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「叱らない子育て」は誤解されやすい。子どもの自己肯定感を下げない叱り方とは?
「令和時代の子育ての子育て」をテーマに、現役保育士のてぃ先生、1児の母であるpecoさんがトーク。司会には、自身も2児の母である、タレントの鉢嶺杏奈さんをお迎えしました。前編では、子どもの叱り方、𠮟らない子育てとは?について。
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叱るときは子ども「人格」ではなく「行動」を
鉢嶺:まず最初のテーマは、よく議論にあがる「子どもの叱り方」についてです。注意しても言うことを聞かない子にうんざりしたり、許せない行動にイライラした気持ちを子どもにぶつけてしまったりと、どうすればいいのか悩んでいる親は多いと思います。pecoさんは普段、子育てをしている中で子どもを叱るときどうされていますか?
peco:息子に対して叱るということはあまり多くはないのですが、息子ののんびり屋さんな部分を叱ってしまうことがあります。
私が子どもを叱るときに心がけているのは、子どもと同じ目線で伝えることです。あと、叱ったあとは「どうして叱ったのか」を子どもに説明して、「ちゃんとママのお話を聞いてくれてありがとう。大きな声を出してごめんね」と伝えています。
鉢嶺:私も実体験としてそうなんですが、子どもを叱るとき、ついつい感情的になってしまうことがあるかと思います。そうやって感情的になったとき、どのように気持ちをコントロールしていますか?
peco:叱った後に子どもに「ごめんね」と伝えることが、自分自身をクールダウンさせるきっかけのようなものになっています。子どもと対等で接するためなのはもちろん、自分の気持ちをコントロールするためにも「ありがとう」と「ごめんね」は必ず言葉にするようにしていますね。
鉢嶺:pecoさんのお話も聞いてみて、てぃ先生は子どもの自己肯定感を下げない叱り方にはどのような方法があると思いますか?
てぃ先生:実践しやすいものでいうと、子どもの人格ではなく行動を叱るようにするといいです。「もうあなたはいつもこうなんだから」「本当にできないんだから」というように、子どもの人格そのものを否定してしまうと、子どもは「自分はできない」「自分なんて」と自己肯定感が下がってしまいます。「おもちゃを投げるのは危ない」といったように、子どもの行動を叱るようにすることが、自己肯定感を守ることに繋がります。
てぃ先生:1939年に、アイオワ大学の心理学者たちが、孤児院である実験を行いました。その実験というのは、孤児院の子どもたちを半分ずつグループに分けて、半分にはポジティブな声掛けを、もう半分のグループには、子どもの話し方についてネガティブな言葉を掛け続けるというものでした。ポジティブな言葉をかけられたグループには、何の問題も生じませんでしたが、ネガティブな言葉を掛け続けられた子どもたちは、話し方に関する問題が生じるようになったようです。この実験について、62年後の2001年にアイオワ大学は公式に謝罪をしています。
この話から何がいいたいかというと、子どもに対して何気なく放っている言葉の一つひとつが、その子の人格に大きな影響を与えるということです。良くも働くし、悪くも働いてしまう。
なので、「あなたはそのままで素晴らしい。でも、物を投げるのは危ないよね」というように、人格と行動を完全に切り分けて、子どもは今のままで素晴らしい存在であることを言ってあげましょう。
先ほどpecoさんがおっしゃっていた、相手を1人の大人として捉えることは、子どもの自己肯定感を守るという点ですごく大事なことだと思います。なぜか、大人は子どもが相手だと、大人と同じようなコミュニケーションをとらなくなるんですよね。
例えば、大人に「お茶を取ってください」とお願いをするとき、相手がお茶を取れる状態なのか?今手が空いているか?など相手の様子を観察します。これが、子ども相手だと観察もしないで「早く片付けなさい」といってしまう。子どもも1人の人間なので、このような声掛けが続けば、自分は大事な存在ではないのでないかと不安になります。
本当に叱らないことが「𠮟らない子育て」ではない
鉢嶺:近年、育児の現場では「𠮟らない」子育てをすることが大切とされる風潮があると思うのですが、その点についててぃ先生はどう思われますか?
てぃ先生:「𠮟らない子育て」という言葉がさまざまな捉え方をされていると感じています。僕が思うに「𠮟らない子育て」とは、叱らなくても違う方法で子供の行動を変えられる方法があるよねっていうのが多分正しい表現だと考えています。
例えば、走り回っている子どもがいるとして、「走っちゃだめ」というのが叱ること。この状況で叱っても、その瞬間は走らなくなるけれど、3分後にはきっとまた同じところを走ってしまう。僕が考える「𠮟らない子育て」だと、「忍者さんってどうやって走るんだろう」と子どもに一緒に考えさせたら「忍者さんはすり足だよ」と答えてくれて、「走っちゃだめ」といわなくても伝わるかもしれません。
あくまで一つの例で、「だめ」というような言葉を使わなくても結果叱らずに済んでいるというのが、本来の「𠮟らない子育て」だと考えています。
一方で、子どもが危ないことをしていても、本当にただ𠮟らないことを「𠮟らない子育て」だと捉えてしまっている方も見受けられます。
とはいっても、𠮟らないで済む声掛けをしようと思うと親に余裕がないとできないですし、子どもが泣いていたり、癇癪を起していてどうしようもない状態のときもありますよね。
子どもがどうしようもない状態で、どんな話ももう入っていかないとき、pecoさんはどうされていますか?
peco:子どもがどんな話も入らないと思われるときは、「泣かないよ」というようなことはいわないようにして、「落ち着いたら教えて」と一旦その場を離れて、落ち着くのを待つようにしています。そうすると、割とすぐに落ち着いて「今お話聞ける」と戻ってきてくれたりします。
てぃ先生:それは本当にすごくいいことだと思います。お子さんの年齢とか状況にもよって変わってくる部分はもちろんあるんですけど、子どもが自分の気持ちを自分で切り替えられるということはとても大切です。常に親御さんが、子どもの気持ちを汲み取ってフォローしてしまうと、自分の気持ちを切り替えるのは自分じゃなくて周りで、周りが自分のご機嫌を取ってくれると思ってしまう。
pecoさんのように子どもの気持ちが落ち着く時間を設けることによって自分で自分の気持ちを切り替える練習ができます。子育て全般にいえることですが、どんなこともやりすぎはよくないですね。
子どもが見通しを立てられる声掛けを
鉢嶺:話は変わりますが、今の時代、子育てをする上でSNSや様々なメディアで情報が本当にたくさん溢れていますよね。他所の家庭が気軽に見れてしまうからこそ「〇〇しなきゃいけない」と完璧主義になってしまう親は多いのではないでしょうか。その結果として育児ノイローゼになってしまったり...
pecoさんは普段子育てをしている中で自分自身は完璧主義になっていると思いますか?
peco:私は常に60%ぐらいの力で余白を残してやるようにしています。100%はしんどいので、やりたくないんです。例えば、今週外食続いちゃったな、全然おうちでご飯食べさせてあげられなかったというときは、「いや、待てよ。1カ月で考えたら4日だけだな」と都合よくものを見る幅を広げたりしています。
てぃ先生:すごくいい考え方ですね!非常に参考になりますよ。自分自身に優しく、自分の幸せを大事にしましょうっていう感じがすごくいいですよね。
鉢嶺:例えば、夕飯の時間が迫っている中で公園からなかなか帰れないときは、どのような声掛けをしていますか?
これは私の実体験ですが、事前に子どもに「もうすぐ帰るよ」と伝えても、いざ帰る時間になったら押し問答が始まってしまって。それがストレスになってしまいます。
peco:私も帰る15分くらい前から「あと15分で帰るよ」と事前に声掛けをしていますね。これも同じくですが、15分経つとやっぱり「まだ帰らない」となるので、「あと何回滑ったら帰る?」と聞いて「3回」といわれたら3回滑ったら再度声掛けをします。すると、「あともう1回」といわれて、最後に1回滑ったら帰るとなります。
「あと〇分/〇回」といわれるのを見越して、子どもに声をかけています。そうすると、「あと1回だよ」と子どもの提案を受け入れた形になるので、子どもも納得して帰ることが出来ています。
てぃ先生:こういったシチュエーションだと、子どもに声を掛けても、なかなか返事をしてくれないこともあるのではないでしょうか。実は、遊びに集中している状態の子どもに声を掛けても、子どもの耳には入っていません。
では、どうすればいいかというと、子どもの視覚に親御さんが入っていく必要があります。例えば、子どもがパン屋さんごっこをしているなら、お客さんとして「このパンください」など、子どもがやってる世界にお邪魔させていただいて、その世界の中で子どもに声を掛けます。
先ほど、「あと何回やったら帰る」からの押し問答のお話がありましたが、子どもは見通しが立たないと押し問答になりがちです。もし、回数で子どもに声掛けをするなら、回数を可視化するといいです。例えば、バッグの中からものを3つ取り出して、「あと何回」をもので示してあげると、子どもが見通しを立てられるようになります。