが必要条件です。クライアント企業がノウハウを習得することで1000万円儲けることができるから、コンサルタントに喜んで100万円の報酬を払うのです。
小規模な会社の場合、専門化しているケースが大半
そして今回話題になっている小規模なコンサルタント会社の場合は、そのノウハウは何らかの切り口で専門化しているケースが大半です。例を挙げると、
- 人脈をもっていて口利きができる
- 補助金や行政への申請に詳しい
- IT分野で集客やSNS、セキュリティなど専門的な知識を提供できる
- 不動産開発や出店など特定の領域で豊富な経験を持つ
というようなケースです。
たとえば私の会社は経営コンサルタント業ですが、最近、他の経営コンサルタントに頼ったことがあるので、わかりやすい事例として紹介します。インボイス制度が始まった際に、会計ソフトを新しくしたときの話です。
簡単に説明すると、新しいソフトの導入で20万円ほど費用がかかるのですが、国が補助金を用意していて申請すると15万円の補助がもらえるのです。あの時期、どの中小企業でも、
「なんでこんなインボイスごときに手間暇をかけさせられるんだ」
と立腹していた経営者が多かったと思います。ソフトを変えないと業務が立ち行かなくなるので高いソフトを購入せざるをえないため、その不満を軽減するためにこのような仕組みが作られたのです。